一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』

2017年09月27日 | 映画


大根仁監督作品は、これまで、
『モテキ』(2011年9月23日公開)
『バクマン。』(2015年10月3日公開)
『SCOOP!』(2016年10月1日公開)
など、5作しかないが、
どれもが超面白作ばかりで、
〈大根仁監督作品ならば……〉
と、見に行ったのが、
6作目の監督作となる、
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』
である。
ミュージシャンの奥田民生に憧れを抱く雑誌編集者が、
仕事で出会った美女に心を奪われ、
奔放な彼女に振り回されて苦悩する姿を描いたラブコメディで、
さえない主人公を妻夫木聡、
彼を魅了する魔性のヒロインを水原希子が演じるほか、
新井浩文、安藤サクラ、リリー・フランキー、松尾スズキ、江口のりこといった、
個性豊かな(しかも私の好きな)俳優陣が脇を固めている。
ワクワクしながら映画館へ駆けつけたのだった。



“力まないカッコいい大人”奥田民生を崇拝する33歳のコーロキ(妻夫木聡)は、
おしゃれライフスタイル雑誌編集部に異動になる。


慣れない高度な会話に四苦八苦しながらも、
次第におしゃれピープルに馴染み、
奥田民生みたいな編集者になると決意する。
そんなある日、
仕事で出会ったファッションプレスの美女・天海あかり(水原希子)に一目ぼれ。


その出会いがコーロキにとって地獄の始まりとなるのだった。


あかりに釣り合う男になろうと仕事に力を入れ、
嫌われないようにデートにも必死になるが常に空回り。
あかりの自由奔放な言動と行動に振り回され、
コーロキはいつしか身も心もズタボロになってしまう……




水原希子の魅力全開の映画であった。


大根仁監督の演出は、とにかく、
「水原希子の魅力をいかに最高の状態で表現するか……」
に集中していたように感じた。
『モテキ』のときの長澤まさみ以上にエロく、
まさに「出会う男すべて狂わせるガール」そのままに、
スクリーンで水原希子を躍動させる。
水原希子のファンには大感涙の作品に仕上がっている。


『モテキ』のときは、
長澤まさみのキスシーンが随分と話題になったが、
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』では、
水原希子のキスシーンは『モテキ』を凌ぐ数の多さとエロさ。
大根仁監督作品に馴染んでいない観客は、
“置いてけぼりを食う”ほどの凄まじさであった。(笑)



監督が、
「水原希子をいかに魅力的に撮るか……」
に集中していた所為か、
はたまた水原希子の勢いに圧された所為か、
男優陣にやや精彩がない。(笑)
さすがの妻夫木聡も、やや見劣りがした。


33歳の雑誌編集者という役柄であったが、
ちょっと年を取り過ぎているようにも感じた。


今はどうか分らないが、
昔の編集者は「35歳定年」と言われるほどに、若い感覚が必要とされていた。
35歳までに編集長などのポストに就かなければ、
もはや使い物にならない……と。
そう考えると、33歳というのは、微妙な年齢だ。
33歳にもなって、「出会う男すべて狂わせるガール」に翻弄されているようでは、
編集者としてはまったく見込みがないと言える。(コラコラ)
まあ、映画としては、そこに面白味を見出しているのであろうけれど……。



コーロキ(妻夫木聡)の先輩・ヨシズミを演じた新井浩文や、


編集長・木下を演じた松尾スズキも、
いつもの冴えが見られなかった。


これもやはり天海あかり(水原希子)の魔力の所為であろうか……



水原希子の魅力に気圧された妻夫木聡、新井浩文、松尾スズキに比べ、
水原希子と関わりをもたない脇役陣の演技が冴えていた。
中でも安藤サクラとリリー・フランキーの演技には唸らされた。

人気コラムニスト・美上ゆうを演じた安藤サクラは、


あまり責任のない脇役での出演であった所為か(いやいや、そんなことはないだろうが……)、
『0.5ミリ』(2014年)や『百円の恋』(2014)などの主演作以上のハイテンションぶりで、
“怪演”に次ぐ“怪演”。(爆)
大いに驚かされ、笑わされた。


フリーライター・倖田シュウを演じたリリー・フランキーも、
どの業界にも「そんな人、いるいる」と思わせる壊演(私の造語)で、
見る者を存分に楽しませてくれた。


安藤サクラとリリー・フランキーは個人的に大好きな俳優なので、
この二人が出演していただけで、極私的に大満足の作品であった。



その他、
コーロキ(妻夫木聡)の所属するおしゃれライフスタイル雑誌編集部員・牧野を演じた江口のりこも良かった。
TVドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(2016年10月~12月、日本テレビ)でも、出版社で働く社員を好演していたが、


本作でも、地味ながら、その存在感のある演技で、私を楽しませてくれた。


江口のりこも私の好きな女優なのであるが、
安藤サクラにもちょっと似ている。
私はこの手の顔が好きなのかもしれない……(オイオイ)


この作品も評価は割れているようだが、
私個人としては、とても面白い映画だった。
『モテキ』や『バクマン。』や『SCOOP!』などの大根仁監督作品が好きな人には、
間違いなく楽しめる作品だと思う。
『バクマン。』や『SCOOP!』と同様、出版界が舞台ということで、
マスコミ関係の仕事をしている人にも、オススメの作品である。
ああ、それから、奥田民生のファンにもね。

ブログ「一日の王」のレビューには、通常、
タイトルの他に、自分で考えたサブタイトルを横に付けるのだが、
映画のタイトルが長すぎて、横のスペースがほとんど無い。(笑)
で、今回は、ここに書きたいと思う。
……安藤サクラとリリー・フランキーの怪演と壊演を楽しむ……
映画館で、ぜひぜひ。


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