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ひぐらしの方向転換~「あなた」のないフレデリカの詩~

2006-07-30 01:17:41 | ひぐらし
先の記事でひぐらしへの評価が厳しくなる理由として「読者参加型」という特徴があることを指摘した。今回は、この点に関連したひぐらしの方向性の変化について触れたい。

資料となるのは、冒頭に提示されるフレデリカの詩である。以前私は、鬼編・綿編収録版におけるフレデリカの詩を掲載した。その時は推理のヒントとしてであったが、実のところ作品の方向性という点でも非常に重要な示唆を与えてくれるのである。まずは、その詩を見ていただきたい。

(鬼編) ※画像掲載
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今日はちょっぴりいい事があった
下駄箱の私の靴の中に画鋲が入っていたからだ。

クラスには50人もいるのに、なのに私を選んでくれた。
誰よりも想ってくれる、そんな誰かがいる証拠。

そんなささやかなうれしさを、みんなにも教えたい。
だからみんなの靴にも一粒ずつ。
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(綿編) 
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タマゴをじっと、温める。
温める熱が愛ならば、生まれる子供はきっと幸せ。
愛がこもって、喜びにあふれる。

タマゴをじっと、温める
温める熱が怒りなら、生まれる子供はいったい何?

私もタマゴを、温める
温める熱はガスだから、何のタマゴか興味なし。
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この詩を見たうえで、現行のフレデリカの詩を思い出してもらいたい。例えば綿編


(綿編:現行ver.)
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あなたの渇きを癒せない
真実を欲するあなたがそれを認めないから

あなたの渇きを癒せない
あなたの期待する真実が存在しないから

それでもあなたの渇きを癒したい
あなたを砂漠に放り出したのは私なのだから
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この詩を作者竜騎士氏の嘆き(?)と捉えることもできるなど色々興味深い詩であるが、とりあえずここは上の二編の内容と比較してもらいたい。「読者参加型」に関して、おもしろい違いがあることに気づいただろうか?

そう、現行のものでは詩の中に「あなた」がという語が含まれているのである。この「あなた」が誰を指しているのか当事問題になったこともあったので、この詩の「あなた」がプレイヤーをそのまま物語の没頭・同化へと誘ったとは言えない。しかしそれでも、現行の詩が以前のそれと比べてプレイヤーを巻き込むような内容・方向性になっているのは確かである(なおもう一つ重要な違いがあるが、それは別の機会に述べる)。

そしてこの方向転換が、プレイヤーを巻き込む形でひぐらしというゲームの飛躍に繋がったのであり、またひぐらしプレイヤーがその内容について期待及びそれに基づいた厳しい基準を持つに至った主要因であったと言えるだろう。

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