倉部史記『看板学部と看板倒れ学部』を読んで「歯学部」について新たに知ったことがあります。
それは戦前の日本での歯学教育は以下の6校。
東京医科歯科大学のみが国立です。
東京歯科大学
日本歯科大学
日本大学歯学部
大阪歯科大学
九州歯科大学
東京医科歯科大学
経済が発展し、食が豊かになると虫歯が増えたそうです。
具体的には1960年代に子どもの虫歯が社会問題になっています。
虫歯の子ども割合が40年代の約2倍に急増。
60年代から80年代までの小学生の8割が虫歯。
チョコレート、飴などのお菓子の甘味が原因とされています。
問題を解決するために国家の後押しもあり、
この時期に歯学部が大学に新設されています。
1965年までには
愛知学院大学
神奈川歯科大学
広島大学
岩手医科大学
1980年代前半までに
さらに16大学に歯学部が新設。
現在29の歯学部が存在しています。
結果として全国の歯科医院数はコンビニエンスストアの数を上回っていることは周知の事実です。
歯科医師にとってはさらに悪い状況になっています。
歯科医師数の増加や予防の浸透などもあり
子どもの虫歯の割合はピーク時と比較して約30%まで急落。
患者が少なくて、歯科医院が多いのです。
学校での歯科検診で歯並びの悪さが指摘され、
歯列矯正が進められるのも頷ける話です。
患者が少ないのですから夜11時まで診療したり、
日曜診療を行う歯科医院は都会では目新しいことではないのも納得できるのです。
さて、ご承知のように、歯学部は医学部同様に6年制です。
私立大学の学費は6年間で約3000万円かかると言われています。
歯科医師数は過剰であり、歯科医師になるには多額のお金がかかる現実。
当然ですが、志願者数も減少しています。
2007年1万人を超えていた志願者が2012年までに半数程度まで減少したそうです。
今まで該当する歯学部への受験者や進学者が一人もいなかった高校が推薦入試指定校になっている現象も、上記理由からわかるわけです。
今、国主導で何かと話題になっている岡山理科大学への獣医学部新設問題。
長期的なスパンで見ないと獣医学部新設は歯学部と同様の道をたどる危険性が大なのです。