一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

八幡岳……雨に咲く花……

2008年06月22日 | 八幡岳・女山(船山)・眉山
日曜日の午後。
雨が止んで、薄日がさしてきた。
これなら山登りができるかもしれない。
私は八幡岳に向かった。
池高原には13時30分に着いた。
下界と違って、池高原は霧雨のようなガスに覆われていた。
数メートル先も見えないほどに――。
知らない山、初めての山だったら、登山するかどうか悩むところだ。
しかし、八幡岳には何度も来ているので、ためらいはなかった。
登山靴に履き替え、さっそく周辺を散策する。
季節の変わり目ということもあってか、春に比べ、花は少ないようだ。
池に沿って歩いていると、オカトラノオの群落に出くわした。


梅雨の時期に山に登ると、必ずこの花に出逢う。
雨が似合う花だ。


しばらく歩いていると、今度はウツボグサの群落を見つけた。


私はこれまでこの花を美しいとはあまり思ったことはなかった。
しかし、今日、ここで見たウツボグサは、しっとりと濡れていたせいか、美しく見えた。


キャンプ場の登山口から登り始める。
森に入ると、薄暗く、ちょっと不気味だった。
しばらく歩いていると、蛇に遭遇。
真っ黒い蛇で、マムシではなさそうなので、蛇の横を早足で通り抜けた。


森の中には、いろんな種類のキノコが生えていた。




何度か林道を横切り、高度を上げていく。
林道に出ると、パッと明るくなる。
薄暗い登山道から、明るい林道に出ると、ホッとする。
雨の日も昆虫たちは活発に活動している。




八幡岳山頂には誰もいなかった。


山頂からの視界もまったくなかった。


九州自然歩道に沿って、川内峠方面にしばらく下る。


今年の2月に歩いた時は、ここにはまだ雪があった。
そして、雪の間からは、緑色のオオキツネノカミソリの葉が伸びていた。
今はすでに葉は枯れており、葉を目にすることはできない。
雨に山土が削られたのか、オオキツネノカミソリの白い球根が、いくつかむき出しになって転がっていた。


ひと月後にはこのオオキツネノカミソリが咲き始め、7月下旬から8月上旬にかけて、オレンジ色の花でこの森を埋め尽くすに違いない。


再び山頂に登り返し、今度は展望所の方に行ってみる。
人はいないし、当然のことながらまったく展望もない。


雨に濡れたニワゼキショウが寂しく揺れていた。


下山は車道を歩くことにした。
薄暗い登山道より快適に歩けそうな気がしたのだ。
車道だからといって、花がないわけではない。
スイカズラなどの花が私を楽しませてくれた。




途中、素晴らしく美しいヤマボウシの木を見つけた。
ちょうど満開を迎えていて、ガスの中、ヤマボウシの木が白くボーっと浮かび上がっていた。


近くに寄っても美しかった。


八幡岳にこんなに美しいヤマボウシの木があるなんて知らなかった。
来年もこの木を見るために八幡岳に登ろうと思った。


八幡岳の中腹まで下りてくると、嘘のようにガスがなくなった。
私の住む多久の町を、しばらく眺めていた。
なかなか美しい町だと思った。


目を転じると、雲の切れ間から天山が姿を現した。
慌ててカメラのシャッターを押す。
ここから見る天山は、ひょっとするといちばん美しいかもしれない。
そんなことを思いながら家路を急いだ。
時刻は16時30分になろうとしていた。



付録
「雨に咲く花」青江三奈(←クリック)

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9 コメント

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Unknown (nanden)
2008-06-24 07:03:36
おはようございます
皆さん考えることは同じのようですね
我が家も午後からの天気の回復を信じて
樫原湿原まで行ってきました
トキソウは終わりに近く ちょっぴり色褪せていました
来月は可憐なサギソウが羽ばたき始めますね

八幡岳はまだ登ったことは有りませんが 良い感じの山ですね
僕たち軟弱者には羨望の山のようです
近い内にお邪魔したいと思います
返信する
オオキツネノカミソリ (タク)
2008-06-24 19:03:48
nandenさんへ

最近は雨の日ばかりで、雨の合間に速攻登山するしかありませんね。
日曜日は、皆さん、それぞれ工夫して登られたみたいです。

>八幡岳はまだ登ったことは有りませんが 良い感じの山ですね
>僕たち軟弱者には羨望の山のようです
>近い内にお邪魔したいと思います

八幡岳は、山頂まで車道が延びているし、山頂には電波塔やアンテナが乱立しているので、山としての評価は低いんですよ。
でも、植物種は豊富で、夏はオオキツネノカミソリやノヒメユリが咲きます。
オオキツネノカミソリは、多良岳、井原山に次いでナンバー3ではないかと私としては思っております。
7月下旬から8月上旬が見頃です。
ぜひお越し下さい。
声を掛けて頂ければ、私も同行し、案内いたします。
軟弱コースもありますよ。
返信する
Unknown (Unknown)
2008-06-26 13:40:33
>知らない山、初めての山だったら、登山するかどうか悩むところだ。
しかし、八幡岳には何度も来ているので、ためらいはなかった。

