罪滅し編における「仲間」:梨花が彼らに執着する必然性

2008-04-30 23:53:39 | ひぐらし
地獄ごくごく~見ているうち~に~、敬う人になりたくて~♪


つらい目に遭うと、人は何かに縋りたくなる…という意味ありげだけど実はさっき思い付いただけのフレーズを枕に、今回は罪滅し編の「仲間」とについて書くことにする(ポイントとなるのは部活メンバーの「仲間」観、そして圭一が自分の過去を打ち明けるシーン)。


自分の記憶が正しければ、罪滅し編における「仲間」の説明は、原作に比べてかなり追加されている(もっとも、記憶違いなら以下の記事は全て無意味なのだけど…)。それを端的に表しているのは、鉄平殺害の翌日に出てくる「家族と仲間は同格」という言葉だが、魅音や梨花がそのような発言をしているところにPS2版の特徴がある。


原作における「仲間」という言葉は圭一が主に使用しているのだが、独善的な印象を受ける場合も少なくない。例えば今回の罪滅し編なら、部活メンバーの「仲間」観は出てくることなく、圭一がレナを救うために「仲間」の結束を呼びかけて成功する。それだけなら、圭一の「仲間」観が部活メンバーも共有している、ないしは彼女らに浸透したと見れなくもない。しかし、圭一が自分の過去を打ち明ける場面(終盤に近いあたり)での魅音たちのセリフからは、他の部活メンバーが圭一と比べて「仲間」と距離感を持って接している印象を受ける(全て打ち明けなくてもいいetc...)。その結果、圭一が「仲間」という言葉を独善的に使用して暴走している感がそこはかとなく付きまとうこととなる。


ところがPS2版においては、圭一が過去の「仲間」理解があらかじめ提示されているため、大きく印象が変わる。具体的に引用してみると、

***************************************************
(魅音)
「家族と仲間は同格だと思ってる」

(梨花)
「難しく考えることはありません」
「居場所があればいいのです。それがある場所を家族と言ったり、仲間と言ったり、呼び方が少し変わるだけのことですよ」

(圭一)
「梨花ちゃんにとって、家族と仲間は同じものか?」

(梨花)
「ボクはそうだと思っていますです。沙都子も魅ぃも、そしてレナもそうだと思いますですよ」
(以上は、ほぼ連続した会話)
***************************************************

このやり取りによって、部活メンバー全員が「仲間」を単なる「仲の良い友達」以上のものだと捉えていることが明示されている。


この変更による効果は何だろうか?
一つは、先ほど言った圭一の独善性を払拭された(ないしは薄められた)ということである。前述のように、原作では圭一が自分の「仲間」理解を押し付けたり、それに向けて扇動している感が少なからずあった(たとえ雛身沢の団結の伝統を考慮したとしても、だ)。しかし、少なくとも部活メンバー達が圭一と同じレベルで「仲間」をというものを理解しているとわかり、その結果レナを救うための団結が自然なものとして受け入れられるようになる。


そしてもう一つは、こちらがはるかに重要だが、梨花が部活メンバーとともに生き延びるのに執着する必然性が与えられるということである。「ひぐらし:皆殺し編の梨花の願望のありえなさ」でも書いたように、梨花の部活メンバーへのこだわり(部活メンバー全員が生きて昭和58年6月以降を迎える)は正直不可解なものだった。なるほど、最初はそれにこだわっていたというのならまだわかる。しかし信頼すべきはずの「仲間」に何度も殺されてなお執着を捨てきれないというのは、いくら何でも奇妙だ。その大きな理由の一つは、原作において梨花は部活メンバーのことは「一緒にいると楽しい」くらいの言及しかなかったからで、その程度の理由では部活メンバーとともに生き延びるというモチベーションを持ち続けることは不可能だし、不自然でさえあった。しかし、今回取り上げたPS2版の「仲間=家族」という発言によって、梨花が部活メンバーに執着する必然性が作られ、仮に納得はしなくても理解はできるレベルになった、と言えるだろう。


以上の二点から、罪滅し編における部活メンバーの「仲間」観への言及は、皆殺し編・澪尽し編へと繋がる非常に重要な意味を持つものだと評価できる(もっとも、何らの感銘も受けはしなかったが)。


さて、順番からいくと次回は皆殺し編だが、昔色々書きまくった話のためこれといって取り上げるものはない。よって、目明し編~皆殺し編にいたる覚書を掲載することで、最後の澪尽し編レビューへの準備にしようと思う。

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