一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』…かけがえのない「今」…

2014年11月02日 | 映画


11月1日(土)、2日(日)、3日(月)の3連休は、
娘2人、孫4人が、我が家に遊びに来ている。
私の休みは、今日の日曜日(11月2日)だけなのだが、
天気もイマイチということで、山へは行かず、
もっぱら孫の相手をしていた。
せっかく遊びに来てくれたのに、
ジイジが山登りばかりしていたのでは、
娘たちや孫たちに申し訳ない。
ということで、今日は山へは行ってないので、
本日のブログ更新は、映画レビュー。

見た映画はどんどん増えていくのに、
仕事が忙しいので、レビュー執筆が追いつかないのが、今の私の現状。
一作でも多くレビューを書いておきたいので、
今日は、最近見た映画の中でも、大好きな作品、
『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』について書くことにしよう。

クリスマスのロンドンを舞台に、
19人の男女の様々なラブストーリーをグランドホテル方式で描いた傑作、
『ラブ・アクチュアリー』をご存じの方は多いと思う。
アメリカでは2003年11月7日に、
イギリスでは2003年11月21日に、
日本では2004年2月7日に公開された名作で、
私の大好きな作品でもあるのだが、
この映画を監督したリチャード・カーティス監督の、
最新作にして、
最終作(「この作品を最後に監督を引退する」と本人が表明している)となるのが、
『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』なのだ。
海外でこの映画を見た人から、「素晴らしい作品」との評価が届いていたし、
私自身も以前より強い関心を持っていたので、早く見たいと思っていた。
だが、
アメリカでは昨年(2013年)9月4日に、
イギリスでも昨年(2013年)11月3日に公開されたのに、
日本では一向に公開される気配がなかった。
やっと公開されたのが、
アメリカやイギリスでの公開から1年後の、(爆)
今年(2014年)の9月27日だった。
しかし……
いつものことであるが、佐賀県での上映館がなく、
福岡に用事があって出掛けた10月某日、
やっと見ることができたのだった。

イギリス南西部コーンウォールに住む青年ティム(ドーナル・グリーソン)は、
両親と妹、そして伯父の5人家族。
どんな天気でも、海辺でピクニックを、週末は野外映画上映を楽しむ。



風変りだけど仲良し家族。
しかし、自分に自信のないティムは年頃になっても彼女ができずにいた。



そして迎えた21歳の誕生日、
ティムは父(ビル・ナイ)からある秘密を告げられる。
それは、
「一族に生まれた男子にはタイムトラベル能力が備わっている」
というものだった。



はじめは冗談かと思い、信じることができないでいたが、
能力の使い方を覚えてからは、
恋人を作るために繰り返しタイムトラベルをするようになる。



弁護士を目指してロンドンへ移り住んでからは、
チャーミングな女の子メアリー(レイチェル・マクアダムス)と出会い、



恋に落ちる。




ところが、タイムトラベルが引き起こす不運によって、
二人の出会いはなかったことになってしまう。



それでもなんとか彼女の愛を勝ち取り、
その後もタイムトラベルを続けて人とは違う人生を送るティムだったが、
やがて重大なことに気がついていく。
どんな家族にも起こる不幸や波風は、
あらゆる能力を使っても回避することは不可能なのだと……



いや~、面白かったです。
そして、感動。
やはり、リチャード・カーティス監督作品は、素晴らしい。


「過去に戻って人生をやり直したい」と、
誰しも一度や二度は思ったことがあるのではないだろうか?
「あの若く美しかった頃の自分に戻りたい……」
とか、
「あのとき、選択を誤らなければ、もっと違った人生を歩んでいるハズだ……」
とか。
そんな夢のような話を現実化したのが、
映画『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』だ。
まあ、一応、SFのようなものなのだが、
タイムトラベルする方法は、
「暗いところで念じると過去に戻れる(過去にしか行けない)」
という非科学的で陳腐なものだし、(笑)


時間軸に関する問題もアバウト過ぎて、矛盾だらけなので、
『アバウト・タイム』のアバウト(おおまかな。大ざっぱな。)はその意味?
と思ってしまうほど。
(あっ、ちなみに「アバウト・タイム」とは「その時はきた」「今こそ、そのとき」という意味)
そういうアバウトなところは目をつぶってもらうとして……(笑)


問題は、映画の中身だ。
これが実にイイのだ。
彼女との出逢いの仕方に失敗すると、
何度も過去に戻って、アプローチの方法を変えたり、
彼女とベッドインするときも、
うまくいかないと、何度も過去に戻って、
トライの仕方を変えてみる。
これが実に面白く、見る者を楽しませてくれる。
そして、笑わせながら、深く考えさせもするのだ。
何度も過去に戻れることは、幸せなことなんだろうか……と。