私もその日連ちゃんで雲仙と九千部へ登りましたよ。なじみの山を雨に降られながら歩く楽しさは何とも替えがたいものがありますよね。瑞々しい花、樹木の幹や葉が一段と鮮やかです。
ランディの「ひかり~」、とてもgood!コンセントに始まり、アンテナ、モザイクーと少々彼女がキツクなって打ち止めしていました。でもこのエッセーは先のよりもずっと彼女の鋭い感性が生かされていて好感が持てました。
良い本を紹介して下さってありがとうございました。

メールを頂いていたのに気付かず遅く返信しています。
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打ち忘れ (bamboo)
2008-06-26 13:42:58
ごめんなさい、名前を書き忘れておりました。
返信する
雨の日って… (タク)
2008-06-26 21:58:57
bambooさんへ

の日って、なんだか不思議です。
日本縦断徒歩の旅をした時も、雨の日の方が集中して歩けました。
北海道の石狩平野を歩いていた時は、一日中土砂降りだったのですが、一日で60㎞以上歩きました。
「雨」の持つ力なんですかね?
雨の日に山に登ると、なんだかアニミズム的な精神状態になりますね。
周囲の自然もキラキラ輝いて見えますし、一人で歩いていると、自分との対話もいつもより多くなるように感じます。

>ランディの「ひかり~」、とてもgood!
>コンセントに始まり、アンテナ、モザイクーと少々彼女がキツクなって打ち止めしていました。
>でもこのエッセーは先のよりもずっと彼女の鋭い感性が生かされていて好感が持てました。

田口ランディの『ひかりのあめふるしま屋久島』は、初期の作品ということもあって、その後の小説とは違って、すごく健康的(?)で、別人みたいですよね。
私は彼女の小説も好きなのですが、『ひかりのあめふるしま屋久島』も同じくらい好きな本です。
気に入ってもらえて嬉しいです。
屋久島が魅力的なのは、やはり「雨」の力なのかもしれませんね。
先日、新聞に、「これから行ってみたい世界遺産は?」というアンケートで、屋久島がトップでした。
やはり人気ありますね。
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今週末にでも (nanden)
2008-07-21 10:23:43
タクさん こんにちは。

毎日暑い日が続きますね。
今月は 暑さに負けて何処にも登っていないので
今週末に八幡岳へキツネさんを観に行こうと思っています。
そこで 八幡岳を楽しめるコースが有ったら教えて頂けないでしょうか?
…っては言っても 良くご存知の軟弱夫婦ですが


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nandenさん、こんにちは (肉まん)
2008-07-21 11:27:22
nandenさん、こんにちは
ちょっとタクさんの掲示板に横からレスさせてもらいます。
7月27日にタクさんの案内で福岡からsasaguriさん、肉まんとで八幡岳にキツネを見に行く予定です。
よかったらご一緒しませんか?
nandenさんご夫婦にもタクさん経由でお誘いしてもらう予定だったんです。
ちなみにルートはよくわかりませんが・・・
返信する
ご一緒しませんか? (タク)
2008-07-21 20:24:30
nandenさんへ

7月27日は、私も八幡岳に登ります。
福岡の肉まんさんとsasaguriさんも「登ってみたい」とのことなので、一緒に登ることにしています。
肉まんさんがnandenさんのブログを見て、ぜひお会いしたいと仰ってました。
肉まんさん、sasaguriさんのHPは、このブログ「一日の王」のブックマークから行けますので、ぜひご覧になって下さい。
nandenさんの御都合さえ良ければ、ぜひ一緒に登りましょう!
コースは、2時間ほどで登れるコースから30分で登れるコースまで、いろいろあります。
暑い夏なので、池高原からの軟弱コースがイイかもしれませんね。
今年は、オオキツネノカミソリの開花がちょっと遅れ気味のようなので、27日は満開とはいかないようですが、そこそこは咲いているのではないかと思います。
(24日に観察登山してこようと思っています。)
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遭遇かなぁ? (nanden)
2008-07-23 21:26:52
タクさん、肉まんさん こんばんは。

27日はキツネ散策の予定だったんですね。
多分 八幡へお伺いすると思いますので
途中 見かけられましたらお声がけ下さい(^^ゞ
遭遇を楽しみに ふらついています(笑)
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