語り:六角精二、吉田羊
「東京ガールズコレクション2017 SPRING SUMMER 3月25日」
Instagram のフォロワー数は日本一
そして去年 ニューヨーク、ロサンゼルス、台北 3箇所でワールドツアー
そんな渡辺がインタビューの相手に選んだのは、喜劇役者ムロツヨシ(41)
観客を笑いの渦に巻き込む個性的な演技で、テレビ、映画、舞台と
今や芝居の世界になくてはならない存在だ
●
ふたりは1度共演している
・
『勇者ヨシヒコと魔王の城』(2011) ほか
それから6年 初めて対談することになった
【梅若能楽学院会館】
む:まさか再会がこういう形とは思わなかった
な:お元気ですか?
む:お元気です 拝見してますいろいろ よろしくお願いします
な:すごいですね 初めて入ったんです 能楽堂
む:僕ちょっとだけ去年お世話になった ちょっとと言うかだいぶですが
能と狂言を上演する能楽堂
ここは造られて半世紀以上になる
「muro式9.5 答え」(2016)
・
muro式.9.5「答え」 @梅若能楽学院会館(東中野 2016.8.23)(ネタバレ注意
この最初のつかみの部分からおかしかったな、喋り方が舌足らずで
ネタが何気に綺麗に繋がってるところが素晴らしかった
ムロは去年この舞台で一人芝居を演じた
2人は足袋を履いて、この能舞台を体感する
な:
失礼します うわ、もうだめだ この景色もすごくないですか
これ緊張します 舞台じゃないもの
結構滑るじゃないですか一休さんで
ダッシュしてきて、ちゃんと綺麗にスーッと止まって
む:もうちょっと真ん中で止まりたかったんですけど 楽しいです
な:
ちょっとやってみていいですか 思ったより滑る!
なんでそもそもここでやろうと思ったんですか?
ムロ:これがですね、正直言うと うちの事務所の社長が勝手に取ってきたんです
な:ムロさんがやりたいって言ったわけじゃなくて?
ムロ:
お断りしようとしたんです でも社長じゃないですか
「すいません、やっぱり能楽堂っていうのは歴史がありますし
しっかり舞台に立たれていらっしゃる方もいらっしゃる
まだ小劇場でしかやってない人間がそこに立つのは失礼なんじゃないでしょうか
ただ、能楽堂で一人舞台やったら面白いかもしれませんね」と僕から言ってたんです
気づいたら 断ってるうちに色々思いついちゃって
何人かでやろうとしてたんですけど、よく考えたら一人でやるっていうのもありかなと思って
社長にそれを言っちゃったんです
な:逆に自分でプレゼントしてる形になっちゃった
ムロ:お断りしようとしたら、プレゼンしていて、社長が「乗った!」って言って
●
ムロが主演、演出、時に脚本まで 手掛ける舞台 「muro式」
10作目となった去年の公演
ムロは、能楽堂という異色のステージを選んだ
枠がなく、どこにいても、常に観客の視線に晒される舞台で
舞台装置や共演者の力を借りず、自分一人で笑わせる
80分間出ずっぱりで5本の喜劇を演じた
こちらは湖の神様
正直者に金の斧を授けようとするが、受け取ってもらえず右往左往する場面だ
「お前が落としたのは、この普通の斧か?」
ムロ:
もちろんお客さんも来てくれて、おかげで満席で
笑ってくれるタイミングもあったし、時間もあったし
忘れられないのは、ここで初日をやった時に
カーテンコールで頭を下げて、下がってきて
楽屋までの道のりで、もっとまだできるなって思ったんです
それが初日だっていうのは、何かもっとできただろうけど
じゃあそれを探そうと思って、全国5箇所回れたんですけど
何度も探したんですけど見つからず、多分これが今の全力で
僕が求めている僕は、もっと上にあることだけが分かった公演です
あれが全力なので これが100%です
な:
