一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『ビリギャル』 ……有村架純と吉田羊が魅せるアイドル映画テイストの秀作……

2015年05月06日 | 映画
GWがやっと終わろうとしている。

この「やっと」と付け加えたところに、
私の人間としての器の小ささがある。(笑)

別に、ひがんでいるワケでも、
卑屈になっているワケでもないが、
私は、GWはずっと仕事をしていた……
「だから、何?」
と言われればそれまでだが、
「GWはずっと仕事をしていた」
と、ちょっと言ってみたかったのだ。(爆)

で、GWの最終日の今日(5月6日)、
やっと休みを取ることができたので、
かねてより見たかった映画『ビリギャル』を鑑賞するため、
映画館へ足を運んだのだった。

名古屋の女子高に通うお気楽女子高生さやか(有村架純)は高校2年生。
全く勉強せず、友人たちと毎日遊んで暮らしていたので、
ついに成績は学年ビリに……



おまけに、学校でタバコを所持しているのが見つかり、
無期停学処分となる。
今の状態では大学への内部進学すらままならないと案じた母(吉田羊)は、
さやかに塾に通うよう言いつける。
渋々入塾面接に行ったさやかの出で立ちは、
金髪パーマにピアス、厚化粧にミニスカートのへそ出しルック。
対応した塾講師の坪田(伊藤淳史)もビックリ。
しかも、彼女の知識は小4レベルで、さらにビックリ。



聖徳太子を「セイトクタコ」と読み、
東西南北も分からない。
それでも夢は大きく、
第一志望は超難関の慶應大学!
「さやかが慶應なんてチョーウケる~!」
こうしてノリで二人三脚の受験勉強がはじまったのだった……



原作は、
2013年12月に刊行された、
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
(坪田信貴著 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)
昨年から今年にかけて、
書店に行くと、
平台にこの本が並んでいるのをよく見かけた。
本の表紙は、
ちょっとムッとしたような不機嫌そうな顔をした美女の写真で、
当然のことながら、
この美女が慶應大学に現役合格したその人だと思ったので、
「こんなにカワイイ子なら、話題にもなるだろう……」
などと思ったことであった。


夏には、夏限定の夏服姿の表紙もあった。


有村架純主演で映画化が決まり、
出来上がったポスターを見て、
本の表紙によく似ていたので、
「うまく本人に似せたものだな~」
などと考えていた。


ところが、映画を見に行く前に、
少し調べてみると、
なんと、あの本の表紙の美女は、
慶應大学に現役合格したその人ではなかったのである。
石川恋というモデルさんだったのだ。
すっかり私は騙されていたのである。
(っていうか、知らなかったのは私だけ?)
有吉反省会で、
「ビリでもギャルでもなかった」
と告白もしている。


『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
の本人であるさやかさんは、こんな人。


金髪パーマも、夏休みの間だけだったらしい。(そ~だよね~)


ということで、
映画の方はどうだったかというと、
これが、かなり良かったのだ。
笑いあり、涙ありで、
まったく飽きさせず、
最後まで見る者を引っ張っていく力のある作品であった。


魅力的な映画になった第一の要因は、
やはり、有村架純が主人公さやかを演じたからだろう。
ちょっととぼけた感じの、
それでいて、ひたむきで、
しかも可愛い少女を、
じつに丁寧に演じていた。


NHKの朝ドラ『あまちゃん』で、
天野アキの母親(小泉今日子)の若い頃を演じていたことも影響しているかもしれないが、


なんだか有村架純が主役のアイドル映画を見ているような気分であった。


土井裕泰監督も有村架純を実に魅力的に撮っている。
特に、エンドロールは、
大林宣彦監督作品『時をかける少女』のエンドロールにそっくり。
大林監督がラストに原田知世の顔を大写しにしたように、
土井監督もラストに有村架純の顔をアップで撮っている。
あの有村架純のアップの顔は、
新たな伝説になるかもしれない。


さやかの母親を演じた吉田羊も良かった。
吉田羊は、
TVドラマ『HERO』の第2シリーズ(2014年7月~9月フジテレビ系)での
馬場礼子役で一気にブレイクした感があるが、
小劇場の舞台で長年経験を積んだ女優で、
私は、NHKの朝ドラ『純と愛』(2012年10月~)で、
ヒロイン(夏菜)のクールな女上司・桐野富士子を演じたときに初めて彼女を知り、
ファン(ヒツジスト)になった。
実は、映画『ビリギャル』は、
「吉田羊に逢いたくて」見に行ったのである。
そして、その期待は、まったく裏切られなかった。
素晴らしい演技で、作品自体をしっかり締めていた。
吉田羊が母親を演じたことで、
娘さやかを演じた有村架純も随分助けられたのではないかと思う。


塾講師の坪田を演じた伊藤淳史、


さやかの父親を演じた田中哲司、


さやかの担任教師・西村を演じた安田顕、


さやかの塾仲間・森玲司を演じた野村周平も好演していたが、


私が最も感心したのは、掃除のおじさん風の塾長・峰岸誠を演じたあがた森魚。

ここ数年、私の好きな映画、
『海炭市叙景』(2010年)
『マイ・バック・ページ』(2011年)
『しあわせのパン』(2012年)
『映画 妖怪人間ベム』(2012年)
『ジャッジ!』(2014年)
『そこのみにて光輝く』(2014年)
などに出演しているが、
どの作品でも実に味のある演技をしていて、
本作『ビリギャル』でも、自然体の素晴らしい演技をしていた。
あがた森魚は、
「赤色エレジー」などのヒット曲があるシンガーソングライターでもあるのだが、
今の若い人はよく知らないのではないだろうか?


エンドロールのときに、箒をギターに見立ててミュージシャンの振りをするのだが、
さえない普通のおじさんがミュージシャンの真似をしていると思ったのか、
私の周囲にいた若い女の子たちが大笑いしていたのが印象に残った。
そういう意味でも、エンドロールは大いに楽しめるので、
場内が明るくなるまで、席を立たないようにね。

今年になって、
『くちびるに歌を』
『幕が上がる』
『案山子とラケット ~亜季と珠子の夏休み~』
など、中学生や高校生を主人公とした爽やか系映画が相次いでいるが、
本作の主人公であるさやかも、
前3作の主人公と同じく、自転車で疾走するシーンがある。
青春映画の秀作と呼んでイイでしょう。
前3作が好きな人には、
本作『ビリギャル』もきっと気に入ってもらえると思う。
映画館で、ぜひぜひ。

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