メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『麒麟の翼』(2012)

2012-10-26 19:22:56 | 映画
『麒麟の翼』(2012)
原作:東野圭吾 監督:土井裕泰
出演者:中井貴一、阿部寛、新垣結衣、溝端淳平、松坂桃李、黒木メイサ、山崎努、劇団ひとり、秋山菜津子、鶴見辰吾、田中麗奈 ほか
主題歌:♪sign/JUJU

ドラマ『新参者』の劇場版。これもすべて「加賀恭一郎シリーズ」ものの1つなんだな。
どうりで、過去にいろいろあって、詳しく語られていないモヤモヤがあると思った。

このお馴染みのテーマ曲を聴くと、今度は一体どんな事件に挑んで、
どんな鮮やかなお手並みで解決してくれるのかワクワクする
今作もドラマ同様、父と子の家族愛の物語りで、
犯人探しはもちろんのこと、それに至った背景が泣かせる。

「あさイチ」のゲストで中井貴一さんが出た時に、普段の光景から一般の人々の暮らしぶりや
ふとした仕草などをインプットして演技に生かしている、といったことを話されていたけれど、
今回のサラリーマン役を見て納得。


▼story
日本橋の麒麟の像の前で血にまみれて倒れていた青柳は、その後搬送先の病院で亡くなる。
家族は、父がなぜネカフェに行っていたのか、なぜ日本橋にいたのかなど
普段の行動を何も知らなかったことに気づく。

現場で職務質問を受けた八島冬樹は、逃亡中に車に轢かれて、その後死亡する。
彼の同棲相手・中原香織は、「彼は人を殺すような人じゃない!」とかばう。
八島が容疑者として報道される中、労災隠しの件が漏れ、
一転して青柳は「殺されて当然」のような冷ややかな世評を受ける。。。


マスコミは被害者を追い詰め、晒し者にしてさらに苦しめている。
誰がそこまでして殺人事件について知りたがっているのか?

日本橋が東京のスタート地点だって初めて知った。
麒麟像は、ここから日本中に飛びたてるようにとの願いをこめて造られたそうな。

黒木メイサも出演して、ちゃんとドラマからつながっている流れが嬉しい。
桃李くんほか、鶴見辰吾、秋山菜津子さんなどなど個人的に嬉しいキャストばかりv
看護婦役の田中麗奈は、さらに確かな演技派として存在感があった/驚

ロケで「小津和紙」が出てきて、またまたビックリ
恭一郎の父も初見で、関係性がちょっと覗けたし。

「死の瞬間に人はプライドを捨てる」

「世の中甘く見ているようなら安心だ。どこにも光がないと絶望しているより」

などのセリフも光る。
劇場版ならではのミステリーがじっくりと楽しめる1本。


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絵本で読む音楽の歴史『ロックの世紀』

2012-10-26 18:01:01 | 
絵本で読む音楽の歴史『ロックの世紀』(ヤマハミュージックメディア)
アンドレーア・ベルガミーニ/著

ロックの歴史だけでなく、当時の政治、文化を幅広くからめて紹介。
具体的なモデルをリアルなイラストで表している試みも分かりやすい。
音楽はそもそも人々の日常生活に密着しているものだものね。

こうして冷静にロックの歴史を振り返ると、常に大人の作った閉塞した世界に行き詰った若者たちの
反抗、叫び、孤独が反映しているということが分かる。
今もかなり閉塞感があるのに、ロックやパンクが生まれた時みたいな、
世の中をひっくり返すような創造はなかなか生まれてこない。
それは音楽だけじゃなく、産業などのあらゆることにも言える。
今の若い世代は、親世代が作った世界に甘んじておさまっている感じ。
そこから新しくてゾクゾク、ワクワクするものは、あまり見受けられない気がしてならない。

ちなみに著者のベルガミーニさんは哲学史家なんだって。


【本文抜粋メモ】
1950年のアメリカは、「自由で豊かな国」神話が信じられていた。
ビング・クロスビーや、ドリス・デイ、ペリーコモらの柔らかいメロディがレコード市場の9割を占めていた。