ムロさんて、自分のツボなんですよ、ずっと
ムロさんが出てくるだけですごい笑っちゃうんです
勝手に今すごい恥ずかしいこと言いますけど
ムロさんの演技って、すごく分厚くて深いんですよ
ムロ:
嬉しくて そんなことを言われたことがないからあんまり
逆に「深くない」って言われる
喜劇役者なのに深くないって話が来るのかなと思ったら 戸惑いのほうが多いです
●
ムロの演技の魅力は、個性的なキャラクター表現
映画『明烏』(今ちょこっと観ただけで爆笑
細かい工夫で人物の特徴を印象づける
ホストを演じたこの作品では、瞼で目力の強さを表した
な:
ムロさんなりの、普段のいろんな喜劇をやられていると思うんですけれども
笑いへのアプローチ方法とか、そういうのがあったら、是非とも知りたい
ムロ:
人を観察までいかなくても、人と接することが好きな分、人を見てるから
その仕草というか、体勢、佇まいがうつる時があるんですよ
それは覚えておくようにします
すごく仲良くなったけど、こいつ話す時絶対、
自分が「この話聞いてくれ」っていう時二重になるなとか
細かいところが気になっちゃうんです
それを自分に移して、しばらくやってみたりとかして
高校の友達が家でよく遊んでたんですけど
絶対そいつがこうやって座ってゲームやるし、こうやって喋るんですよ
こいつ、なんでこの座り方しかしねえんだろうと思って
それを例えば群像劇で、床の芝居とかで使ったりします
そうすると、人とは違うんですよね
僕にとっては、いた人間だから、すんなりやれる
目立とうとしてやってるわけじゃなくて
な:本当に今まで出会ってきた人たちのクセとか、そういうのを自分の中で
ムロ:
それもある程度仲良くなった人じゃないと移らないから、入ってこないから
な:
それは言ったりとかしないんですか、本人に
ムロ:
絶対言うわけないじゃないですか
直っちゃうじゃないですかクセが そのままにしておきたい
●
「LIFE!」収録現場
・
『LIFE~人生に捧げるコント』まとめ
役者のムロがお笑い芸人たちと渡り合っている
内村:
直美ちゃんが指名したの? なんでだろう ? 腑に落ちない
ムロ:分かんないです 他ジャンルの2人が話すっていう『SWITCH』ですもんね
内村:同ジャンル!(爆
塚地:一緒じゃないねえ
内村:こっち側の人間ですよ 人選間違ってます
ホームグラウンドの演劇とは異なるコントの現場 試行錯誤が続く
「私の名はエンジェルマスター 初めましてだが、敵ではない」
「ちょっと天使っぽい感じで 羽が生えた感じ」
「分かりました了解です」
演出家の指示を受け、演技を修正する
(ちゃんと演出してるのか! ウッチャンが全部考えてるのかと思ってた
自作の舞台以上に 慎重に演じるムロ
取り組んできた喜劇とは違う笑いを貪欲に吸収しようとしている
な:
役者さんの作り出す笑いと、芸人さんの作り出す笑いの違いっていうのはあったりするんですか?
ムロ:
やっぱりコントとか漫才は3分、4分、5分の勝負
僕らがやってきた演劇とか喜劇って、例えば90分、100分、120分の
一つのストーリーの上に立ってるから、ひと言の力というか
笑いの取り方は、お笑いの方にはかなわないですよね
僕はその一つの笑い、一つのワンフレーズというのか
それに対する一つの受け身、ツッコミ、その1セットでの笑いの量と
僕らがこの量を取るためには5分必要かもしれないですね 下手すると 伏線じゃないですけど
「こういう人間です」ってお客さんに分かってもらうまでに
僕らは必要なんだと、その違いは大きいと思います
恥ずかしながら
「ネタ見せ」というものに行かせてもらったことがあるんですけど、
芸人さんの事務所のネタ見せに
な:どんなネタをやられたんですか?
