3年目になったとき、新入研修生として入所してきた一人に福島県の渡辺さんがいました。やっぱり話をしたことはありませんでしたが、大学の同級生で、永平寺の修行を終えてからの入所でした。
授業の合間の休憩時間に、当番所で何か書いている渡辺さんをみました。
聞いてみると寺の新聞、寺報だとのこと、その記事の一つは、永平寺から福島まで歩いて帰ってきた道中記だと言います。
「えー、渡辺さん永平寺から歩いて帰ってきたんですか?」「ウッソー、ホントに?」「すごいなあ」
信じられないながら、かっこいいなあと思いました。
もしかしたら自分にもできるかなあ、そんなことできたらかっこいいよなあ。衣を着て、笠をかぶっての行脚姿、あこがれるなあ。
ここに、弟子丸老師との出会いとともに、もう一つの私の転換点があります。
永平寺から歩いて帰ること、寺に帰ってからすぐに発刊した寺報「いちょう」や「なあむ」、すべて渡辺さんをまねてのことです。独創的な発想でも何でもありません。
いずれにしても、修行を終えて帰る時の格好だけは決まった、という何だか分からない状態で永平寺に行くことになりました。