行き場を失った背反的な若者たちが、あたかも宗教のように仕事を大切にする傾向など親の価値観を批判しはじめる。
金銭的にも余裕があり、娯楽や現実逃避への欲求に埋没する。
ジェイムス・ディーンを真似て、革ジャン、ブルージーンズを履くファッション。
産業界は金を持った若者をターゲットに欲望を煽って宣伝広告が氾濫した。

『ライ麦畑でつかまえて』
義務に対しては怠慢、競争や成功には、愛情や利害関係を求めない弱者への寛大な心を対置させて抵抗した。

【リズム&ブルース】
1940年代、ダンス音楽だったジャズは洗練された鑑賞目的に変化し、
アフリカ系アメリカ人の間でアフロアメリカ音楽の動きが出る。
T・ボーン・ウォーカー、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフなど
白人の伝統的なカントリーミュージックと混ざり、ロックンロールが生まれる。
カントリー&ウエスタン、ビル・ヘイリー、チャック・ベリー、リトル・リチャード

アラン・フリードを代表とするローカルラジオ局のDJらが積極的にロックを流した(ロックンロールという表現を最初に用いた
若者はポータブルラジオやジュークボックスで禁じられた音楽を楽しんだ。
シュラック盤の78回転ビニール(合成樹脂)盤の45回転へ

メジャーズインディーズへ。通信販売が主な経営基盤。
例:チェス・レコード、サン・レコード(ロカビリー)
メジャーズはロックのカバーで対向(パット・ブーン)

エルヴィス:女性的なまなざし+男らしい長いもみあげでバイセクシュアルなアピール/驚
ジェリー・リー・ルイス:ゴスペルとカントリーの影響
リトル・リチャード:説教師のシャウティングの影響
バディ・ホリー

エルヴィスが兵役につき、ファンは失望したが、より幅広いファンを獲得し不動の人気に。
アメリカ当局は反逆的なヒーローに制裁をはじめる。
(チャックは未成年誘惑、フリードは賄賂疑惑、ルイスは14歳の従姉妹との結婚

ボブ・ディラン
1960年初頭、ロックが無害となり、妥協色が濃くないフォークに傾倒してゆく。
成功、金銭という価値観のアメリカ社会を批判した。
→エレキギターを通したフォーク・ロックに変化。

Shelter From The Storm/Bob Dylan


ビートルズ
リバプールの若者は、アメリカとの間を行き来する水夫からアメリカ音楽の情報を手に入れた
米から英はあっても、この逆はあり得ないというジンクスが破られた。
ゲリー&ザ・ペースメーカーズ、キンクス、サーチャーズ、ストーンズ

Please Please Me/The Beatles


デヴィッド・ベイリー(写真家)
スウィンギング(流行の先端をいく)・ロンドンを撮った

メアリー・クアント
ミニスカートなどのファッション改革をしたスタイリスト

第二次世界大戦後、アメリカのように経済成長しなかったイギリスだが
人口が爆発的に増加し、1960年、若い世代の失業という社会問題が起きる。

ローリング・ストーンズ
ミックのパフォーマンスには男っぽい態度+女装趣味が混在/驚

「モッズ族」(モダニストたち)はロッカーズとライバル関係にあった。
ザ・フー:モッズを代表するグループ。

ケネディ大統領就任。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師がアフリカ系アメリカ人の公民権獲得を求め非暴力闘争。
モータウン:史上初のアフリカ系アメリカ人のレコード会社。
ソウル・ミュージック、ファンク:ゴスペル、リズム&ブルースの融合
アレサ・フランクリン、オーティス・レディング、ジェームズ・ブラウン

Call Me/Aretha Franklin

【サイケデリック・ムーヴメント】
ドラッグの使用で自分をより深く知ることを説いた。
カリフォルニアを中心にアシッド・ロック(インプロヴィゼーション)が生まれる。
巨大なレコード業界のシステムや拝金主義を拒絶。
ヒッピー:オルタナティブな暮らしを目指して社会から孤立するインテリ層がサンフランシスコに集まった。
コミューンでの生活、フリーセックス、環境保護、東洋哲学など。
グレイトフル・デッド、ビーチ・ボーイズ

「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」
400時間もスタジオにこもって生まれた、初のコンセプトアルバム。