ムロ:
これを後に「LIFE!」でちょっと乗せたんですけど
「サスペンダー王子」(!)と言いまして
「さっささ、さっささ サスペンダー! パチッ いてっ」ていうネタで
もう悲劇になりました 恐ろしい悲劇がNHKで流れました
内村さんが「意味が分からない」って言ったんです
な:内村さんが「意味が分からない」っていう時は、お手上げ状態という時です
ムロ:
言ってくれただけまだいいですよ
無表情でずっと僕を見ることがある それが一番恐い(爆×5000
「怒ってる?」って言うと「怒ってはいない」
●
ムロが今年出版した本の中にこんな一節がある
ムロが4歳の時、両親が離婚
母は家を出て、父もムロを親戚に預け、去っていってしまった
ムロ:
揉め事が絶えない家庭の中で 笑いは争いに抗う武器だった
家族がしっちゃかめっちゃかになっている環境だったんですよ
波風ばっかり立てるから
家族の誰かが怒り、それを止めに入って、いつのまにか喧嘩になり 僕は静かにご飯食べる
すると、おじいちゃんが、そこにある皿を取り出して割り出す 激しいんですよ
そこまで喧嘩しなくても 見てるのもいい気分じゃないので
おちゃらけるのか、何か「僕はね」って話したりとか
僕が何かしてれば、笑うか怒られるかだから
その時にこの家族同士の喧嘩はないわけですよね
僕がやってれば大丈夫だしというところの防御策ですよね
怒らないように 波風が立たないように
な:
勝手なイメージですけれども、すごい喋るけど、それも全部嘘みたいなw
ムロ:
嘘は嘘なんだと思いますよ 子どもの頃からなんですよね
両親が離婚して、親戚の家に預けられたんです
これを辛いとしたら、育てることになった親戚の家族たちは「何で?」と思うじゃないですか
嫌ですよね かわいそうだし それは辛いだろうなと
「僕は辛くない」という人間のほうが当たり前にいてもいいのかなっていう
子どもながらに「迷惑をかけちゃいけない」ていう風になってたんです
例えば、辛いものとして傷になっているのか
それを固めていって、当たり前にしていく作業によって
人格を自分の中で「この人たちに迷惑をかけない」
「この人たちが“いい”とする自分」に作り上げていくので
本当の自分はもう自分でも破れないぐらいの硬さ、厚さがあるので
僕も開けてみたいですけど
な:でもそれがあるから、色んな役とかに生かされてるっていう事もあるんですか?
ムロ:
最終的には、この仕事を選んでるっていうことは、あるのかもしれない
結局、作り上げた自分ですので そうなんでしょうな 全部嘘っぽいんでしょうな
でも、その嘘っぽいのが本当だっていうのが自分の中にあるんです
でもその嘘っぽいのが本当だというのも自分の中にある
これはこれでしょうがないですよね そう感じました ちょっと喋ってて
●
19歳 役者の道を歩み始める
家族に認めてもらえる人間になろうとして有名大学に進学
しかし、自分の意思がない生き方に疑問を感じていた
そんな時、ある舞台と出会う
手塚治虫原作「陽だまりの樹」
自分たちが望む舞台を作ろうと全力で演じている役者たちに心を強く打たれた
初めて家族にわがままを通し、大学を中退 役者の道を歩み始める
「ある一人の青年」初舞台のチラシ
初舞台は、脚本作りから、稽古場の予約まで一人でこなし、自信満々で一人芝居を上演
(この初舞台から黄金原聡子さんは応援してたのかな
ムロ:
初舞台ですから 観客は身内ですよね全部
家族の友達、友達の友達、友達のお母さん 学芸会みたいなもんですよ
お金をもらって 立ってやったんですよ 誰一人笑わなかった
辛いものを見る顔なんですみんな それから15分後、可哀想って顔になるんです
ツヨシかわいそう でもみんな見てあげなきゃっていう
だから笑わせようとすることすらできない段階というか
舞台に立って、まだ手の位置すら分からないみたいな
よくそんな奴が一人舞台やりますよね
あの顔が忘れられないです
どこ行けど、どこ行けど、真っ暗で
何触っても何もないみたいな数年があって
友達も一人ずついなくなるわけじゃないですけど、一人ずつ顔が変わってくんですよ
さっきの話じゃないですけど
「ツヨシが役者目指すなんてカッコいいじゃないか! 絶対できるよ!」が1年目
2年目「もうちょっとな そりゃそうだよ 下積みが必要だよ」
3年目「まあまあ」
4年目「んーーーーー」
5年目、6年目「・・・ダメかな」
7年目には「ダメかな」もなくなるんです
みんな触れなくなるんです、俺の事に関して、気を使って
これが結果っていうか、現実かあと
何で俺、舞台やってんだっけ?
