なあむ

やどかり和尚の考えたこと

雲水道中記ー永平寺から最上へー 14

2009年11月27日 20時45分54秒 | 雲水道中記

まだ血が止まらない。錫杖に血がついた。
身震いするような気持ちでお経を読みながら歩く。
倶利伽羅トンネルの前で道を聞いたおばあさんが200円喜捨してくれた。
1 トンネルが一番嫌だ。
車の音が轟音に聞こえる。突風が笠を煽っていく。暗い。湿っぽい。遠くの明かりを目指して錫杖の音にすがって足を進める。
とにかく歩く道ではない。
抜けた。富山県。
小矢部市。
お寺に泊めてもらおうと思い、コピーした寺院名鑑を頼りに訪ね歩く。
ここはどうかとたどり着いたお寺を訪ねてみると留守のようだ。
あきらめて帰ろうかと思い山門までやってくると、ちょうど住職らしき人が帰ってきた。
緊張した面持ちで、「わたくし、山形県松林寺徒弟、三部義道と申します。永平寺から師寮寺まで帰る途中です。今晩一晩雨露さえ凌げれば結構です。拝宿させていただけないでしょうか」天龍寺さんで教えられたとおりにお願いしてみた。
すると、「今この通り工事中なもので、済みません」と言う。
見回すと、確かに庭の工事中のようだった。
庭の工事と、一人の修行僧を泊められない理由とどんな関係があるのだろうか。
絵に描いたような門前払いだった。
緊張感が抜けてどっと疲れが出てきた。重い足がなお重くなる。
もうお寺を訪ねる勇気もなく、近くの宿を探した。旅館「山田屋」。ようやく指の血が止まった。
金沢~小矢部 28㎞。