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私は、現在、佐賀県に住んでいるが、
生まれは、長崎県佐世保市で、
大学進学のために上京するまでの18年間、
佐世保市黒髪町という所にいた。
今では、佐賀県在住の期間がはるかに長くなってしまったが、
長崎県に対する愛着は、今なお根強く私の中にある。
だから、長崎県でロケされた映画は気になるし、
これまで、
『永遠の1/2』(1987年)
『長崎ぶらぶら節』(2001年)
『精霊流し』(2003年)
『69』(2004年)
『解夏』(2004年)
『いつか読書する日』(2005年)
『釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪』(2005年)
『7月24日通りのクリスマス』(2006年)
『まぼろしの邪馬台国』(2008年)
『悪人』(2010年)
『あなたへ』(2012年)
『横道世之介』(2013年)
など、
長崎県内でロケされた作品は、ほとんど見てきた。
11月16日公開(長崎県内は11月9日公開)の映画『ペコロスの母に会いに行く』も、
長崎県でロケされた作品だということで、ぜひ見たいと思っていた。
で、公開直後、さっそく見に行ってきた。
見た感想はというと、
映画『ペコロスの母に会いに行く』は、
とても長崎愛に満ちた作品であったということ。
原作は、長崎市在住の漫画家・岡野雄一のエッセイ漫画『ペコロスの母に会いに行く』。
監督は、長崎県島原市出身の、喜劇映画の巨匠・森東。
主人公のゆういちを演じるのは、長崎県川棚町出身の岩松了。
さらに、長崎市出身の原田貴和子・原田知世姉妹や、
長崎県佐世保市出身の白川和子なども出演しており、
そして、ほとんどが長崎県内でロケされているということもあって、
「長崎」がいっぱい詰まっている作品になっていたのだ。
ちなみに、「ペコロス」とは、
直径3~4cmの小型の玉ねぎのことで、
原作者・岡野雄一の愛称(ペンネーム)。
長崎で生まれ育った団塊世代のサラリーマン、ゆういち(岩松了)。
小さな玉ねぎのようなハゲ頭がトレードマーク。
広告代理店の営業をしながら、
認知症を発症した母・みつえ(赤木春恵)の面倒を見ていた。
しかし、会社勤めをしながらの介護は容易ではなく、
迷子になったり、
汚れたままの下着をタンスにしまったりするようになったみつえを、
ゆういちは断腸の思いで介護施設に預けることにする。
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苦労した少女時代や、アルコール依存症で暴力をふるう夫との生活など、
過去へ過去へと意識がさかのぼっていく母の様子を見て、
彼の胸にある思いが去来する……
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長崎発の映画という以外、
正直、それほど期待していた作品ではなかったので、
その完成度の高さに驚かされた。
さすが森東監督。
85歳という年齢を感じさせない若々しい感覚で、
見事な介護喜劇映画を創り上げている。
ここで、少し、森東監督について紹介。
映画監督としては、次のような作品がある。
『喜劇 女は度胸』(倍賞美津子/沖山秀子/渥美清 1969年)
『男はつらいよ フーテンの寅』(渥美清/倍賞千恵子/新珠三千代 1970年)
『喜劇 男は愛嬌』(渥美清/倍賞美津子/寺尾聡 1970年)
『高校さすらい派』(森田健作/武原英子/吉沢京子/佐藤友美 1970年)
『喜劇 女は男のふるさとヨ』(森繁久彌/倍賞美津子/緑魔子 1971年)
『喜劇 女生きてます』(森繁久彌/安田道代/吉田日出子 1971年)
『生れかわった為五郎』(ハナ肇/緑魔子/財津一郎/殿山泰司 1972年)
『喜劇 女売出します』(森繁久彌/夏純子/中川加奈 1972年)
『女生きてます 盛り場渡り鳥』(森繁久弥/中村メイコ 1972年)
『藍より青く』(松坂慶子/三国連太郎/佐野浅夫/赤木春恵 1973年)
『野良犬』(渡哲也・芦田伸介・松坂慶子・赤木春恵・田中邦衛 1973年)
『街の灯』(堺正章/栗田ひろみ/笠智衆/森繁久弥 1974年)
『喜劇 特出しヒモ天国』(山城新伍/池玲子/芹明香/カルーセル麻紀 1975年)
『黒木太郎の愛と冒険』(田中邦衛/財津一郎/倍賞美津子/伴淳三郎 1977年)
『時代屋の女房』(夏目雅子/渡瀬恒彦 1983年)
『ロケーション』(西田敏行/大楠道代/美保純 1984年)
『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』(倍賞美津子/原田芳雄 1985年)