「なんであなたは役者をやっているの?」と自分に問い続けて何も答えられなかった
自分にカッコつけてて
ある日、26歳に
「なんでやりたいの? 楽しいからでしょう」って答えたんですよ、自分が
一気に「あ、楽しめばいいんだ」ってなった瞬間から
人がウケようがウケなかろうが、笑おうが笑わなかろうが
楽しくやったら観客は、楽しそうな人間を見て、目を追って笑うんですよ
と思った時、「これか!」と思って それが分かった公演は楽しくて楽しくて
今まで一度だけ
「あれを味わいたい」っていう感覚があって
26歳の時の作品なんですけど、あの感覚を味わいたくて
まだ舞台を続けてるというところもあるんですけど
舞台の袖で出番を待つじゃないですか 「早く俺の出番来い」
早くあの明るいところに行きたくて「早くきっかけのセリフくれ」って
俺が早くそこに行きたいっていう すごくワクワクして行って
その時はすごくお客さんといい感じになって
楽しい舞台ってなったことがあるんですけど
袖で出番を待ち焦がれたその時の舞台はこちら
「BUT SPRING HAS COME」(2003)作・演出 ますもとたくや
「初めまして この春からこの部署に配属になりました ヒロシです よろしくお願いします」
ムロが演じたのは、落ちこぼれが集まる部署で奮闘する新入社員
周りに振り回されながら物語を展開する役だった
「君も僕たち同様、ただババを引いただけさ」
「私はババは引きません、決して」(顔に平手打ち
「君の言う通りだ」
「なんでだよ!」
ムロ:
その楽しみを終えた次の公演から、その感覚がやってこないんですよ
あれが忘れられなくて だからやってるんだってことにもなったし
な:それってやっぱり、笑ってもらうとか、笑いというものに
ムロ:
笑い声でした 僕は喜劇が、笑い声が好きなんだなって確認できた
発見じゃないですけど これだ!ってなった
「muro式5「+」足しましょう、」(2011)
喜劇の魅力にとりつかれ、ムロは芝居に邁進してきた
その中心をなす舞台が「muro式」だ
「muro式6 「グラフ」 ―その式をグラフで表しなさい、―」(2012)
これまで10公演 毎年続けてきた
ムロが得意とするおかしなキャラクター達が、ハイテンションな演技を繰り広げる
「muro式9「=」」(2015)
難解なテーマは売り込まない ひたすら自分が面白いと思う喜劇を追求してきた
な:
最初の「muro式」を始めたきっかけっていうのはあるんですか?
ムロ:
32歳の時なんですけど、結局仕事がなかったんです はっきり言うと
これはもう結果を受け入れるしかない じゃどうしよう
頑張って営業もしようと思ったんですけど
まず、自分の面白いことはこれですと言ってきたお仕事ほど
価値のあるものはないんじゃないかという 32歳の時の考え方は
だからまず、仕事がないことを受け入れて
自分が面白いことはこういうことですけど、良かったらどうですか?という
公開オーディションの場として
それが最大の営業だと思います 仕事が欲しいという気持ちを
な:
それって多分なかなかできないことだと思うんですよ
そう思ってたとしても、実際にやりますってなったら
やっぱり凄い稽古もするし、自分のやりたいことをやって、お客さんの反応とかもあるし
それも含めての公開オーディションみたいなものじゃないですか
ムロ:
自分も試される
だから自分に責任を持てるように、自分発信で
自分の責任ですって言って、自分の名前を入れたんです そっからですね
今度は欲しいお仕事がこれからもらえた時に、また帰れる場所を作りたいというか
1年に1回、確実に自分がこういうことやりたい、自分をさらけ出す場所を作れば
嫌でも調子に乗らずに済むし、逆にここは自信を持っていい
例えば、誰が見ても有名な人と対峙した時に
自分を出す方法として、自分の城を持っている人間という
裏の自信を持っているので、堂々とその人の前で
自分のお芝居をできたのは、そこがあるからだし
●
挑戦を決意させたのは、大失敗に終わったあの初舞台の苦い記憶
去年上演した最新の「muro式9.5」では、一人芝居に挑んだ 客席は大いに沸いた
ムロ:
だから、その傷を癒すために去年ここに一人で立った
取り返さないといけないから
そのまま 失敗とか、後悔のまま終わるのは悔しいじゃないですか
その後、三人舞台とかやって、ここ7、8年は3人舞台とかやってたんですけど
一人はやってないっていう思いがあって
去年ここに立って、取り返したいものがあるっていう感じで
やり続けたのは感謝してる 前回、前々回の自分によくぞ止めなかったと
な:
ちょっとあったんですか やめようかなと
ムロ:
止めたいのはあった
続けるのはこんなにきついかっていうのは 「muro式7」の時にありました
継続ってこんなに難しいんだっていう
やるって自分の中で決めちゃってるから やるって決めたからやるんですよ
やりたいからやるんじゃなくて やりたいからやるものなんです舞台って 自主公演って
公演の中身に関しては、もちろん追い詰めて、面白いものを作っていくので
その中身の質としてはいいと思うんです 追い込みしかない
だからよく40になると、20代の子たちに
「どうやってムロさんみたいに舞台やれますか?」って言われるから
本当にアドバイスはひとつしかない
「劇場を予約しろ」そしたら絶対やるしかない
な:
今後やりたいなって 興味ある役とかってあるんですか?