45回転のシングル盤33回転のアルバムへ。
EMIのヴァリスピード、ダンパー、2つの技術的発明。

ルー・リード
ビートニクス作家の影響。ビート・ジェネレーション(ケルアック、バローズ)
ウォーホルが舞台美術を担当したマルチメディアのステージで演奏。
フランク・ザッパ

Coney Island Baby/Lou Reed

【ウッドストック 1969.8.15-17】
最初予定された地が変更され農場のあるホワイトレイクに移された。
ロックフェスの起源は諸説ある。
トリップ・フェスティヴァル(1966)、ヒューマン・ビーイン(1967)、モンタレー・フェスティヴァル(1967)
ジャニス・ジョップリン、ドアーズ、ジェファーソン・エアプレイン

ヴェトナムへの軍事介入は、アメリカの権益確保にあるのでは、と反戦運動が高まる。
北ヴェトナム兵の犠牲者は60万人、民間人の犠牲者は数知れず、米兵の死者は5万6千人。
ストーンズのライヴ最中にファンの1人が殺される事件が起こる。
州立ケント大学では、警察が学生に発砲する事件が起こる。
マーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺。
過激な抗議をしたマルコムX。

ジミ・ヘンドリックス
希望の時代が終わりつつある焦燥感をサウンドで表現した。

レオ・フェンダー
電気だけで音を出すギター、テレキャスター、ストラトキャスターを考案。
エコー、トーン、ディストーション
クリーム

【ハード・ロック、ヘヴィ・メタル】1960-1970
音の調和の原則への挑戦、暴力的で破壊的な行為を特徴とした(レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス

デヴィッド・ボウイ:ジギー・スターダストというエイリアンを創造。
クイーン:女性っぽい衣装で登場。

'39/Queen

ロックは大金を生む商業と化したシンガーソングライターがフォーク&カントリーに立ちかえり、
個人の不安や恋愛問題などを語りかけ、社会や政治への言及を放棄した。

1970年の終わりには結婚した5組のうち3組が離婚する事態となる
もはや時代遅れとなった結婚に束縛される必要はないとシングルライフを選択するアメリカ人も増えた。
ジョニ・ミッチェル

ニクソンが「ウォーターゲート事件」で辞任。
ハリウッドでも美形にこだわらない演技派俳優が活躍し、社会問題をテーマとした映画が創られる。
ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、メリル・ストリープ、ダスティン・ホフマンほか

ダンスミュージックから鑑賞音楽へ。
ピンク・フロイド
ライト・ショー、ミキサー(あらかじめ録音されたサウンド)が効果的に使われた。
ロック+クラシック、シンセサイザーが多用される。
ジェネシス、エマーソン、レイク&パーマー

コンセプト・アルバムが本当に流行したのは1970年代に入ってから。
プログレッシブ・ロック
カンタベリー派:ロックとジャズの融合をさぐった。ソフト・マシーン。

【パンク→ゴシック】
経済危機により失業の危機にあった若者が家族、国家、宗教、金銭的価値などすべてを否定した。
テクノロジーを駆使したショーの代わりに、基本のバンド編成で手狭なライブハウスで演奏。
レコード会社にとっては制作費を抑えることができ、パンクでひと息つけた
セックス・ピストルズ、パティ・スミス、ラモーンズ
ポリス:パンク+レゲエ

E.M.I./SEX PISTOLS

1973年 第一次オイルショック。
ロナルド・レーガン:保守的な価値と、放任主義(経済競争に一切の規制を設けない)で、
成功欲、金銭欲、自己実現欲などが幅をきかせる時代に。

1980年。ビデオクリップ出現。視覚は聴覚にまさるという知覚の原則。
クイーンが♪ボヘミアン・ラプソディに添える映像をBBCに送ったのが最初?
MTV:ロバート・ピットマンのアイデアで、24時間ビデオクリップばかりを流し続ける最初の放送局となった。
CD:デジタルの記憶媒体に膨大な情報を音声に変えることができ、寿命が長い利点を持つ。
マイケル・ジャクソン「スリラー」、マドンナ

【テクノ・ポップ】
踊れるリズムにのった電子サウンド音楽。(ヤズー、ペットショップ・ボーイズ
キーボード、シンセサイザー、サンプラーの導入により、他人の音楽の一部の無断利用に対する訴訟が多かった。
エレキギターの売り上げが1年間で37%減少、シンセの売り上げが急増した
ドラム・マシーンとシーケンサーがリズムセクションの代わり。
ブライアン・イーノ

ブルース・スプリングスティーン
レコーディングよりもライヴを重んじ、ロックの原点回帰、失業者や社会的弱者などアメリカ社会の問題も歌ったが、
アルコールも(?!)ドラッグもやらず、常軌を逸することはなかった。
U2、R.E.M.