『塀の中の懲りない面々』(藤竜也/植木等/山城新伍 1987年)
『女咲かせます』(松坂慶子/役所広司/平田満 1987年)
『夢見通りの人々』(小倉久寛/南果歩/大地康雄 1989年)
『釣りバカ日誌スペシャル』(西田敏行/三國連太郎/石田えり 1994年)
『美味しんぼ』(三國連太郎/佐藤浩市/羽田美智子 1996年)
『ラブ・レター』(中井貴一/山本太郎/耿忠/根津甚八 1998年)
『ニワトリはハダシだ』(原田芳雄/倍賞美津子/浜上竜也/肘井美佳 2003年)
映画『男はつらいよ』は、全48作、山田洋次が監督しているイメージがあるが、
第3作と第4作は違っていて、
第3作は、実は、森東が監督しているのだ。(ちなみに、第4作は小林俊一)
全体を通してみると、
山田洋次監督の『男はつらいよ』に対し、
森東監督は、「女」を主人公にしたものが多かったような気がする。
リストを見て、誰もが、ひとつくらいは見た作品があるのではないだろうか?
『ニワトリはハダシだ』以来の監督作品ということで、
森東監督の復活作には、俳優だけでなく、スタッフも実力派が集結した。
撮影監督に、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の浜田毅。
(浜田毅は、森東監督作品『生きているうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』がカメラマンとしてのデビュー作)
音楽プロデューサーに、『千と千尋の神隠し』の大川正義。
作品に感動したという歌手の一青窈が、主題歌『霞道(かすみじ)』を書き下ろし、
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メインテーマ曲は、ピアニスト豊田裕子が作曲し、自ら演奏している。
ことに、豊田裕子が演奏するメインテーマ曲『ペコロスの母へのワルツ』は秀逸。
俳優では、主役のゆういちを演じた岩松了が素晴らしかった。
劇作家、演出家、映画監督など、多方面で活躍しているが、
俳優としては、名脇役として、多くの作品に出演している岩松了。
本作では、主役ではあるが、
肩の力を抜いた、味のある演技で、見る者をうならせる。
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もうひとりの主役、赤木春恵も良かった。
89歳にして映画初主演ということで、
「世界最高齢映画初主演女優」としてギネス世界記録を達成。
主演女優として映画撮影を行った初日(88歳と175日)がギネス世界記録として認定されたという。
自らの「実母の介護経験」を活かした迫真の演技は、
ときに笑いを、そして涙を誘った。
私は何度も(私の)母を思い出したほど。
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みつえの若き日を演じた原田貴和子も、素晴らしかった。
『彼のオートバイ・彼女の島』(1986年)
『私をスキーに連れてって』(1987年)
の頃も美しかったが、
いい感じで年を重ねて、実に魅力的な女性になっていた。
これから、もっと多くの作品に出てもらいたいと思った。
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妹の原田知世も、出演シーンは少ないが、とても印象深い演技をしていた。
原田貴和子・知世姉妹を見ることができただけでも、
この作品を見る価値はあったと思う。
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この他、加瀬亮、竹中直人、宇崎竜童、温水洋一、根岸季衣などが好演しているが、
特に印象に残ったのは、松本若菜。
みつえの入所している介護施設で働く介護士の役であるが、
介護という、やや重い題材の作品なかで、
爽やかで明るく、ホッとするような存在であった。
2006年(平成18年)、22歳で鳥取県から上京し、
新宿のルミネtheよしもと近くのうなぎ屋でアルバイトをしながら、演技の練習に通い、オーディションを受ける日々を送ったという経験をもつ彼女。
遅咲きながらも、これからの活躍が大いに期待される。
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深刻な社会問題として語られがちな介護や認知症を扱っているが、
笑わされ、泣かされ、大いに感動させられた。
森東監督の手腕がいかんなく発揮された傑作介護喜劇と言っていいでしょう。
長崎県人にはもちろんのこと、
多くの人に見てもらいたいと思った一作であった。
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ロケ地めぐりもしてみたいな~