ムロ:
やったことない全部ですけど
お堅い役をやったことないので
ドラマでよく弁護士とか、医者とかないんですよね
なんで笑いました? あなたの質問に私は真面目に答えてるだけ
それに関してなぜ笑ったんだろう
な:
今想像したんですよ 弁護士とかやってる
また多分ふざけるんだろうなっていう そこの魅力なんですよね
ムロ:
たださっき言った、本当に真面目な話
嘘で固めてる部分もあるし、嘘の中に実は本当を出してる自分もいると思うんですよ
そういう意味でお芝居もそろそろそういうみんなが見えてる正面から
変えたいっていうのはあります
みんなの印象はそうだと思うんですよ ふざけてくれるんだろうなとか
嬉しいですよ その期待に応えつつ、今度はあれ?ちょっと待って
固めるのか、もしくは1枚ずつはがしていくのか
それを未来の自分に向かって
最後50になったら、本当の自分ですよ ちっちゃい 静かな
(それは、例えば『大恋愛』とか?
・
ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』 (2018 全10話) 1~5話
******
SWITCH
【吉本興業東京本部】(廃校となった校舎を利用している
<稽古場>
な:舞台の稽古をしたりダンスのレッスンをしたりとかする場所です
ムロ:稽古場がある事務所はいいな
な:鏡があるとやっぱりダンスのレッスンにはいい
ムロ:僕もミュージカル俳優ですから、分かります
な:踊ってみましょうか?
ムロ:すいません 後半、全然見えなかったw
●
渡辺は去年ニューヨークでライブを行った
「東京ガールズコレクション」(2017年3月25日)本番当日
多忙を極め、一分一秒を惜しんで、着替え中にもイヤホンで音楽を聴いてイメージトレーニング
本番直前 会場の裏で練習する渡辺
まだ振り付けは仕上がっていなかった
本番では熟練ダンサーでも難易度の高いダンスを見事に踊ってみせた
ムロ:
例えば1曲にどれぐらいのお稽古時間ですか?
ステージに上がるレベルまで持って行くまでに
な:
2時間ぐらいですかね
プロのダンサーさんは覚えるのがすごい早い
私もそれについていかなくちゃいけない
真ん中で踊るのに「何で間違えてるの?」って思われるのが嫌だったんで
追い込まれないとやらない 結構サボり魔なので
追い込まれたほうがガっと覚えられる
ムロ:
同じ 全然覚えないですよ、僕は 劣等生です
みんなから「いつムロは覚えるんだ」って
下半身と上半身が分割しちゃってるんです、意識が
足と腕が違う動きができない ずっと人を見ながら、どうやってるのか分からないです
●
渡辺の人気を象徴するのはインスタグラム
その人気と活躍が称えられて表彰を受けたほど
ムロ:
自分の中に日本一が一つあるってすごくない? プレッシャーはあります?
な:
ありますよ 急に1位になりましたって はぁ?みたいです
どうしよう これまでやってきたことと違うことをやらなきゃいけないとか
インスタとしての仕事が増えてきて
「インスタの女王」と呼ばれてますがどうですか?という取材が増えたりして
これちゃんとやらなきゃ 1位だって見てフォローしてくださる人もいる
だから今は週1ぐらいしかあげてない
ムロ:
今日はせっかく日本一の人に会ったので
インスタを教わって、私、今ここからインスタをやろうかなと
な:何でも聞いてw
ムロ:開設します
●
この場でムロも Instagram を開設する
な:
今からムロさんの第1回目の投稿の写真を撮りましょう
ムロさんプロデュースで大丈夫です 椅子と机使います?