【ライブ・エイド】
1985年。世界の飢餓撲滅のための基金を集める目的で行われ、
マドンナ、ディラン、ストーンズ、スティングなどが演奏。

【ラップ】
サンプリング(他人の音楽の断片を切り取る)にゲットーでの若者の非行、貧困、人種差別の告発などの叫びを表現。
ゲットーでは失業率の高さが非行グループを生み、麻薬の密売が蔓延。
ジャマイカのダブ(レゲエにのせたパター・トーク)をニューヨークに持ち込んだのがきっかけ。
クール・ハーク、グランドマスター・フラッシュ、アフリカ・バンバータ、
シュガーヒル・ギャング♪ラッパーズ・デライトが初のチャート上位に。
プリンス

【グランジ、スラッシュ・メタル】
挫折、極度の不安体験を語る。親もロック世代である新世代は、さらに過激で攻撃的な音楽に流れた。
サブ・ポップ・レコードが大きく貢献。
長髪、破れたジーンズ、コンバット・ブーツなどのグランジ・ファッションを生む。
ニルヴァーナ、パール・ジャム、ビョーク
デヴィッド・バーン、ピーター・ガブリエル:エスニックや世界の伝統音楽をミックス。

Smells Like Teen Spirit/Nirvana



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notes and movies(1992~1993 part1)

2012-10-26 17:28:31 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
スクラップブックから10作ずつのご紹介。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『バイオ・エイリアン 新種誕生』(1987)
監督:ウィリアム・フルエット 出演:スティーヴ・レイノルズバック ほか
まったくどこから買った植物なのか、どこから降って湧いた幼虫なのか、
ちょっと指を切っただけで病院隔離までの大騒ぎになるなんて。
ほとんど『エイリアン』のノリで卵をどんどん産むメスに、急成長する幼虫、
それに感情を持った巨大蟻みたいなモンスター。
データ夫(?)と妊婦との、本編とは全然関係ないくだりが面白い。


『軽蔑』(1963)
監督:ジャン=リュック・ゴダール 出演:ブリジット・バルドーミシェル・ピコリ ほか
ゴダール、ゴダール、全然分からない。
彼がどうしてここまで支持されているのか。
一風変わった手法は分かるけど、手法に凝り過ぎてて、
ストーリーは単純なのに、流れが全然見えてこない。
唯一の見どころは、フランス美人BBの裸体か。
ただ雌犬を追いかける雄犬との話に思える。

愛していないのはなぜ? 怒っているのはなぜ? いつもと違うのはなぜ?
軽蔑するのはなぜ? 態度がおかしいのはなぜ?
なぜってそうなったのは仕方ない。

作品中のラング監督があの摩訶不思議な映画『メトロポリタン』の監督本人だとは驚いた。
「映画と人生に必要不可欠なもの、それは詩だ」
それはうなづけるけど、セリフ一つ一つがいちいち哲学的だと
一体何の話をしてるんだか、さっぱりチンプンカンプン。
フランス人は、映画の中だけじゃなく、日常生活でもいちいちこんな難しい会話をしているのかしら?