年老いて、病に侵された父、


男運が悪く、しかも交通事故に遭う妹、


家族の不幸を取り除こうとタイムトラベルをやってみるが、
それでは解決できないことがあることも知る。
そして、
人生の本当の意味において、
タイムトラベルによる”やり直し”は、
不必要である事に気づくようになる……


主人公が、タイムトラベルをすることによって、
いろんなことに気づいていくように、
映画の鑑賞者も、時間について、いろんなことに気づかされることになる。


映画を見終わる頃には、
「今」生きているこの一瞬一瞬が愛おしくたまらなくなる。
そんな映画なのだ。


映画のストーリーもイイけれど、
挿入歌が、それにも増してイイのだ。
特に、「How Long Will I Love You」にはシビレてしまった。
映画を見終わっても、ずっとこの曲が耳の奥で鳴っているほど……
(歌 ジョン・ボーデン、サム・スウィニー & ベン・コールマン)


こちらは、
リチャード・カーティス監督の代表作、
『フォー・ウェディング』Four Weddings and a Funeral(1994年)脚本
『ノッティングヒルの恋人』Notting Hill(1999年)脚本
『ラブ・アクチュアリー』Love Actually(2003年)監督・脚本
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』About Time(2013年)監督・脚本
をまとめた“ラブコメ傑作集”ともいえる特別映像に、
「How Long Will I Love You」(歌 エリー・ゴールディング)を重ねたもの。


9月27日に公開された作品なので、
上映終了しているところも多いが、
11月になって上映を決めた映画館も少なくない。
(佐賀県でもイオンシネマ佐賀大和で11月8日からの上映が決定した)
もし近くに上映している映画館があったら、ぜひぜひ。
この映画を見ると、
「今」という時間が愛おしくなり、
きっと、一日一日を、
一瞬一瞬を、しっかり生きていこうと思うハズ。
「一日の王」にもなれますよ~(以下にネタバレ記事を少し)


※注意
最後にちょっとネタバレします。
これから『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』を鑑賞予定の方は、
以下の文章は、映画を見た後にお読み下さい。

最初に、私は、

「過去に戻って人生をやり直したい」と、
誰しも一度や二度は思ったことがあるのではないだろうか?

と書いたが、
実は、私自身は、そう思ったことはない。
現在に満足しているからかもしれないが、
あまり「過去に戻りたい」とは思わない。
そして、もし、「過去に戻ってやり直したい」と思ったときは、
タイムトラベルなどせずとも、
人生をやり直す方法を私は知っているのだ。(ほんまかいな?)
その方法は、「私だけがやっている方法」と思っていたのだが、
この映画を見て、そうではないことを知った。
本作『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』では、
映画の最後に、ひとつの答えが示されるのだが、
それは、日頃、私が考えていることと同じだったのだ。
それは……

「未来から来た人間だと思って日々を大切に生きる」

ということ。
たとえば、中高年であれば、
年老いて、躰が不自由になっているかもしれない20~30年後を想像してみる。
私など、いつも最悪の20~30年後を想像している。(笑)
寝たきりとなり、
娘たちや孫たちにも見放され、
お尻をつねられたり叩かれたりしながら、
配偶者にオムツを取り替えてもらっている。(爆)
そこまで想像して、さらに、
「ああ、20~30年前に戻れたら……」
と、後悔している自分を想像してみるのだ。
そして、20~30年前の自分に(つまり今の自分)に戻って、
ホッと安心するのだ。
「まだ間に合う。もっと配偶者や娘たちや孫たちに優しくしなくては……」
と。
ほら、タイムトラベルできたでしょう~?(笑)

芥川賞作家・重兼芳子さん(1927年~1993年)の著書に、
今日がいちばん若い日』(鎌倉書房/ 1987)というタイトルの本があった。

映画『アメリカン・ビューティ』の中の言葉にも、
今日という日は、残りの人生の最初の一日」というのがあった。

「未来から来た人間だと思って日々を大切に生きる」
ということは、
今日がいちばん若い日なのだから、
これから一日一日を大切に生きていけば、
(過去は変えられないが)未来は変えられるということ。
未来の自分は変えられるということなのだ。

映画のラストの方で、
つまらないと思った一日を、もう一度繰り返すシーンがある。
つまらないと思って一日を過ごしたときと違って、
一瞬一瞬が輝いて見えてくるのだ。
このシーンは、本当に秀逸だった。

タイムトラベルなどせずとも、
「今」という時間を大切に生きていけば、
後悔のない人生を送ることができるのだ。

「ネタバレします」と言ったのに、
「どうせ映画なんか見ないわ」とここまで読んだあなた……(笑)
ここまでネタバレしても、
『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』を見る価値は、
いささかも減じないと付け加えておきましょう。
この映画を見ることは、
自分の人生を考えるよい機会になると思います。
映画館で、ぜひぜひ。

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