ムロ:どうやったら
綾野剛になれるの? こういうこと?(どこ目指してるの?爆
●
渡辺直美のおいたち
台湾生まれ まもなく父の生まれ故郷の日本に移り住んだ
両親は離婚 台湾出身の母に女手一つで育てられた
な:
母親がクレイジーな人で、父がいなかったので、父親代わりと言うか
結構パワフルな人で 一時期パチンコで生計を立てていたいたことがあった
急に仕事しなくなって
パチンコ屋が22時までだったので、家で待機してるんですよ、お腹空かして
母親が22時に帰ってきて「今日は勝ちました!」みたいな
勝った時はレストランにご飯を食べに行って
「負けました」っていう時はコンビニ弁当だったんですけど
そんな感じの生活をしてて
台湾にもちょこちょこ帰ってたんです
子どもの頃は、夏休み1ヶ月半丸々台湾に行って
台湾のテレビのチャンネルって100チャンネルぐらいあって
その中の2つが日本のチャンネルで
その1つで、
志村けんさんの「だいじょうぶだぁ」が流れていた 3時間おきに
英才教育というか 志村けんさんみたいなコントの人間になりたいなと
ムロ:
顔芸て言ったら失礼ですけど 確かに志村さん少し入ってますもんね
芸人を目指したのはどっからです? お笑い芸人さんになろうと
な:
中学の時ですね
テレビの中でしか見たことのなかった芸人さんが
「ルミネtheよしもと」という舞台があって
漫才とコントを生でやっているのを見た時に「ここに立ちたい!」ってすごく思った
ムロ:それでなれるのも凄いけど 一緒だもんな 俺もあっち行きたいって思った
な:
自分で吉本に入るって決めて、 勉強も全くしてなかったので
高校3個全部落ちて 18で東京に出るって決めてたので
15からバイト始めて、3年間お金を貯めて
東京に出てきて 芸人生命が始まった
18歳で芸人やタレントの養成所へ1年間笑いを基礎から学んだ
「DVD LIVE STAND 08 OSAKA」
デビュー間もなく、
世界の歌姫ビヨンセのモノマネでブレイク
順風満帆に見えるスタートだったが、渡辺は常に壁を感じていた
ムロ:21、22は早いな
な:
でも大変でした 私は10年後にテレビに出れたらいいなってスタンスでいたので
下積みをちゃんとやりたいと思った 何も知らずにテレビに出るのは嫌だったので
逆に暗黒でした テレビに出ている最初の時期
何も知らないですもん 先輩も「誰こいつ いじれないし」
自分から「こういう人間なんです」って言えないし
ひと言も喋らないまま収録が終わったりして
私がなりたい芸人、これじゃないみたいな
だからビヨンセの音を聴くだけで吐き気がすごくて もう聴きたくない!みたいな
それでデビューしてるから、やるのが当たり前なんですけど
当時は、私の全てはこれじゃない でもやらなきゃいけない
仕事は決まってるわけで
ムロ:そこからどう変えていくんですか、自分を?
な:
本当はコントとかやりたいのになって思ったんです
もっとふってほしいし、もっと私ならこうできるのに
ゲストで近い先輩がやってるのに、私は後ろで見てるだけで
でもいざふられたら、何もできないってことは、今の自分には早いんだなと思ったんです
できることを一生懸命やろうと思って
ビヨンセをとにかく伝統芸能みたいにしようと思った
「これ見られて嬉しい!」という風にしようと
ムロ:
そっか、1回苦しんでる分、苦しむ自分を超えた時
やっぱり楽しいもそうだけど、やりがいとか、使命感が変わってきてますものね
今度は自分がやってるから
きっかけの番組とかあるんですか この人との出会いとか?
な:
本当に先輩たちに助けられました
芸人としてこの世界に入ってるので
「大喜利」とか求められるんです
大喜利ばっかりやって
あんまり日本語が今ほどうまくなかった 片言だったんです
だから、すごいその時悩んでて
(こんなに淀みなく喋れてるのに!?
オリラジの中田さんがすごい頭がよくて、大喜利が得意なので相談したんです
「どうしたら大喜利上手くなるんですか 上手くなりたいんです」
中田さんが
「
お前なんか大喜利やらなくていいんだよ お前に長所いっぱいあるだろう
ものまね出来て、下ネタも面白くて 色んなことやってて
なんで短所ばかり見てるんだ 短所を伸ばす作業より
長所を誰よりも伸ばしたほうがいいよ」って言われて
そこから気が楽になって
自分の長所って何だろう?と思ったら、ダンスやコント、表現かなと思って
●
突然の活動休止 ニューヨーク留学
巧みな表現力を武器にして、渡辺は人気芸人となる
しかし2014年突然活動休止 誰の助けも借りず、自費でニューヨークに留学した
ムロ:
飽きられることの怖さってあります?
な:本当にあります めちゃくちゃ怖いです
ムロ:
あのきっかけもすごいですよね お仕事いっぱいある時に留学しようって
仕事がどうなるか分かんないじゃないですか? 恐怖はなかったですか?