『ダイ・ハード2』(1990)
監督:レニー・ハーリン 出演:ブルース・ウィリス ほか
どこが見どころかってすべてが見どころだらけで、2とは思えない、1を上回る面白さ
身一つ、頭脳、体力、悪運強さをフルに使って、またジョン・マクレーンが巻き込まれたのは大事件!
それもまたまたクリスマスイヴだというのに!
「どーして2度もこんな目に遭うんだ?!」て映画を面白くするためなのよ

わたしの好きなウィリアム・アザートンがマスコミ一筋のまぬけな役、
『私は人魚の歌を聞いた』の女優、『ターミネーター2』のロボット役の俳優など。
スタントを使わないブルースのアクションもエスカレート。
活躍もいいけど大怪我しないように気をつけなくちゃ


『ザ・コップ』(1987)
監督:ジェイムズ・B・ハリス 出演:ジェイムズ・ウッズ ほか
妙に頭の切れる24時間男の刑事ホプキンス(ウッズ)の独壇場って感じ。
死体を見るなり、飛びついて犯人探しをシャーロック・ホームズごっこで遊ぶ
ゲームのようにのめりこんでゆくバリバリの刑事。
血みどろの世界をこれほど楽しんでいる奴も珍しいけど、
やけにびしびし言い当てえるところはちょっとお話臭い。

奈保子さん(解説者)いわく、女性の心の中に必ず潜む王子様、
ロマンティックな夢物語と現実のギャップっていう視点から見れば確かに面白い。
淡々としている中で、2つの女性死体がショッキングな分、妙な映像美を感じさせる。
正当防衛を理由に片っ端から言い訳も聞かずに悪党退治をしてゆくホプキンスは、善い者か悪い者か。
話は違うけど、いまだにウッズとピーター・ウェラーの区別ができないで困る。似てるなあこの二人。


『おもひでぽろぽろ』(1991)
監督:高畑勲 声の出演:今井美樹、柳葉敏郎 ほか
誰にも必ずあるなぜかいつまでも忘れずにいる、今までひきずってきている子供時代の自分、
そして必ず誰にも巡ってくる人生の節目と選択の時期。
思いがけず、また従兄弟のトシオのところへ嫁に来ないか、と言われて
改めて自分が今までどう生きてきて、これからどうしたいのかを考えさせられるタエ子は
この作品を観ているすべての観客に課せられる大きな問題だ。

どこか素朴で郷愁誘う映像と、現在と過去が同時に描かれる手法など
リアリティにあふれていて共感としみじみした快い感動がある
トシオの声だけじゃなく、キャラもギバさんそのまんまって感じで、
農業にあえて挑戦しようとしている若い世代の男子が爽やかに温かく描かれていてイイ。


『バットマン』(1989)
監督:ティム・バートン 出演:マイケル・キートン、ジャック・ニコルソン、キム・ベイシンガー ほか
アメリカで人気のあるコミックは日本じゃ全然なじみがないけど、
『スーパーマン』ほか完全無敵の超人ヒーローものとしてはちょっと異色。
ヒーローが暗黒のコウモリで、悪玉は陽気でおどけたジョーカー。
どうして両親を殺された男の子がこうもり男になっちゃったのやら、
思い切り化学薬品を浴びたのに蘇ったジャックが、なぜすっかり芸術や
ロックに目覚めた陽気なジョーカーになっちゃうのか?なんて悩んでいてはいけない。

本当にコミックの世界に入り込んでしまった気分にさせるセットや小物、
それになんといっても見どころは、ニコルソンの“そこまでやるか”のなりきりぶり。
渋いギャングの頭からすっかりイメチェンして、けっこうインテリでかなり派手好き
どこかセクシーでとっても危ない暗黒外の帝王に。作品全体をのっとった演じ様。

コミカルで細かい芸の中にシュールな感覚いっぱいの映像で
超人というより人間味あるヒーローの設定も面白い。
さて、ニコルソンはいないけど新作『バットマンリターンズ』は
観客をガッカリさせない出来栄えに仕上がったのかしら?


『3-4×10月』(1990)
監督:北野武 出演:小野昌彦、石田ゆり子、ビートたけし ほか
出演名(俳優)としてビートたけし、監督名として北野武を使っているところに思わずニヤリとしてしまう。
ロマンスどころか感情表現が全くない演出で淡々と描かれてゆく。
夢を売る映画ではなく、現実ってのはこんな汚いものなんだってゆうシビアさを経験上から描いている感じ。

特に、女性は単に性と暴力の対象、ついてくるだけの存在に描かれているのは憎らしい。
ま、たけしさんにとって女は振るい払っても、なおまとわりついてくる存在には違いないだろうけど。
この作品中で妙にイイのが、渡嘉敷勝男さんの演技。
ボクシング界の裏もきっと似たようなものなんだろうってゆう経験?がいきてる。