生まれは、長崎県佐世保市で、
大学進学のために上京するまでの18年間、
佐世保市黒髪町という所にいた。
今では、佐賀県在住の期間がはるかに長くなってしまったが、
長崎県に対する愛着は、今なお根強く私の中にある。
だから、長崎県でロケされた映画は気になるし、
これまで、
『永遠の1/2』(1987年)
『長崎ぶらぶら節』(2001年)
『精霊流し』(2003年)
『69』(2004年)
『解夏』(2004年)
『いつか読書する日』(2005年)
『釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪』(2005年)
『7月24日通りのクリスマス』(2006年)
『まぼろしの邪馬台国』(2008年)
『悪人』(2010年)
『あなたへ』(2012年)
『横道世之介』(2013年)
など、
長崎県内でロケされた作品は、ほとんど見てきた。
11月16日公開(長崎県内は11月9日公開)の映画『ペコロスの母に会いに行く』も、
長崎県でロケされた作品だということで、ぜひ見たいと思っていた。
で、公開直後、さっそく見に行ってきた。
見た感想はというと、
映画『ペコロスの母に会いに行く』は、
とても長崎愛に満ちた作品であったということ。
原作は、長崎市在住の漫画家・岡野雄一のエッセイ漫画『ペコロスの母に会いに行く』。
監督は、長崎県島原市出身の、喜劇映画の巨匠・森東。
主人公のゆういちを演じるのは、長崎県川棚町出身の岩松了。
さらに、長崎市出身の原田貴和子・原田知世姉妹や、
長崎県佐世保市出身の白川和子なども出演しており、
そして、ほとんどが長崎県内でロケされているということもあって、
「長崎」がいっぱい詰まっている作品になっていたのだ。
ちなみに、「ペコロス」とは、
直径3~4cmの小型の玉ねぎのことで、
原作者・岡野雄一の愛称(ペンネーム)。
長崎で生まれ育った団塊世代のサラリーマン、ゆういち(岩松了)。
小さな玉ねぎのようなハゲ頭がトレードマーク。
広告代理店の営業をしながら、
認知症を発症した母・みつえ(赤木春恵)の面倒を見ていた。
しかし、会社勤めをしながらの介護は容易ではなく、
迷子になったり、
汚れたままの下着をタンスにしまったりするようになったみつえを、
ゆういちは断腸の思いで介護施設に預けることにする。
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苦労した少女時代や、アルコール依存症で暴力をふるう夫との生活など、
過去へ過去へと意識がさかのぼっていく母の様子を見て、
彼の胸にある思いが去来する……
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長崎発の映画という以外、
正直、それほど期待していた作品ではなかったので、
その完成度の高さに驚かされた。
さすが森東監督。
85歳という年齢を感じさせない若々しい感覚で、
見事な介護喜劇映画を創り上げている。
ここで、少し、森東監督について紹介。
映画監督としては、次のような作品がある。
『喜劇 女は度胸』(倍賞美津子/沖山秀子/渥美清 1969年)
『男はつらいよ フーテンの寅』(渥美清/倍賞千恵子/新珠三千代 1970年)
『喜劇 男は愛嬌』(渥美清/倍賞美津子/寺尾聡 1970年)
『高校さすらい派』(森田健作/武原英子/吉沢京子/佐藤友美 1970年)
『喜劇 女は男のふるさとヨ』(森繁久彌/倍賞美津子/緑魔子 1971年)
『喜劇 女生きてます』(森繁久彌/安田道代/吉田日出子 1971年)
『生れかわった為五郎』(ハナ肇/緑魔子/財津一郎/殿山泰司 1972年)
『喜劇 女売出します』(森繁久彌/夏純子/中川加奈 1972年)
『女生きてます 盛り場渡り鳥』(森繁久弥/中村メイコ 1972年)
『藍より青く』(松坂慶子/三国連太郎/佐野浅夫/赤木春恵 1973年)
『野良犬』(渡哲也・芦田伸介・松坂慶子・赤木春恵・田中邦衛 1973年)
『街の灯』(堺正章/栗田ひろみ/笠智衆/森繁久弥 1974年)
『喜劇 特出しヒモ天国』(山城新伍/池玲子/芹明香/カルーセル麻紀 1975年)
『黒木太郎の愛と冒険』(田中邦衛/財津一郎/倍賞美津子/伴淳三郎 1977年)
『時代屋の女房』(夏目雅子/渡瀬恒彦 1983年)
『ロケーション』(西田敏行/大楠道代/美保純 1984年)
『生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』(倍賞美津子/原田芳雄 1985年)
『塀の中の懲りない面々』(藤竜也/植木等/山城新伍 1987年)
『女咲かせます』(松坂慶子/役所広司/平田満 1987年)
