伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ラーマーヤナ1・2 蒼の皇子 上下

2006-11-08 22:33:47 | 物語・ファンタジー・SF
 古代インドの大叙事詩「ラーマーヤナ」をもとに再構成した物語。
 コーサラ国の第1皇子ラーマが、魔力を持つ聖人の力に助けられながら、阿修羅の軍団を相手に大活躍します。第1巻に当たる「蒼の皇子」は、「落ちることのない城」アヨーディヤに羅刹が侵入したことから阿修羅軍団の侵攻を察知した聖人が、阿修羅軍団を牽制して侵攻を思いとどまらせようとしてラーマと第4皇子ラクシュマナを連れて敵陣の「恐怖の森」バヤナカ・ヴァナに侵入してその支配者タータカーを倒すまでの話。

 「ラーマーヤナ」は、ヨーロッパ人にとっての「イリアス」「オデュッセイア」にあたるもので、一度読んでみたいと思っていました。長らく愛唱されてきた叙事詩だけあって、構成も雄大で、おもしろい。私が(古代)インド好きなせいかも知れませんけど。でも少なくとも、指輪物語を愛読した(最後まで読めた)人には、きっとおもしろいと思いますよ。
 ただ、イリアスにしても指輪物語にしても同じですが、好戦的なお話で、戦闘シーン・殺戮シーンが多くむごたらしいのが、私にはしんどい。
 むしろ寿命の尽きようとするダシャラタ王が長らく顧みなかった第1王妃カウサリヤーと復縁してむつみ合う本編冒頭に感じ入ってしまうのは、やはり私が歳だからでしょうか。

 ただ、現在アヨーディヤ問題(ヒンドゥーの聖地にあったモスクの破壊とヒンドゥー寺院の再建)がヒンドゥーナショナリズムの象徴となり、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立の象徴となっていることを考えると、アヨーディヤを舞台とし、基本的に宗教戦争(正しいヒンドゥー対阿修羅・タントラ教)の体裁を取っている物語を、純粋な読み物として楽しみにくい思いが残ります。


原題:THE RAMAYANA SERIES : PRINCE OF AYODHIYA
アーショカ・K・バンカー 訳:大嶋豊
ポプラ社 2006年6月20日発行 (原書は2003年)
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ブラボーセブン

2006-11-08 09:02:01 | 小説
 受験エリート校を目指す全寮制の私立高校の落ちこぼれ組担任になった女性体育教師の奮闘を描いた小説。裏表紙の絵とか冒頭のシーンからは、荒れた高校のツッパリものかと思いましたが、受験エリートを集めた坊ちゃん学校が舞台。
 試験の成績がクラス分けから生徒会長等の役職まですべてを決めるというシステムの中で冷めて荒んだ生徒と一部の教師の心を、主人公の谷口奈々絵が解きほぐし熱中させていくというお話。
 エリート生徒の陰謀、奈々絵のアパートの老人バンド、受験勉強とスキーの両立を目指して両親と対立した奈々絵の過去、鬱屈した教師たち・・・と前半はいくつかの要素を絡ませた展開ですが、後半になるとひたすら10周年記念式典でのクラス発表でジャズ演奏をすることだけに収斂していきます。そのあたりちょっと単純ですが、わかりやすい青春ものとして読めばいいでしょう。
 最後に学年主任をぶん殴って辞表を叩きつけてやめるのは「坊ちゃん」風。
 表題は生徒たちのバンドの名前「BRAVO BAND」と生徒が奈々絵につけたニックネームの「セブン」から。


維住玲子 中央公論新社 1999年12月7日発行
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地盤診断 不同沈下しない家づくり診断のコツと補強法

2006-11-03 10:30:11 | 実用書・ビジネス書
 木造一戸建て家屋建築を想定した地盤診断のハンドブック。
 専門的な調査をしなくても地名や周辺地形、近隣建物の様子(壁や塀のひび割れや建具の歪み)、地図等の情報からおおよその地盤を判断する方法や、業者の報告書の見方や簡易調査法を解説しています。持ち歩きやすいように小型サイズなのも便利そう。
 役所で近くのボーリング柱状図が入手できる(場合がある)とか、車止めのある遊歩道は暗渠(水路を地中に隠したもの)であることが多い(車両の通行による交通振動に耐えられないため)とか現実の調査に役立ちそうな情報もちらほら。
 平板載荷試験では平板の直径の2倍程度の震度(約60cm)までしか荷重が伝わらないのでそれ以上の深さに軟弱層が潜んでいる場合にはその沈下が計測できていない(140頁)とか、一般に信じられているほどベタ基礎の剛性強度は大きくはない(148頁)、ベタ基礎は基礎幅が大きいので発生する地中応力は深い震度まで到達する、ガラなどの地中障害物が基礎直下に接触してこの支点として作用するといっそう不同沈下しやすくなる(148頁)など試験やベタ基礎への過度の信頼を諫める記述もあって参考になりました。


高安正道 日経BP社 2006年9月25日発行
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図解スーパー業界ハンドブック

2006-11-02 22:49:43 | 実用書・ビジネス書
 スーパーマーケットについての各種の話題について取材してまとめた本です。

 収支構造についての話が興味深く読めました。
 大型店では売上の約7%が家賃、13%が人件費、粗利が24~28%なので利益は4~8%、スーパーは登場した頃は粗利は18%程度に抑えていてそれが売りだったが大規模化して仕入れ力が上がり利益率が上昇しているとか(84頁)。でも万引きで売上の2%の損失があるそうです(66頁)。小売業には1・7・2の原則というのがあり、商品の10%は他店より安く、70%はほぼ同レベル、20%は他店より高いそうです(90頁)。安い10%を以下に目立たせ高い20%に気がつかせないようにするかが腕の見せ所というわけ。粗利率は衣料品が40~50%、家庭用品が25%、食品が18~20%(101頁)、食品の中では総菜類は40~50%で酒はビールと発泡酒しか利益にならない(108頁)とか。
 スーパーのプライベートブランドは、かつてはナショナルブランドに匹敵する商品を格安で提供するといっていたのが、今や利益率が高いからプライベートブランドを売りたいとなっている(88頁)そうです。
 そういったスーパー業界の本音的なところが読ませどころですね。1テーマ見開き2ページ構成ですので突っ込んだ記述はありませんが。


川嶋光 東洋経済新報社 2006年10月10日発行
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東尋坊 命の灯台

2006-11-01 07:26:02 | ノンフィクション
 自殺の名所東尋坊で「心に響くおろし餅」の店を開いて自殺防止活動をしている元警察官の手記。
 第1章で著者が遭遇した自殺企図者の例を紹介していて、それがこの本のメインです。
 私も仕事柄、わがままな人、困った人と出会う機会は少なくありませんが、この本を読んでいると、もっとわがままで困った人に根気よくつきあっている様子に頭が下がります。私にはとてもとてもここまでは・・・。
 著者は、男性の自殺者が多い理由に、行政の駆け込み寺がないことを挙げています。行政のつれなさ、まさしく「お役所仕事」ぶりはこの本でも言及されていますが、それでもそれさえないのでは自殺が減るわけもありません。自殺防止を著者のような民間ボランティアに頼っているのでは、情けない限り。さらに著者の活動に対して「東尋坊のイメージが悪くなる」と反対運動まであるそうです(237頁)。やりきれないですね。


茂有幹夫 太陽出版 2006年10月7日発行
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