今年も新聞各紙の元旦の社説や記事を比較してみる。朝日・毎日・産経・読売・東京の5紙だ。この中で一番ページ数が少ない東京新聞だけが記者魂があふれていた。1~2面では「原発のない国へ、福島からの風」で、飼料作物からのバイオマス発電を紹介している。放射能で汚染された農地と町を再生する切り札として「ソルガム栽培・コウリャン」の実証試験が今月から始まるという。東京新聞は一貫して原発問題を前面に報道し、ブレないジャーナリズム精神が貫徹している。他の大手の新聞は多面的ではあるが日本で何がもっとも今課題なのかというところでは突込みが足らない。
さらに、オイラと竹馬の友である元原子力規制委員会のナンバー2だった「クーちゃん」こと・島崎邦彦氏の怒りも吐露されている。電力会社にもっとも厳しい評価をしていたクーちゃんに原発推進側や内閣府からの圧力があったという。そして任期も継続されず規制委員も降ろされてしまった。それ以来、原発の再稼働が加速していく。
この辺の事情についてマスコミの沈黙は甚だしい。クーちゃんは「僕はずっとだまされ続け、気づけないでいた」と反省しつつ、「練達の行政マンにとって世間知らずの研究者を操るなど容易だ」と若い研究者に警鐘を鳴らしている。一徹なクーちゃんの心意気は明確で頼もしいが、マスメディアはそれにメスを入れないままのボケぶりは全く恥ずかしい限りだ。オイラも初めて知った権力の「いじめ」だった。他紙にはそういう暴露スクープはなかった。
東京新聞は原発問題だけではない視点も提起しているところがまた素晴らしい。つまり、是枝裕和監督を登場させて政治的なメッセージではなく「足元に小さな物語」を一つずつ積み重ねて自分のあり方の手掛かりを構築していく重要性を説く。残念ながらいまは社会や企業への順応性を競う状況が蔓延していると指摘する。そうした閉塞状況に対して、「映画や小説にできることは恐らく、免疫力を少しでも高めていくような地道な作業」だと言う。ひとり一人の「小さな物語」を築く新年がやってきた。