大内孝夫『音大崩壊』(YAMAHA)を読んでの感想です。
・音楽大学の学生数は20年で3割以上も減少
・音楽大学は年間200万前後の学費が必要で、一般の文系学部の2倍以上
・音楽大学には比較的裕福な家庭の子女が多かったのですが、今では推定で約3割が奨学金を得て進学
・「演奏活動」という名の1日1万円にも満たない単発のアルバイトと、飲食業などでのアルバイトを組み合わせて過ごす卒業生
・ヤマハの「大人の音楽レッスン」1997年から始まり99年の生徒の平均年齢は20代後半でしたが、今や50歳に達している。
・生徒数も10万人と子ども生徒数30万人の3分の1。
・スポーツ庁はあっても音楽庁はない。
・音楽の授業時間数は大幅に削られ、はっきり言えば「どうでもいい科目」扱い
著者の大内氏は音大復活に向けての提言として目的別コース設定とコースによる授業料の変更を提言されています。
学生募集のネックとなっている年間200万円の授業料を一般的な文系大学
(1)音楽家を目指すコース:年間平均学費230万円
(2)教員、教諭、保育士などを目指すコース:年間140万円
(3)音楽教室の先生を目指すコース:120万円
(4)音楽総合コース100万円
確かに、それぞれの学生の目標とするキャリアは異なっていますから実現可能であれば学生にとっては有難いコース設定だと思われます。
さらに望むのなら、学年途中でのコース変更が可能であれば尚よいですね。
ただ、このようなコース設定をした場合には教員が余ることもありえますので、労使の同意形成も必要かと思われます。
加えて、伝統的な音大の音楽観(ヒエラルキー)
最上級に西洋音楽(バロック、古典、ロマン、現代)
通俗的にポップス、ロック、JAZZ、タンゴ、シャンソン、ソウル・・。
下賤はアニソン、歌謡曲、演歌、ラップ・・。
殆んどの日本の音楽大学は西洋音楽を主としているが、学生はロックやアニソンにも興味があるという齟齬が生じているので学生集めに大学が窮しているのかもしれません。