一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『一度死んでみた』 ……広瀬すずの“歌声”と華麗なる回し蹴りを堪能する……

2020年05月23日 | 映画
※PCでご覧の方で、文字が小さく感じられる方は、左サイドバーの「文字サイズ変更」の「大」をクリックしてお読み下さい。


新型コロナウイルス感染拡大に伴う休業要請を佐賀県が解除したのを受けて、
県内の映画館が5月15日から営業を再開した。
だが、上映スケジュールを見ても、新作はなく、
営業休止前から既に公開していた作品や、
過去に評判の良かった『蜜蜂と遠雷』『君の名は。』『天気の子』『シン・ゴジラ』や、
世界的な名作『カサブランカ』『ニュー・シネマ・パラダイス』など、
私がすでに見た映画ばかり。
〈まだ見ていない作品はないか……〉
と探すと、
広瀬すず主演の『一度死んでみた』があった。
今年(2020年)3月20日に公開された作品ではあるが、
映画館が(休業要請による)営業休止する前にギリギリ間に合ったものの、
この時期にはすでに映画館入場者は少なくなっており、
4月に休業要請が発令されてからは、見る機会を失っていた作品であった。
「広瀬すずの出演作はすべて見る!」を信条としている私としては、
見ておかなければならない作品であった。
で、仕事帰りに、久しぶりに映画館に駆けつけたのだった。



父親のことが大嫌いで、いまだ反抗期を引きずっている女子大生の七瀬(広瀬すず)。


売れないデスメタルバンドのボーカルをしている彼女は、
ライブで「一度死んでくれ!」と父・計(堤真一)への不満をシャウトするのが日常だった。


そんなある日、計が本当に死んでしまったとの知らせが届く。
実は、計が経営する製薬会社で発明された「2日間だけ死んじゃう薬」を飲んだためで、
計は仮死状態にあるのだった。


ところが、計を亡き者にしようとするライバル会社の陰謀で、
計は本当に火葬されてしまいそうになる。
大嫌いだったはずの父の、絶体絶命のピンチに直面した七瀬は、


存在感が無さすぎてゴーストと呼ばれている計の秘書・松岡(吉沢亮)とともに、


父を救うため立ち上がる。
火葬までのタイムリミットは2日間。
はたして七瀬は無事、父を生き返らせることができるのか……



冒頭、目をむいてシャウトする広瀬すずに圧倒される。


広瀬すずファンの私としては、
もう、彼女の“歌声”が聴けただけでも、この映画を「見る価値あり」だ。


おまけにアクションまで披露している。
屈強な男相手に、回し蹴りをお見舞いしているのだ。


この見事なハイキックは、日頃の鍛錬の賜物であろう。


広瀬すずが目当ての私であったが、
彼女が主演したNHK連続テレビ小説「なつぞら」(2019年4月1日~9月28日)に山田天陽役で出演していた吉沢亮が再び広瀬すずとコンビを組んで活躍する姿にも、「なつぞら」ファンとしては感激した。


堤真一とリリー・フランキーの“トントントントン、ヒノノニトン”コンビや、


個性派俳優の古田新太や竹中直人の演技にも笑わされた。




その後も次々に登場する豪華な出演俳優陣に圧倒される。


小澤征悦、松田翔太、


嶋田久作、池田エライザ、


木村多江、


でんでん、


原日出子、


志尊淳、加藤諒、柄本時生、前野朋哉、城田優、などの他、


プロレスラーの真壁刀義や本間朋晃、


JAXA 宇宙飛行士の野口聡一、


ミュージシャンの大友康平、


そして、主役級の佐藤健や妻夫木聡も脇役で登場する。




何故このような豪華キャスティングができているのかと言えば、
それは監督が浜崎慎治だからだろう。


【浜崎慎治】
1976年生まれ、鳥取県出身。CMディレクター。
手掛けた主なCMに、
KDDI/au「三太郎」、
日野自動車「ヒノノニトン」、
家庭教師のトライ「ハイジ」、
花王「アタックZERO」など。
ACCグランプリ、ACCベストディレクター賞、広告電通賞優秀賞、ギャラクシー賞CM部門大賞など受賞多数。
これまでに100作以上手掛けた「三太郎」シリーズは、
CM好感度5年連続1位。(CM総合研究所調べ。14-18年度)。

本作が映画初監督作品であるが、
長年TVCMで築き上げた実績と、広い人脈で、このようなキャスティングが可能になったものと思われる。




脚本は、『犬と私の10の約束』『ジャッジ!』で知られる澤本嘉光。
『ジャッジ!』(2014年1月11日公開)のレビューを書いたとき、
……「これを見ないと今年は始まらない」級の傑作……
とのサブタイトルを付けて絶賛したのだが、(コチラを参照)
澤本嘉光のオリジナル脚本が今回も冴えている。
『ジャッジ!』と同じく、
ただ笑わせるだけのコメディーではなくて(それだけでも難しいのだが)、
全編に伏線を張り巡らせていて、
終盤に一気に、あるべきところへ収拾させていく。
ただ、『ジャッジ!』があまりに素晴らしかっただけに、
『ジャッジ!』と比べると『一度死んでみた』はやや見劣りがする。
ストーリーが『ジャッジ!』と比べると「2日間だけ死ぬ薬」など現実離れし過ぎていて、
(映画初監督作である浜崎慎治の)演出の問題かもしれないが、
(特に前半の)テンポも悪く、93分の作品なのにそれより長く感じてしまった。
なので、見る人によっては、それほど面白いと感じられない作品になっているかもしれない。
『ジャッジ!』ほど万人向きではないということだ。
それでも、日頃からテレビを(TVCMも)観ている私としては、
随所に面白さを発見できて、実に楽しい作品であった。




新型コロナウイルスの影響をモロに受けた作品で、
そういう意味ではとても不幸な作品なので、応援したい気持ちが強い。


映画館も営業を再開したばかりで、
“ご来場されるお客様へのお願い”として、

・全てのご来場のお客様にマスクの着用をお願いいたします。
 マスクをお持ちでない場合は入場をお断りいたします。
・咳や発熱など風邪に似た症状がある方、体調に不安がある方、2週間以内に感染拡大地域への往来がある方はご来場をお控えください。
・劇場内にアルコール消毒液を設置しておりますので、手指の消毒にご利用ください。
・購入などの列にお並びの際、開場をお待ちいただく際はソーシャルディスタンスの確保をお願いいたします。
・感染拡大の防止の観点により会計の際はキャッシュレス決済にご協力ください。
・入退場につきましても可能な限り間隔を空けていただきますようご協力ください。
・チケットは一人一枚お持ちになり、順番に受付スタッフにお見せください。
・劇場内での会話は極力お控えくださいますようお願いいたします。
・体調が悪くなられた場合は、お近くのスタッフにお声がけください。
・その他「咳エチケット」へのご協力をお願いいたします。

などと呼びかけ、
劇場ロビーご入場前に“検温”を実施している映画館もある。
このような新型コロナウイルス感染症拡大予防策に協力しつつ、
これからも映画を楽しんでいければと思っている。
皆さんも、ぜひぜひ。

この記事についてブログを書く
« 松崎ナオ「川べりの家」 ……N... | トップ | 天山散歩 ……サイハイラン、... »