な:
ありました でもこの先自分の武器がないなと思った
このまま何もせずに仕事して、2年後のほうが怖かったです
ムロ:次の次かあ
な:
だから留学して、立派な表現者になりたいって
1回日本のお仕事をお休みして
表現者の街って言ったらニューヨークかなと思って留学しました
ムロ:楽しかったですか?
な:大変でした つらかったですね、最初は
ムロ:英語は喋れるんですか?
な:全くです
eat とかfoodしか喋れなくて
●
不慣れな外国で戸惑う渡辺を助けてくれる人がいた
「渡辺直美 世界のポップアイコンへ おこがましくてごめんなさい」(2016)
現地の知人が紹介してくれた
住む家も見つからず、途方に暮れていた渡辺をみかね、自宅に住まわせてくれた
そのおかげで、渡辺は語学学校や劇場に通い、本場のエンタテインメントを学ぶことができた
な:
すごい人だったんですよ お兄ちゃんみたいな感じで
そこで色々学んで、舞台とか見に行ったりして
ニックの優しさ こんなに支えてくれる人がいるなんてと思った
でもすごい恥ずかしかったんです
ニューヨーク行く前もいろんな先輩に甘えて
私もすごい八方美人なんで、失敗しそうになったら「先輩~」とか言って
全部助けてもらっていたので
そんな自分が嫌でニューヨークに行ったっていうのも一個あったんです
一人でどうにかしたいと
だからすごい謝ったんです
「本当にこんなに人に甘えて頼って ごめんなさい
私はそうなりたくなくてニューヨークに来たのに 結局みんなに頼ってしまいました」って謝ったら
「なんで謝るんだ そうやって人が助けてくれるのは、直美の人柄なんだから
ありがとう その言葉だけで俺は嬉しいよ」って言ってくれたんです
そこからすべて、人に頼ってきました
みんなと何かを作っていくっていうことを大事にしていきたいなと思ったし
自分のやりたいこととか、考えていることを、今まで誰にも言わなかった
皆さんの言うとおりですね 自分の意見もないし
スタッフさんの言う通り「わかりました それやります」て感じだったのが
「それだとダメだよね」って言うようになりました
自分はこう考えてます こういうことをやってきましたとか
●
ロサンゼルス公演リハーサル
やりたいことに貪欲になろうと決めた渡辺が去年挑んだのは
世界3ヶ所を回るワールドツアー
ロサンゼルス公演本番
渡部のことはほとんど知られていないアメリカで成果を残した
台北 松山空港
生まれ故郷の台湾でも公演 大きな喝采を浴びた
ムロ:自分の意思がきっかけでワールドツアーになった?
な:
若さと言うか いろんな先輩たちが伝説を築き上げたので
「すごいなー伝説」ってことも大事だけど
うちらが伝説作ってもいいじゃないかと思ったんです
ムロ:さっきと違うね そこがやっぱり留学後に変わったんだ
な:
誰も私のことを知らない人たちの前でネタをやりたいと思った
その時にどんな顔するんだろう?
ムロ:
なんで日本じゃなくてワールドなのかって、そこが大きいんだ
自分のこと知らない、その一発目の印象と言うか
な:
あと、
裏テーマで売り込みっていうか、向こうの関係者を全員呼んで
公開オーディションじゃないですけど
映画関係とか、コメディ、ファッション、記者も呼んで
そこで「こういう人間いますよ」とアピールをして
そこから次に繋がればいいかなって思ったんです
ムロ:
公開オーディションは同じ気持ちです 自分の舞台っていうのは
僕はこういうお芝居が好きなんです やりたいんです 似てるところがありますね
な:似てると思います
ムロ:
ブランド立ち上げて、テレビの仕事 結構な忙しさ 考えることが違うじゃないですか
な:
結構頭を使うので
例えばちょっとゲストでドラマに出させてもらった時
セリフ覚えながら、服作って、ダンスの練習もしなきゃいけない
1日に違う脳を使うことが多い時は、本当にパンクしそうになった
ムロ:
なりますよね、絶対 それをなにでパンクする前に息抜くんですか 方法はどうするんですか?
な:
その時は泣きました 無理してるほうがきつくて
はい、辛い 今辛い すごい辛いんです
めちゃめちゃキツいです 見て見てヤバくない?