『夢見通りの人々』(小倉久寛/南果歩/大地康雄 1989年)
『釣りバカ日誌スペシャル』(西田敏行/三國連太郎/石田えり 1994年)
『美味しんぼ』(三國連太郎/佐藤浩市/羽田美智子 1996年)
『ラブ・レター』(中井貴一/山本太郎/耿忠/根津甚八 1998年)
『ニワトリはハダシだ』(原田芳雄/倍賞美津子/浜上竜也/肘井美佳 2003年)
映画『男はつらいよ』は、全48作、山田洋次が監督しているイメージがあるが、
第3作と第4作は違っていて、
第3作は、実は、森東が監督しているのだ。(ちなみに、第4作は小林俊一)
全体を通してみると、
山田洋次監督の『男はつらいよ』に対し、
森東監督は、「女」を主人公にしたものが多かったような気がする。
リストを見て、誰もが、ひとつくらいは見た作品があるのではないだろうか?
『ニワトリはハダシだ』以来の監督作品ということで、
森東監督の復活作には、俳優だけでなく、スタッフも実力派が集結した。
撮影監督に、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の浜田毅。
(浜田毅は、森東監督作品『生きているうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言』がカメラマンとしてのデビュー作)
音楽プロデューサーに、『千と千尋の神隠し』の大川正義。
作品に感動したという歌手の一青窈が、主題歌『霞道(かすみじ)』を書き下ろし、
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メインテーマ曲は、ピアニスト豊田裕子が作曲し、自ら演奏している。
ことに、豊田裕子が演奏するメインテーマ曲『ペコロスの母へのワルツ』は秀逸。
俳優では、主役のゆういちを演じた岩松了が素晴らしかった。
劇作家、演出家、映画監督など、多方面で活躍しているが、
俳優としては、名脇役として、多くの作品に出演している岩松了。
本作では、主役ではあるが、
肩の力を抜いた、味のある演技で、見る者をうならせる。
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もうひとりの主役、赤木春恵も良かった。
89歳にして映画初主演ということで、
「世界最高齢映画初主演女優」としてギネス世界記録を達成。
主演女優として映画撮影を行った初日(88歳と175日)がギネス世界記録として認定されたという。
自らの「実母の介護経験」を活かした迫真の演技は、
ときに笑いを、そして涙を誘った。
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みつえの若き日を演じた原田貴和子も、素晴らしかった。
『彼のオートバイ・彼女の島』(1986年)
『私をスキーに連れてって』(1987年)
の頃も美しかったが、
いい感じで年を重ねて、実に魅力的な女性になっていた。
これから、もっと多くの作品に出てもらいたいと思った。
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妹の原田知世も、出演シーンは少ないが、とても印象深い演技をしていた。
原田貴和子・知世姉妹を見ることができただけでも、
この作品を見る価値はあったと思う。
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この他、加瀬亮、竹中直人、宇崎竜童、温水洋一、根岸季衣などが好演しているが、
特に印象に残ったのは、松本若菜。
みつえの入所している介護施設で働く介護士の役であるが、
介護という、やや重い題材の作品なかで、
爽やかで明るく、ホッとするような存在であった。
2006年(平成18年)、22歳で鳥取県から上京し、
新宿のルミネtheよしもと近くのうなぎ屋でアルバイトをしながら、演技の練習に通い、オーディションを受ける日々を送ったという経験をもつ彼女。
遅咲きながらも、これからの活躍が大いに期待される。
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深刻な社会問題として語られがちな介護や認知症を扱っているが、
笑わされ、泣かされ、大いに感動させられた。
森東監督の手腕がいかんなく発揮された傑作介護喜劇と言っていいでしょう。
長崎県人にはもちろんのこと、
多くの人に見てもらいたいと思った一作であった。
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ロケ地めぐりもしてみたいな~
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