昨日は思いもかけず、大根でオロオロした。まだわからない句がひかかる。本日は大根ではなく、「葱(ねぎ)」の句。
★悲しみの刻は女は葱きざむ 小谷伸子
★刃渡りをそっと確かめ葱刻む 瀬戸優理子
今、上野の森美術館で「怖い絵」展が開催されている。が上の二句もまたとても怖い。特に第2句目など、女性に家事を押し付け、のほほんとしてとしているのが当たり前と思っていたら、それこそ寝首を掻かれる。
《ホロフェルネスの首を斬るユーディット》(1620年頃の作、アルテミジア・ジェンティレスキ、ウフィツィ美術館)
旧約聖書外典に記された物語で、アッシリアのホロフェルネスに包囲され降伏寸前に夫に死別していたユディットという女性が包囲軍に乗り込み、自らホロフェルネスを誘惑し、酔いつぶれた彼の首を剣で切断して包囲された町に持ち帰る。指揮官を失った包囲軍は撤退し、ユディットは称賛される。外で如何に武勇を誇ろうが、サラリーマンとして功績があろうが、女性の誘惑に弱いという、男社会の論理を振りかざす男は、必ず復讐される。かく記す私とて、いつ寝首を掻かれ、捨て去られるか、知れたものではない。
第一句、私はこれは女に特有なことと断じてしまう男はついには女性の気持ちを理解できないし、同時に基本的に社会で仕事ができない人間でしかないと思う。何かの壁にぶつかり、どうしていいかわからないとき、人はただひたすら何かに打ち込もうとする。何かの代償行為のように。別に回避し、逃げ込むというのではない。自分と向き合い、そうして出口や脱出の方途を探すように黙々と何かを為し続けなければ、自分の身がもたない、というところに追い込まれた自分。このような状況をいくつか引き受けることで人は再生し、次へと歩み始めることができる。
専業主婦であっても、家族内でひとりだけでは解決できないさまざまなことが日々生起する。真摯に向き合おうとすればするほど、自分を追い込んでしまうもこともある。葱をひたすら刻むことで、この女性は再生の過程を歩んでいるのであろう。「気分転換、そのうちケロッとして戻って来るさ」、などと言っている男は必ず復讐されるのである。
第二句、葱を刻む行為が度重なると、刻む包丁に意識が向いていく。ここまでくるともはや危険信号。もっとも二つの俳句そのものは、関連はないので、あまり深く考えなくてもいい。しかし刃の反りなどを凝視し、指で刃の状態を探るようになると、尋常ではない世界と背中合わせである。
★悲しみの刻は女は葱きざむ 小谷伸子
★刃渡りをそっと確かめ葱刻む 瀬戸優理子
今、上野の森美術館で「怖い絵」展が開催されている。が上の二句もまたとても怖い。特に第2句目など、女性に家事を押し付け、のほほんとしてとしているのが当たり前と思っていたら、それこそ寝首を掻かれる。
《ホロフェルネスの首を斬るユーディット》(1620年頃の作、アルテミジア・ジェンティレスキ、ウフィツィ美術館)
旧約聖書外典に記された物語で、アッシリアのホロフェルネスに包囲され降伏寸前に夫に死別していたユディットという女性が包囲軍に乗り込み、自らホロフェルネスを誘惑し、酔いつぶれた彼の首を剣で切断して包囲された町に持ち帰る。指揮官を失った包囲軍は撤退し、ユディットは称賛される。外で如何に武勇を誇ろうが、サラリーマンとして功績があろうが、女性の誘惑に弱いという、男社会の論理を振りかざす男は、必ず復讐される。かく記す私とて、いつ寝首を掻かれ、捨て去られるか、知れたものではない。
第一句、私はこれは女に特有なことと断じてしまう男はついには女性の気持ちを理解できないし、同時に基本的に社会で仕事ができない人間でしかないと思う。何かの壁にぶつかり、どうしていいかわからないとき、人はただひたすら何かに打ち込もうとする。何かの代償行為のように。別に回避し、逃げ込むというのではない。自分と向き合い、そうして出口や脱出の方途を探すように黙々と何かを為し続けなければ、自分の身がもたない、というところに追い込まれた自分。このような状況をいくつか引き受けることで人は再生し、次へと歩み始めることができる。
専業主婦であっても、家族内でひとりだけでは解決できないさまざまなことが日々生起する。真摯に向き合おうとすればするほど、自分を追い込んでしまうもこともある。葱をひたすら刻むことで、この女性は再生の過程を歩んでいるのであろう。「気分転換、そのうちケロッとして戻って来るさ」、などと言っている男は必ず復讐されるのである。
第二句、葱を刻む行為が度重なると、刻む包丁に意識が向いていく。ここまでくるともはや危険信号。もっとも二つの俳句そのものは、関連はないので、あまり深く考えなくてもいい。しかし刃の反りなどを凝視し、指で刃の状態を探るようになると、尋常ではない世界と背中合わせである。