今年(2013年)1月~3月期のTVドラマで、
最も面白かったのは、『最高の離婚』であった。
とにかく 坂元裕二の脚本が秀逸。
次々に発せられる言葉に哄笑、そして驚嘆した。
瑛太、尾野真千子、真木よう子、綾野剛の4人の演技も素晴らしかったし、
エンディングのダンスも文句なし。
大いに楽しませてもらった。
映画『横道世之介』を語るのに、
なぜ『最高の離婚』を持ち出しているかと言えば……
あれっ、なんでだっけ?(笑)
そうそう、瑛太演じるところの主人公の性格が、
横道世之介の性格に通じるものがあるからである。
ちょっとオタクっぽくて、
植物系的な男子で、ナヨッとしてて、
世間の常識とかけ離れたところで生きている……そういう感じ。
最近、この手の男を主人公したTVドラマや映画が多くなっているような気がする。
映画『僕達急行 A列車で行こう』では、
瑛太と松山ケンイチがそうであった。
瑛太は『僕達急行 A列車で行こう』で鉄道オタクになりきっていた。
ちょっと引いてしまうくらいに……(笑)
あのときの体験が、『最高の離婚』にも活かされていたような気がする。
で、高良健吾である。
これまで、なんだか恐いお兄ちゃんというイメージの役が多かったが、
映画『横道世之介』では、これまでのイメージとは真逆の、
人の頼みは断れないお人好しで、
いつも笑顔の真っ正直の好青年を演じている。
1987年春。
長崎県の港町で生まれ育った18歳の横道世之介(高良健吾)は、
大学に進むために東京へと向かう。
入学式で声をかけてきた倉持(池松壮亮)とサンバサークルに入ったり、
パーティーガールの千春(伊藤歩)に夢中になったりして、学生生活が始まった。
ダブルデートをキッカケに社長令嬢の祥子(吉高由里子)と知り合い、
2人は親しくなっていく。
人の頼みを断れず、常に相手と真剣に向き合う世之介。
周りの人たちを優しさとユーモアで包み、
彼にかかわる人々の心のなかに、小さな思い出を残していく。
……16年後、
愛しい日々と、優しい記憶の数々が、
それぞれの心に響きだす……
原作は、吉田修一。
2008年4月1日から2009年3月31日まで毎日新聞にて連載され、
2009年9月16日に毎日新聞社より発売された小説『横道世之介』。
その単行本を、私は刊行直後に読んだ。
2001年に起きたある事故にともなう美談を元ネタしたような小説で、
正直、それほど面白いと思わなかった。
事故の関係者は不快に思わないのだろうか……などと余計な心配もした。
新聞小説ということもあってか、
それまでの吉田修一の作品にくらべユルい感じがしたし、
吉田修一はこの程度の作家ではない筈……と思ったりもした。
だから、映画化が決まったとき、
あの小説がはたして映画になるのだろうか……と訝った。
ところが映画を見て、これがナカナカの作品だったので、感心したのであった。
主役は高良健吾。
あのアブナイ感じのカミソリのような男が、
お人好しの横道世之介を演じ切れるのか、心配だった。
だが、杞憂であった。
見事に横道世之介になりきっていたのだ。
熊本県出身なので、九州弁もなめらかだったし、
もともとこういう青年だったのではないかと思わされるほど、
違和感なく見ることができた。
さすが、高良健吾。
吉高由里子の方も、
社長令嬢なんかできるのか……と心配していたのだが、
とらえどころのない不思議な雰囲気を持ったお嬢様を、
漫画チックに実に巧く演じていた。
ある意味、吉高由里子の魅力全開といった感じで、
吉高ファンにはタマラナイ映画だと言えるだろう。
パーティーガールの千春を演じた伊藤歩も良かった。
今年(2013年)1月にこのブログで映画『渾身 KON-SHIN』を紹介した際、
〈伊藤歩って、こんなに素敵な女優だったか……〉
とあらためて思わせられ、すっかり彼女に魅了されてしまった。
伊藤歩という女優の、その人生でいちばん美しい瞬間が、
この作品の中に封じ込められている。
それは、とても幸運で、幸福なこと。
本作は、彼女の代表作になるに違いない。
と記すほど私は彼女に魅せられていたので、
とても楽しみにして本作品を見た。
横道世之介に憧れられるという役柄であったが、
大人の魅力全開で、
世之介ならずとも惚れてしまいそうな、
謎めいた妖しさを秘めた女性を巧く演じていた。
