『嘆きのボイン』は1969年の月亭可朝さんの大ヒット曲です。
「ボインはぁ〜赤ちゃんが吸うためにあるんやでぇ〜、お父ちゃんのもんとちがうのんやでぇ〜」♪
「おおっきいのがボインなら、ちいちゃいのはコインやで、もっとちいちゃいのはナインやで」♪
当日、小学生だった悪ガキ達はこの歌詞を暗記して歌って笑いながら下校していた記憶が鮮明に残っています。
さて、なぜ冒頭で『嘆きのボイン』を紹介したかというと・・。
先日、稀見理都『エロマンガ表現史』を読んだからです。
リビングのテーブルに同書を置いて置いたら、なぜかパートナーに叱られてしまいました。
「私のだと思われるでしょうと」。
そんなに変に思うようなタイトルであれば、電車内で読むのはやめようと決めた私です。
さて、同書内のマンガにおける「おっぱい表現」の変遷史を興味深く読みました。
特に「巨乳」についての項目。
「ボイン」、「デカパイ」という言葉の方がかつて主流だったにも関わらず、
1989年に「巨乳」という言葉が一般化したそうです。
確かに冒頭で挙げたように月亭可朝は「巨乳」と言わずに「ボイン」と歌っていました。
P.36 「1989年に巨乳AV女優の松坂季実子がデビューを果たし、その強烈なおっぱいを持つ彼女に対して週刊誌が「巨乳」という言葉を用いて紹介した事で、一躍この言葉が世間に広がった」
ちなみに、「巨乳」とほぼ同時期に定着したと思われる言葉に「貧乳」があるそうです。
「貧乳」以前は「ぺちゃぱい」「ない乳」「ぺったんこ」「洗濯板」などと表現される事が多かったとのこと。
「巨乳」や「貧乳」などの言葉の一般化はAV女優、アダルトビデオとVHSビデオやDVDデッキとの関係が深いという指摘がありました。
確かに、それについては渡辺潤編『レジャー・スタディーズ』(世界思想社)に岸さんが書いた「ギャンブルとセックス」にも同様の指摘があります。
P.210 「AVの台頭と家庭用ビデオテープレコーダー(VHS)の普及が、ほぼ足並みをそろえている・・VTRなどの機器が過程に行き渡るのと並行して、レンタルビデオ店が急速に増えていきました」
一つの事を突き詰めて調べ上げて、発表することが『エロマンガ表現史』の随所に書かれています。
漫画を好きな方もそうでない方も、ぜひ一読して見てください。