『カンザス』(1988)
監督:デヴィッド・スティーヴンス 出演:マット・ディロン、アンドリュー・マッカーシー ほか
2人ともカンザスの大自然の中で思い切りのびのびしちゃってる。
かなり難しいシチュエーションなのに、寝泊り付きの働き口が
あんなに簡単に見つかるのは2人ともイケメンだから?!
それを演じる2人の人気若手俳優も対照的なキャラで面白いし、
撮った監督がアメリカ人じゃなくオーストラリア人なのも面白い。


『ベイビー・トーク』(1989)
監督:エイミー・ヘッカリング 出演:ジョン・トラヴォルタ ほか
最高に笑える。
純粋無垢でアブアブ喋りの赤ん坊が、まさかこんな事を考えたり、
喋っているとしたら・・・と考えるだけで面白い。
別撮りの表情と動きが合っているだけになおニクイ。
でも、肝心のウィルスの声は吹きかえられて残念(せめて『ブルームーン』の声優ならよかった

バリバリのキャリアウーマンが一転してバリバリの母親となって、
理想の父親像を求めていく過程。
トラヴォルタが一応得意のセクシーダンスも混ぜながら、
子どもめちゃ好きなタクシーの運ちゃんを爽やかに演じている。
ビックリしたのはジャニスの♪CRY なんかかかった時
やっぱりアメリカには今でもジャニスの魂が受け継がれているのねぇ・・・


『幕末純情伝』(1991)
監督:薬師寺光幸 出演:渡辺謙、牧瀬里穂 ほか
「時代劇」という日本独特のドラマを、よくぞここまでポップにしてくれたっていう
軽く楽しめる幕末、新撰組ストーリー。
侍言葉に現代語、土佐弁までまじえて、BGMにはロックまで流してしまう。
技術的にも演出的にも新しい息吹きが「時代劇」と「邦画」に吹いてきた予感を感じさせる。

三角関係のはちゃめちゃぶりに、今の世にはなかなかお目にかかれない真剣な純愛を
物語ったりして、単に歴史を追って再現するだけじゃ面白くないもんね。

また、出演者の顔ぶれがスゴイ。ドラマ等で活躍する顔が後から後から
ちょい役でもイイ役でも変態?!もあり。
アイドルの一人だと思っていた牧瀬も若いながら、名優に囲まれてなかなかイイ剣士ぶり。
人をよく斬る分だけ、自らが血を吐き、一途に土方に想いをぶつける総司を爽やかに演じている。
渡辺謙も貴重な俳優。これからももっと活躍してほしい。
杉本哲太もイイ俳優だね。「血の臭いのする女は嫌いじゃ」てセリフ、いい。
日本映画もこうゆうのなら観てもいい。第2のニューウェイブがまだ起こるかな?

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notes and movies(1992~1993 part2)

2012-10-26 17:28:30 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『息子』(1991)
監督:山田洋次 出演:三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、原田美枝子 ほか
人間としての幸せとは、単に健康管理された生活より、
もっと心の底から生まれるものだという気がする。
今じゃ到底実現しない家族の姿なんだろうか。
それぞれ若手と熟練がイイ味出している。
どうでもいいけど、哲夫が着ていたTシャツはボランだったよ


『アマゾネス・プリズン』(1991)
監督:レアンドロ・ルケッティ 出演:ピラー・オリーヴ ほか
紹介文の「アマゾネス軍団として立ち上がる」というか、
単にヒロインのイケイケ姉ちゃんと一夜で知り合ったパイロットが脱獄させてやっただけのことだけど。
かなり訳の分からんストーリーはともかく、お色気を楽しもうってゆうB級映画。
ヒロイン2人のほかはすっかりエキストラ扱いでロクなセリフもないのが妙。


『WHO'S THAT GIRL』(1987)
監督:ジェイムズ・フォーリー 出演:マドンナ ほか
マドンナがメチャクチャ若い こんな頃もあったのかあって感心するほど初々しくて、
フシギなほど髪をホワイトブロンドに染めていて、それが白い肌と真っ赤な口紅、
ブルーがかったキレイなグレーの瞳を際立たせている。
どこかでマドンナはマリリンを意識してるって読んだけど、
ちょっと足りないセクシーガールの役どころばかり出演しているあたり、
リヴァイヴァルの意識が覗いて、トラブルメイカーな女の子をなかなか好演している。

