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この映画を見た理由は、二つ。
監督が永井聡であることと、
主演が菅田将暉であること。
永井聡監督作品『ジャッジ!』を見たのは、2014年1月であった。
その『ジャッジ!』のレビュー(←ぜひ読んでみて下さい)を書いたときのタイトルが、
……「これを見ないと今年は始まらない」級の傑作……
であった。
そして、次のように記している。
いや~、こんなに面白い作品だとは思わなかった。
妻夫木聡、リリー・フランキー、でんでん、あがた森魚、伊藤歩、荒川良々など、
好きな俳優がたくさん出演していたので見に行ったのだが、
これほど質の良い作品だとは正直思わなかった。
映画館では、私の席の後ろに、二人組のおばあさんが見に来ていたのだが、
この二人が笑うこと笑うこと。
普段、家でTVを観ているノリで笑うので、
うるさいやら、可笑しいやら。
お年寄りをこれほど笑わせる映画には、最近お目にかかっていなかったので、
新鮮だったし、驚かされた。
それに、ただ笑わせるだけのコメディーではなくて(それだけでも難しいのだが)、
全編に伏線を張り巡らせていて、
終盤に一気に、あるべきところへ収拾させていく。
見事の一言であった。
(中略)
監督、脚本家など、スタッフが、
これまでTVCMで培ったアイデア、技術をふんだんに抽入した作品なので、
テンポが良く、斬新さも感じられて、
最後までも楽しく見ることができた。
今年はまだ始まったばかりだが、
これほどの傑作に出逢えるとは思っていなかった。
私自身が書いたのに他人事のように言うが、いやはや絶賛である。(笑)
永井聡監督の作品は、この『ジャッジ!』で初めて見たのだが、
その才能に目を瞠ったし、驚かされた。
その後、『世界から猫が消えたなら』で女性のハートを射抜き、
次に取り組んだのが、本作『帝一の國』であった。
菅田将暉に関しては、
『共喰い』(2013年9月7日公開)
で見て以来、
『そこのみにて光輝く』(2014年4月19日公開)
『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年5月21日公開)
『セトウツミ』(2016年7月2日公開)
『溺れるナイフ』(2016年11月5日公開)
など見続けて、その才能に惚れてしまった。
永井聡監督作品で、
菅田将暉主演なら、
何かが起きそうな気がした。
全国屈指の頭脳を持つ800人のエリート学生達が通う、日本一の超名門・海帝高校。
政財界に強力なコネを持ち、
海帝でトップ=生徒会長をつとめたものには、将来の内閣入りが確約されているという。
時は4月、新学期。
大きな野心を持つ男が、首席入学を果たす。
新1年生・赤場帝一(菅田将暉)。
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彼の夢は「総理大臣になって、自分の国を作る」こと。
その夢を実現するためには、海帝高校の生徒会長になることが絶対条件。
ライバルを全員蹴落として、必ずここでトップに立つ……
そのためならなんでもする……
どんな汚いことでも……
2年後の生徒会長選挙で優位に立つには、1年生の時にどう動くかが鍵となる。
戦いはもう始まっているのだ!
1組のルーム長に選ばれた後は、
2年生の先輩・氷室ローランド(間宮祥太朗)に生徒会長となる可能性を見い出し、
彼に生徒会長候補として指名してもらうため自ら“忠犬”として忠誠を誓う。
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だが、ライバルである東郷菊馬(野村周平)の告げ口により、
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帝一の父・譲介(吉田鋼太郎)と氷室の父・レッドフォードとの因縁が明るみになり、
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氷室が帝一を利用した挙句捨てるつもりであることを知り、
「もう絶望だ」と、一時は切腹を決意するまでに思いつめる。
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だが、父に諭された帝一は、氷室に謀反を起こし、
森園億人(千葉雄大)に付くことを決意する……
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帝一の参謀・榊原光明(志尊淳)と共に、
大いなる野望へ踏み出した帝一であったが、
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待ち受けていたものは、
想像を絶する罠と裏切りであった。
果たして、帝一はこの試練を乗り越えることができるのか?