16年後、彼女が世之介を思い出すシーンも見事であった。
大学の同級生・加藤雄介を演じた綾野剛も、
女性にはあまり関心がないのに女性に好意を持たれるというモテ男を好演していた。
世之介にいつの間にか友達にさせられしまう場面は特に秀逸。
綾野剛は最近いろんな映画にひっぱりだこだし、
冒頭に紹介したTVドラマ『最高の離婚』に出演していたし、
女性だけでなく、映画やTVにもモテモテ状態。
これから彼を目にする機会はさらに増えるだろう。
世之介の母親を演じた余貴美子も素敵だった。
彼女が出ている作品は、なぜか見たくなってしまう。
本作は、世之介の故郷・長崎でもロケしていて、
その長崎に住む世之介の母として出てくるので、
長崎県出身の私としては、とても嬉しかった。
映画『悪人』では長崎県在住の主人公・祐一の母親を演じていたし、
映画『あなたへ』でも長崎県平戸在住の女性を熱演していたので、
長崎県づいてる……とも言えるかな。
その他、世之介の同級生で、
のちに倉持(池松壮亮)と夫婦となる阿久津唯を演じた朝倉あきが、
とても印象に残った。
最初は世之介に好意を寄せているが、
倉持の猛アタックで彼とつきあうことになり、
妊娠、出産を経て、16年後に世之介を思い出すシーンが忘れがたい。
この朝倉あき、どこかで見た顔だと思っていたのだが、
NHKの朝ドラ『純と愛』で宮里羽純(チュルチュル)役で出ていたっけ。
将来性豊かな女優だと思う。
この映画を見る前、160分という上映時間にやや恐れをなしたのだが、
見始めると、あっと言う間だった。
むしろ、この映画のなかにもっと浸かっていたいと思った。
それほどの心地よさであった。
良き青春映画は、見る者をもその時代に引き込み、
美しくも切ない体験をさせてくれる。
映画『横道世之介』も、その良き青春映画のひとつと言えるだろう。
世之介に関わった人々が、世之介を思い出すたびに、
可笑しく、切なく、懐かしく、そして愛おしくなるように、
映画『横道世之介』を見た人々も、この映画を思い出すたびに、
可笑しく、切なく、懐かしく、そして愛おしくなるだろう。
何度でも見たいと思わせる作品である。
最も面白かったのは、『最高の離婚』であった。
とにかく 坂元裕二の脚本が秀逸。
次々に発せられる言葉に哄笑、そして驚嘆した。
瑛太、尾野真千子、真木よう子、綾野剛の4人の演技も素晴らしかったし、
エンディングのダンスも文句なし。
大いに楽しませてもらった。
映画『横道世之介』を語るのに、
なぜ『最高の離婚』を持ち出しているかと言えば……
あれっ、なんでだっけ?(笑)
そうそう、瑛太演じるところの主人公の性格が、
横道世之介の性格に通じるものがあるからである。
ちょっとオタクっぽくて、
植物系的な男子で、ナヨッとしてて、
世間の常識とかけ離れたところで生きている……そういう感じ。
最近、この手の男を主人公したTVドラマや映画が多くなっているような気がする。
映画『僕達急行 A列車で行こう』では、
瑛太と松山ケンイチがそうであった。
瑛太は『僕達急行 A列車で行こう』で鉄道オタクになりきっていた。
ちょっと引いてしまうくらいに……(笑)
あのときの体験が、『最高の離婚』にも活かされていたような気がする。
で、高良健吾である。
これまで、なんだか恐いお兄ちゃんというイメージの役が多かったが、
映画『横道世之介』では、これまでのイメージとは真逆の、
人の頼みは断れないお人好しで、
いつも笑顔の真っ正直の好青年を演じている。
1987年春。
長崎県の港町で生まれ育った18歳の横道世之介(高良健吾)は、
大学に進むために東京へと向かう。
入学式で声をかけてきた倉持(池松壮亮)とサンバサークルに入ったり、
パーティーガールの千春(伊藤歩)に夢中になったりして、学生生活が始まった。
ダブルデートをキッカケに社長令嬢の祥子(吉高由里子)と知り合い、
2人は親しくなっていく。
人の頼みを断れず、常に相手と真剣に向き合う世之介。
周りの人たちを優しさとユーモアで包み、
彼にかかわる人々の心のなかに、小さな思い出を残していく。
……16年後、
愛しい日々と、優しい記憶の数々が、
それぞれの心に響きだす……
原作は、吉田修一。
2008年4月1日から2009年3月31日まで毎日新聞にて連載され、