相手役のグリフィン・ダンがとても平均的なアメリカン風貌なのがミソ。
僕もいつかきっとマドンナみたいなコと仲良くできるってゆう夢が持てる作品
ニッキーが4年も服役しなきゃならなかったいきさつを、
ベティちゃんのようなキュートなアニメになっているところが面白い。
でも、女囚ものと違って、ニッキーには獄中生活も例のあっけらかんなノリで
お茶の子さいさいだったのかしら?


『愛と死の間で』(1991)
監督・主演:ケネス・ブラナー 出演:エマ・トンプソン、アンディ・ガルシア ほか
本当に年々スゴイ作品が次々と飛び出してきて、映画ファンには堪えられない喜びだが、
今作品も突如現れた天才監督兼俳優が、現代と過去を結ぶ壮絶なリインカネーションものを創り上げた
その若いエネルギーが1シーンごとに終わりまで貫き、
テンポが早いが緻密なストーリー展開によってすさまじい愛憎世界を描き上げている。
主演のケネスとエマは実際夫婦とあって、本当に息の合った深みのある演技を楽しめる。
でも、こんなに早々と輪廻したら、まったくとんだ騒ぎよね。
ここまで当事者たちがいっせいに会する輪廻も珍しい。


『ハリウッドの悪夢』(1989、1991)
【第1話】監督:ウォルター・ヒル
こんな職業じゃ友だちはいないだろうね。

【第2話】監督:ロバート・ゼメキス
自分に子どもができたら絶対に見せたくない話。
アメリカじゃイヴの夜は最も危険なのかも?

【第3話】監督:リチャード・ドナー
もしも8つもの命を授かったなら、
金儲けよりもっと人の役に立つことに使えばよかったのに。
1つだけだから大切にするんだってことよね。

【第4話】監督:スティーヴン・E・スーザ
さあ、待望のカイル・マクラクランが登場。

どの話も人を陥れようとしたり、悪事からまんまと逃げようとしても
そううまくはいかないよ、という警告のホラーばかり。


『THE AMBULANCE』(1990)
監督:ラリー・コーエン 出演:エリック・ロバーツ ほか
なかなか一風変わった作品。
絶対的な信頼をおいて、普通なら人命を救うため病院へ直行するのが当然の救急車が悪事に利用されたら・・・?
想像だにしないだけに本当に薄気味悪い。
でもマッドドクターの存在がいまいち不明だった。
人物それぞれ特有のキャラなのがまた面白い。
なにか示唆するテーマじゃなく、見知らぬ女をナンパするとこうなるってまとめているのもなんともフシギ。


『バットマン・リターンズ』(1992)
監督:ティム・バートン 出演:マイケル・キートン、ダニー・デヴィット、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン ほか
やっぱり土台のコミックが日本に馴染みがないから、特別な思い入れは感じないんだけど、
前作もなかなかだったし、今回はいろんなキャラが出ていて、その虚構っぷりが楽しい。
デヴィットの怪人ぶりもいいけど、ヴィッキーと何らかの理由で別れて
ブルースとセリーナが運命的な出会いをする、束の間のロマンスが主流といってもいいだろう。

コケティッシュなキャットウーマンのキャラはイイ。
キートンの相変わらず渋くてクールなヒーローぶりもイイけど、33年後でしょ?
歳をとっていないのはコウモリ人間だから?
それに、忘れてならないのはウォーケンの妖しげな実業家ぶり。
メイクでなんだか逆に魔力を得て、ずっと若く見えた。
あと気に入ったのはペンギン男の愛車のダック。
割と可愛い趣味してるじゃん。いっぺん乗ってみたい。
それに彼の部下の一人のサル。メモを渡してくれたり、なにかと便利でキュート。


『TWIN PEAKS FIRE WARK WITH ME ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)(劇場にて

 

