田舎生活実践屋

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チャーチルの第二次世界大戦を読んだ 小使の一言(2021/7/17)

2021-07-17 11:51:50 | 田舎で読んだ本
朝から雨が降ったり止んだり。
時々読み返している、チャーチルの「第二次世界大戦」(河出文庫)をパラパラとめくってみました。
 ナチスドイツが、フランスに攻め込み、同盟国のイギリスも追い立てられて、とうとうダンケルクから装備を捨てて、34万人の兵士がイギリスに逃げ帰ったころ。
 フランスは、ドイツに降伏、イギリスも3週間で、鶏が首を捻られるようにドイツに負けると言われていたころの描写。

「私が表現する光栄を持った明朗沈着なイギリス気質が、事態を一変させたといってよかろう。戦前の数年間は極端な平和主義に走り、思慮を欠き、いたずらに党争にふけって、軍備がきわめて弱体であったにもかかわらず、軽率にもヨーロッパ問題の核心に手を出したすえ、いまや道義的衝動と準備の不備とを同時に解決せざるを得なくなった。これが当時のイギリスであった。しかし、国民には困惑の色は無かった。彼らはヨーロッパの征服者に挑戦した。かれらは降伏するくらいなら、イギリス本土を修羅の巷と化すこともいとわないと思っているようであった。これは立派に歴史の一ページを飾るものであった。しかし、これに似たもので、別の結果になった例もある。アテネはスパルタに征服された。カルタゴはローマに抗して滅びた。勇敢で誇り高く、気楽に構えていた国家やその民族が、完全に抹消されてしまい、わずかにその名をとどめるもの、あるいはそれすら止めないものなど、過去の記録にも珍しくない。 記録さえ残らず、また忘れられてしまった悲劇は、どれほどあるか分からない。
 島国というイギリス特有の技術的利点を理解するイギリス人は少なく、外国人はさらに少なかった。戦前の優柔不断の時代においてさえ、海上防衛をはじめ防空の基本がどのように維持されてきたかが、一般に知られていなかった。イギリス国内に外国軍隊の砲火がみられてから、およそ一千年を経ていた。イギリスの抵抗を指揮するものはすべて冷静で、生命を託すかまえであった。このようなわれわれの気持ちは、しだいに全世界にわたって、敵にも味方にも認識されるようになった。この気持ちを支えたものは何だったか。それは暴力だけでしか解決されないものだった。
 これには別の局面もあった。六月の段階でわれわれの最大の危険の一つは、われわれの最後の予備軍を空費的な、無益なフランスの抗戦に注ぎこんだり、わが空軍が大陸への飛行や移動によって漸次弱体化していくことであった。・・・・・・・イギリスは、フランスに戦争継続を要求すればするほど、それに対する援助の義務が大きくなり、本土防衛を準備すること、とりわけ、そのカギを握る戦闘機25個中隊を本国に残しておくことが、ますます困難になったであろう。この点では絶対に譲歩するべきではなかったが、それを拒否すれば、苦悶するわが同盟国のフランスはひどく憤慨したことであろうし、またわれわれの関係もすべて悪くなったであろう。イギリスの最高指揮官も何人かは、実際にほっとした気持ちになって、冷や汗をかきながら新たな、単純になった問題にとりかかった。ロンドンのある軍のクラブで、ある会員がしょげていると、そこの小使が「旦那、いよいよ試合は決勝戦ですね。しかもホームグランドでやるんですよ」といったという。」(第二巻 p164)

チャーチルはこの第二次世界大戦でノーベル文学賞を受賞している。
コロナの時期、この個所を読むと、オリンピックの開催可否について、政治の要職にあるものはオリンピック開催の意義について、国民に強く分かりやすいメッセージを出さねばならないと、開催に批判的な著名人やら専門家からの発言と重なってくる。
 オリンピック参加の選手が、各地で事前合宿のニュースが毎日のように流れるようになり、受け入れている自治体や地元の方の奮闘ぶりを見てるいると、別に政治家に教えてもらわなくても、選手やその周りの人の言動をみていれば、感心もするし、よくやったと言いたくなる。1964年の東京オリンピックは、盛り上がりが素晴らしく、国民の一体感があったと振り返ると思い出される。朝ドラのエールで、この時の入場行進曲が小関裕而の作曲と最近になって知ったりで、この時のインパクトは今も蘇ることがしばしば。今回の東京オリンピックはまさか、コロナ騒ぎで世界が動転していて、日本はババ札を引いてしまい、いやいややることになるとは予想しなかった。今の若者が数十年たって私のような爺さん婆さんになった時、日本はオリンピック開催の約束を自分の損になっても果たした、これは自慢できると、孫や子供に話すのだろうと思う。
コメント
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