めずらしいキルギス映画。イスラムの国でありながら、離婚についても女性の地位がある程度認められている国。シンプルなテーマであるからこそ我々の胸にも動揺が走る。
このテーマ、23年ぶりに帰還した夫の家族はすでに妻が再婚し家を出て、帰った夫は国の乱れである象徴のゴミ拾いに没頭する。そして村社会でもそれが徐々に波紋を上げていくことになる。
昔イタリアの名匠デ・シーカに「ひまわり」という佳作があった。戦争で帰ってこない夫を探しにロシアに出向いた妻はそこに新たな家族を設けている夫の姿を見かける。または、古くは日本でも、終戦後復員した夫の妻が弟の妻になっているとか、長時間の失踪に伴うこういう事件は特に目新しくはない。
けれど、この映画はそれにとどまらず、23年間の空白をその当人の家族だけでなく、政治状況、環境問題にまで言及していることが秀逸であろうと思われる。
本当に静かな物語である。ラスト、元妻の悲しい歌声を聞いた夫が記憶を取り戻すそのシーンは誠に圧巻。感動的な映画でありました。
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