昨日のこと。畑で農作業の片付けをしていたらガサガサ音がして、まもなく立派なシカが近くにやってきたのが見えた。そのうちに犬が吠え立てながらそのあとを追ってやってきた。するとシカは、きびすをかえすようにわが家の入口のほうへ逃げていった。猟犬とシカとの攻防の現場を初めて目撃したのだ。最近はイノシシよりシカによる農作物被害のほうが多い。
駐車場の後ろでにらみ合いが続く。けたましく猟犬が吠えるがオスのシカはすぐには逃げない。今まで逃げてきたので観念したのだろうか、もしくは冷静に対峙したというのだろうか。
シカと猟犬との距離は2~3mくらいの近距離だ。そのうちに、シカは立派な角を下に向けて猟犬に襲い掛かる。一瞬ぶつかった。そのため猟犬はけがをしたようだった。和宮様は近所の犬がけたましく吠えているのだと思って外に出たらこの現場に出くわす。あわてて御所に戻ったという。
えらいのは、それでも猟犬は逃げもせず吠え続ける。猟犬に無線機が見える。両者の対峙と攻防が何回か続いたころ、ハンターの車が近くにするりとやってきた。そして、銃を持ったハンターがゆっくり歩いて出てきた。
すると、それを察知したのか、どうしようかとシカは距離をとって後ずさりした。それでも、専守防衛の堂々としたオスジカの振る舞いは格好良かった。また、傷を受けながらも猟犬も任務を遂行している姿も頼もしい。
ハンターの車がぞくぞく集まるころ、シカは突然逃げ出した。わが家の玄関のほうへ逃げて行ったが、すぐに石垣の塀を豪快なジャンプで乗り越えて裏山のほうへ向かった。猟犬もその後を追いかけて距離を保つ。鉄砲を持ったハンターはゆっくり歩きながら、シカが山側に向かったこと、シカと猟犬との距離が開いたことを確認して二発の弾丸を撃った。
頭を狙った弾丸は立派な角を破砕してしまったが、二発目は心臓近くを貫通したようだ。ハンターは人家が近いので「怖かったー」と言いながらホッとしたようだった。勇敢だった猟犬も誇り高い顔をしていた。仲間のハンターはきょうは3頭目だったので、3の数字をシカの腹にスプレーで描き写真を撮っていた。現場には、血痕とシカの毛が残っていた。
わが家の玄関前にもシカが逃げた時の足跡だけが残っていた。ここに移住して十数年たつが、猟の一部始終を見たのは初めてだった。しかもその現場がわが家とその周辺だったのも驚きだ。以前は、イノシシが猪突猛進そのものの勢いで犬からまっすぐ逃げているのを見たことがある。裏山はイノシシやシカが逃げるときのルートになっているらしい。これでしばらく農作物や樹木は安泰になったのも確かだ。何はともあれ、毅然としていたオスジカの冥福を祈るばかりだ。
そちらでは民家の近くでも発砲禁止じゃないんですね。