2009年9月16日に毎日新聞社より発売された小説『横道世之介』。
その単行本を、私は刊行直後に読んだ。
2001年に起きたある事故にともなう美談を元ネタしたような小説で、
正直、それほど面白いと思わなかった。
事故の関係者は不快に思わないのだろうか……などと余計な心配もした。
新聞小説ということもあってか、
それまでの吉田修一の作品にくらべユルい感じがしたし、
吉田修一はこの程度の作家ではない筈……と思ったりもした。
だから、映画化が決まったとき、
あの小説がはたして映画になるのだろうか……と訝った。
ところが映画を見て、これがナカナカの作品だったので、感心したのであった。
主役は高良健吾。
あのアブナイ感じのカミソリのような男が、
お人好しの横道世之介を演じ切れるのか、心配だった。
だが、杞憂であった。
見事に横道世之介になりきっていたのだ。
熊本県出身なので、九州弁もなめらかだったし、
もともとこういう青年だったのではないかと思わされるほど、
違和感なく見ることができた。
さすが、高良健吾。
吉高由里子の方も、
社長令嬢なんかできるのか……と心配していたのだが、
とらえどころのない不思議な雰囲気を持ったお嬢様を、
漫画チックに実に巧く演じていた。
ある意味、吉高由里子の魅力全開といった感じで、
吉高ファンにはタマラナイ映画だと言えるだろう。
パーティーガールの千春を演じた伊藤歩も良かった。
今年(2013年)1月にこのブログで映画『渾身 KON-SHIN』を紹介した際、
〈伊藤歩って、こんなに素敵な女優だったか……〉
とあらためて思わせられ、すっかり彼女に魅了されてしまった。
伊藤歩という女優の、その人生でいちばん美しい瞬間が、
この作品の中に封じ込められている。
それは、とても幸運で、幸福なこと。
本作は、彼女の代表作になるに違いない。
と記すほど私は彼女に魅せられていたので、
とても楽しみにして本作品を見た。
横道世之介に憧れられるという役柄であったが、
大人の魅力全開で、
世之介ならずとも惚れてしまいそうな、
謎めいた妖しさを秘めた女性を巧く演じていた。
16年後、彼女が世之介を思い出すシーンも見事であった。
大学の同級生・加藤雄介を演じた綾野剛も、
女性にはあまり関心がないのに女性に好意を持たれるというモテ男を好演していた。
世之介にいつの間にか友達にさせられしまう場面は特に秀逸。
綾野剛は最近いろんな映画にひっぱりだこだし、
冒頭に紹介したTVドラマ『最高の離婚』に出演していたし、
女性だけでなく、映画やTVにもモテモテ状態。
これから彼を目にする機会はさらに増えるだろう。
世之介の母親を演じた余貴美子も素敵だった。
彼女が出ている作品は、なぜか見たくなってしまう。
本作は、世之介の故郷・長崎でもロケしていて、
その長崎に住む世之介の母として出てくるので、
長崎県出身の私としては、とても嬉しかった。
映画『悪人』では長崎県在住の主人公・祐一の母親を演じていたし、
映画『あなたへ』でも長崎県平戸在住の女性を熱演していたので、
長崎県づいてる……とも言えるかな。
その他、世之介の同級生で、
のちに倉持(池松壮亮)と夫婦となる阿久津唯を演じた朝倉あきが、
とても印象に残った。
最初は世之介に好意を寄せているが、
倉持の猛アタックで彼とつきあうことになり、
妊娠、出産を経て、16年後に世之介を思い出すシーンが忘れがたい。
この朝倉あき、どこかで見た顔だと思っていたのだが、
NHKの朝ドラ『純と愛』で宮里羽純(チュルチュル)役で出ていたっけ。
将来性豊かな女優だと思う。
この映画を見る前、160分という上映時間にやや恐れをなしたのだが、
見始めると、あっと言う間だった。
むしろ、この映画のなかにもっと浸かっていたいと思った。
それほどの心地よさであった。
良き青春映画は、見る者をもその時代に引き込み、
美しくも切ない体験をさせてくれる。
映画『横道世之介』も、その良き青春映画のひとつと言えるだろう。
世之介に関わった人々が、世之介を思い出すたびに、
可笑しく、切なく、懐かしく、そして愛おしくなるように、
映画『横道世之介』を見た人々も、この映画を思い出すたびに、
可笑しく、切なく、懐かしく、そして愛おしくなるだろう。
何度でも見たいと思わせる作品である。