監督:デビット・リンチ 出演:カイル・マクラクラン、シェリル・リー、デビッド・ボウイ、キーファー・サザランド ほか
世界を話題の渦に巻き込んだ『ツイン・ピークス』はここに完結した。
いや、終わらせざるを得なかったと言えよう。
噂が噂を呼び、リンチならではの全く新しいスタイルのサスペンスストーリーは人気爆発し、
継続していくにつれて、かなり製作スタッフにトラブルやプレッシャーが起こったと聞く。

次第にローラ事件から離れ、別の話に移っていったTV版とは別に
今作ではスタート地点に戻って、ローラ・パーマーがどうして殺されたのか
殺人当夜の数日前に遡って、実体が語られてゆく。
それにしてもパーマー家の異常さときたら、理解できない。
いつからこうなのか、ローラは次第に歯止めのきかない悪の世界に墜ちてゆく。
(しかし、彼女のような女の子は必ずどこかにいるはず
ここでもボブの正体は分からずじまい。そしてブラック・ロッジとは一体

ボウイが1シーン出演しているが、ジェレミーが誰なのかも分からない。
シェリルの演技がやはり一番の見どころ。
TVでは見れなかった彼女の動いている姿が本当に美しい。
カイルは今作では象徴的な預言者でしかない。
やはり叶わぬ夢ながら、いつまでもこの迷宮の中で迷い続け、幻想を見続けていたかった。


『BUGSY MALONE ダウンタウン物語』(1976)



監督:アラン・パーカー 出演:ジョディ・フォスター ほか
バグジーは最近話題になった、あのラスベガスを作ったっていう人のことかしら?
禁酒法時代のギャング映画はいくつもあるけど、こんなに楽しい作品は初めて。
隠れた名作とはこのこと!

♪人の運なんて様々 それは自分次第 与えた愛はきっと返ってくるものなんだ

完璧大人向けの娯楽映画なのに、子どもたちにとってもためになるお話になっている。
なんといっても出演者全員が少年少女って
ギャングから踊り子、しがないタップダンサー志望の使用人、
床屋、洗濯屋、浮浪者、ゴロツキにいたるまでみんな子ども。
だから普通のセリフもいっちいち粋に聞こえてしまう。
ファット・サムが「分からないなら字幕を読めよ」なんてギャグを飛ばしたりして、
みんなそれっぽく言っているから思わずニヤけるシーンがいっぱい。

中でもジョディは、まったく天性の魅力かつ完璧な演技で、色っぽくバグジーに言い寄るところも
子どもとは思えない色気がある
セットから俳優まで本物をミニチュア化したような面白さ。
ステージダンサーたちの踊りっぷりも見事!
この出演陣の中にこのまま俳優になって成功した人は少ないかも。


『ダンス・ウィズ・ウルヴス』(1990)
監督・出演:ケヴィン・コスナー 出演:メアリー・マクドネル ほか
コスナーが監督・主演とあって、その時は「誰かの真似か?」と思っていたけど、
今のハリウッドで息絶えた西部劇にも通じる、果てしなく広がる大地を舞台にした
インディアンと軍人の出会いと交流、その上、愛と人間性を説いた限りなく素朴な作品。
単なる二枚目スターから脱し、年齢に伴った渋みが作品全体に感じられる。

タ・タンカ?の群れと狩りのシーンもイイけど、
野生のオオカミとのやりとりも、何度盗まれてもちゃんと戻ってくる忠実な馬
同じ大地に住む生き物同士「共存している」と実感できるシーンが胸に迫る。
そもそも人が追求し続け、今もなお発展させようと躍起になって探している理想の地とは
一体どんな形をなしているのだろうか?

便利な道具類(人命をたやすく奪うものも含めて)、文化教養、
言葉でのコミュニケーション等のキーワードは多い。
インディアンらの生活習慣の違い、ものの見方、考え方の違い、
それらの相違を補う笑顔と優しい良心が伝わってくる。
こうした白人勢力との絶えない血の争い、多くの犠牲の上に今日の私たちの
「文化的生活」が成り立っているとしたら・・・と考えると空しくなってくる。

劇場で観たらもっと広大な自然が目の前に広がって、よりリアルに観れただろうに。
一瞬、都市での生活を忘れさせてくれる作品。
まさか本当に動物たちが死んだのではないことは分かっているけれども、
やっぱりラストにことわりを読んでホッとした。

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