究極の格付けバトルロイヤルの火蓋が切って落とされる。
「いや~、こんなに面白い作品だとは思わなかった」
と、『ジャッジ!』のときと同じような感想を言うのも芸がないが、
映画館で予告編を見たときには想像できなかったような展開で、
コメディー映画なのに(と言うのも失礼な話だが)、
いろんな意味で感動させられた。
漫画が原作なので、
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漫画チックなストーリー、キャラなどは織り込み済みであったが、
永井聡監督の演出も、
主演である菅田将暉の演技も、
原作である漫画を突き抜けているように感じた。
原作が漫画である場合、
その原作漫画のファンの心象を損なわないように、
恐る恐る取り組んでいる作品は大抵駄目な映画である。
本作のように、突き抜けてしまうと、
もうなんだか芸術の域に達してしまっているように感じた。
漫画が原作で、こんな風に感じさせてくれる作品には、なかなかお目にかかれないものだ。
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永井聡監督の演出には切れ味があり、
『ジャッジ!』のときよりもさらに進化しているように感じた。
CMディレクター出身の映画監督なので、
一瞬、一瞬を大事にしており、無駄なシーンがほとんどなく、
かっちりと締まっており、見ていて心地よかった。
菅田将暉の演技は、
「この映画の主役は俺だ!」
といった覚悟が感じられて、
“熱演”という言葉が陳腐に感じられるほどに、
赤場帝一という男を激しく演じていた。
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誤解を恐れずに言えば、自分自身、どんな作品であっても「僕だけは絶対に傷跡を残してやる」という気持ちでやってきたんです。例え話ですが、作品としては良い評価がされなかったとしても、自分の芝居はしっかりと賛否が問われるラインまで、試行錯誤をしながら何とか持っていくというか。やっぱり俳優部として、どんな作品でも名前をそこに刻み込みたい。でも、そういう考えがあったということは、僕は今まで勝ち負けのフィールドに立てていなかったんです。だからこそ、『帝一の國』以降、僕がここで消えていくか、残るかなんです。消えたらそれで負けですからね。
同世代の俳優がずらりと並んでいる中で、
(そして、「主役を食ってやろう」と思っている奴もあるいはいるかもしれない中で、)
しっかりと主役としての存在感を示し、
誰よりも目立ち、誰よりも熱く演技をしていた。
誰よりも目がギラギラとしていた。
この映画が単なる学園コメディーで終わっていないのは、
ひとえに菅田将暉という稀有な俳優がいたからと思われる。
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時に華麗な、時に無様な氷室ローランドを演じた間宮祥太朗や、
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炎上キャラそのままに東郷菊馬を演じた野村周平や、
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森園億人を知的で繊細な男に演じた千葉雄大や、
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諸葛孔明のように帝一の参謀として榊原光明を演じた志尊淳も良かったけれど、
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漫画的ではない普通の爽やかキャラ・大鷹弾を演じた竹内涼真が殊の外良かった。
『青空エール』(2016年8月20日)での山田大介役が記憶に新しいが、
そのイメージそのままに、
大鷹弾という若者を素直に演じていて好感が持てた。
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白鳥美美子を演じた永野芽郁も良かった。
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今、青春映画(特に学園もの)で引っ張りだこの彼女だが、
本作でも男ばかりの中の貴重な紅一点として、
華麗なるアクションも交え、
面白く、美しく、爽やかにヒロインを演じていた。
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5月20日公開予定の『ピーチガール』や、
『ミックス。』(2017年秋公開予定)も控えているので、こちらも楽しみ。
ああ、それから、『帝一の國』のエンドロールでの彼女がとてもキュートなので、
こちらも見逃さないようにね。
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ラストが鮮やかで、
そして、ラストのラストに、もうひとひねりある。
『ジャッジ!』同様、物語の集約の仕方が見事だし、
映画を見る楽しみがイッパイ詰まった傑作だ。
映画館で、ぜひぜひ。