ということを周りにも言って 泣きます わー!って泣いて
「よし、頑張る」みたいな
感情を出すって感じです
ムロ:
俺もやっとできるようになった! 辛いって言えるようになった
ここ1年ぐらい あれ言うと楽になるんだよね
人が離れると思ってたから
だって子どもの時、絶対言っちゃいけない言葉だったから
「辛い 悲しい 不幸」NGワードだった
な:
私もずっと言ってこなかったんですよ 友だちにも
「うちの母親クレイジーで」って 絶対言わなかったし
だからずっと言ってこなかったんですけど 特に子どもの時とか 無理してたんで
よく母親の話とか、家庭環境の話とか芸人さんとかにするんですけど
「もう俺だったらグレてる こんな生活きついと思う
でも よくお前、明るく生きてこれたな」と
私もその当時つらかった時もありましたけど でもそれが今お笑いになるわけですよ
ムロ:
僕も同じです ちょっと似すぎてますね
な:そうなんですよ だからなんかいい感じですね
ムロ:そうですね
●
ルミネtheよしもと(2017年4月)
新宿の駅ビルにある劇場 渡辺が芸人を目指すきっかけとなった憧れの場所
(ステージから降りたらすぐ事務所みたい 客席とすごい近い! 足元見たら学校の上履きみたいなw
2008年 初めてこのステージに立つことができた
以来、超がつくほどの売れっ子になった今も出演し続けている
失敗するかもしれないという緊張感 生のステージには負担とリスクがつきまとう
それでも渡辺は、目の前の観客を笑わせることが何より好きだ
な:
やっぱり人が笑ってるのがすごく好きで
人がゲラゲラ笑っているという空気感がすごい好きなんです
それは子どもの頃から一緒で 学校でもそうだったし
笑うことってすごい大事とか言うじゃないですか
笑わせることが仕事なんですけど
みんなで笑ってる空間がいっぱいどこにでもあったらいいなって思うんですね
例えば SNS とか 今すごい中傷とか悪口書くけど
悪口書いてる人よりも、面白いことをやってる人のほうがフォロワーが多かったりとか
悪口書いてる人はフォロワーが3とか4とか
私の所にももちろん悪口が来ますけれども、そんなのは求められてないんだよって
ムロ:何も生まれないと思いますよね
な:
その人に攻撃をするとか
世界からなくなったらいいなと思うので
私は笑うことが大好きなので、笑わせたいし、ずっと笑ってたいなっていうのが
自分の人生のテーマですね 笑いは
ムロ:
僕は、
自分で喜劇役者って名乗るようになったきっかけっていうのも
結局、テレビをつけたら悲劇だらけ 残念ながらあるじゃないですか ニュース一つにしろ
(すごい深い話になってきた
悔しいですよね だったら喜劇をいかに増やせるか
それで自分で名乗るようにした
なぜそういうことをやらなくちゃいけないかと言うと
あの日、
3.11で見た景色にはかなわない
あの悲劇には僕らは何をやっても敵わないかもしれないけど、足掻くことはできる
またあれがやってくるかもしれない国にいる 場所にいるわけで
僕らはそれが来てほしくないし、来るまでの間、どうか喜劇であってほしい
だったらあがいてみせよう 恥ずかしいけど喜劇役者を名乗ってみせようと思う
全員が全員 笑わせる事を目指すこと
な:そうなんですよ
全員笑うってどうすればいいのっていう日々の挑戦
ムロ:でもこの機会に喋っていいのかってふと思ったんですよ、さっき
な:
喋る機会がないじゃないですか
真面目に喋ってるところなんて求められないし、普段
だけど、
自分の思うことを言っていかないと
自分じゃなくなくなっちゃう気がして
「これムカついたんですよ」
「これ悲しくないですか」
「うわー楽しい!」
いろんな面を出したほうがエンターテインメントとして
皆さん笑ってくれるんじゃないかなって
だからムロさんもいっぱい、いろんなムロさんを今後見せてください
ムロ:それこそ思ってないでしょう(爆) じゃあこれを機に友だちになってください
な:本当ですか?! じゃあ是非ともお願いします
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いよいよムロがインスタを開設 収録中に撮った写真を投稿する
この番組がきっかけなんだ/驚
今は「大恋愛」で 共演した戸田恵梨香ちゃんとライブ配信するまでになってすごいね
ムロ:今開いた 開いたけどどうしていいか これでいいですか じゃ投稿しますよ 初投稿!
でも、その後の番組で再会した時、全然連絡とってくれなかったって言われてたよねww