公開(3月25日)当初に見たのだが、
なんとなくレビューを書きそびれている内に、
今日(4月18日)になってしまった。
決して面白くなかったワケではなく、
それなりに興味深く見たのだが、
〈どうしても感想を書き残しておきたい〉
という程ではなかった……ということか。
いやいや、むしろ、本作を見た日は、
〈なかなかの佳作だな〉
と思ったし、
すぐにレビューを書こうと思っていた。
その後に目にした映画ファンの評価も高く、
〈早く書かなくては……〉
と焦ってもいた。
それが、時間が経つにしたがって、
書く意欲を失っていったのは、
やはり、この映画に、そこまでの熱意が持てなかったということか……
それでもこうして“覚書”程度には書いておきたいと思ったのは、
本作『キングコング:髑髏島の巨神』は、
レジェンダリー・ピクチャーズが、
今後展開していく怪獣映画3部作の記念すべき第1弾だからだ。
2019年公開予定の第2弾では、
ゴジラを中心とした“リーグ戦”が繰り広げられ、
2020年公開予定の第3弾『Godzilla vs. Kong(原題)』では、
ゴジラとキングコングが激突するという。
第1弾の『キングコング:髑髏島の巨神』のことを書き残しておかないと、
第2弾、第3弾が傑作あるいは秀作だった場合、
映画レビューが書きづらくなるから……という理由に由る。
1944年、
太平洋戦争中の南太平洋戦域での空戦中、
とある島に墜落したアメリカ兵マーロウは、
同じく墜落した日本兵イカリから逃れるため島の奥地に入り込み、
追って来たイカリと戦っている途中、突然そこに巨大な猿の生物が姿を現す。
1973年、
アメリカがベトナム戦争からの撤退を宣言した日、
特務研究機関モナークの一員であるビル・ランダ(ジョン・グッドマン)は、
地質調査と偽って上院議員を説き伏せ、
ランドサット(地球資源探査衛星)が発見した未知の島・髑髏島へ、
調査隊として、自分のチームと護衛部隊の両方を向かわせる。
その調査隊には、
ビル・ランダによって雇われ、
調査隊のリーダーとなったジェームス・コンラッド(トム・ヒドルストン)、
自らを“反戦カメラマン”と称する写真家で、
髑髏島における調査の本当の目的に疑いを抱き、
カメラマンとして調査隊に加わったメイソン・ウィーバー(ブリー・ラーソン)、
ヘリコプター隊スカイデビルズのリーダーで、
ベトナム戦争末期に部隊を解散する予定だったところ、髑髏島の航空探査の依頼を受け、
部下たちとともに最後のミッションに繰り出すプレストン・パッカード(サミュエル・L・ジャクソン)らがいた。
髑髏島の周囲は暴風雨に覆われて船での接近は不可能な状態だったが、
ランダたちはパッカード部隊のヘリコプター数機に乗り換え島へと向かう。
そして暴風雨を突破して島に乗り込んだ調査隊は、
地質調査の名目で眼下の地にサイズミック爆弾を次々と投下していく。
だが、その騒ぎを聞き付けコングが出現。
怒り狂うコングによりヘリコプター部隊は全滅し、調査隊は散り散りとなる。
島を破壊したことでコングを怒らせてしまった人間たちは、
究極のサバイバルを強いられることに。
コンラッドやウィーバーたちは島を脱出するために船との合流地点である島北部に向かい、
パッカードは部下を葬った仇のコングを抹殺する武器を手に入れるため、
救出も兼ねて部下のチャップマンが落ちた島西部に向かう。
だが、脅威はキングコングだけにとどまらず、
まだまだ多くの巨大怪獣たちが島に潜んでいた。
為す術もなく逃げ惑う人間たち。
果たして調査隊は島から脱出できるのか……
1933年に誕生したオリジナル版『キング・コング』は、
私個人は(TVで)何度も観ている。
私が子供の頃は、TVも放送する番組が少なかったのか、
毎日のように同じ映画を同じ時間帯に放送していた。
そのお蔭で、
今ではほとんど見ることのできない
『不知火検校』(1960年)で、
中村玉緒の美しさを知り(今となっては想像すらできないが、彼女は本当に美しかった)、
『秋津温泉』(1962年)で、
岡田茉莉子の妖艶さを知った。(本物が見たくて、上京後、すぐに彼女の舞台を見に行った)
話が脱線してしまったが、(コラコラ)
かようにオリジナル版『キング・コング』は何度も観ているということだ。(なんのこちゃ)
この『キング・コング』は、
オリジナル版『キング・コング』(1933年)以降、
『コングの復讐』(1933年)
『キングコング』(1976年)
『キングコング2』(1986年)
『キング・コング』(2005年)
と、これまで幾度も映画化されており、
日本でも東宝の「ゴジラ」シリーズで、
『キングコング対ゴジラ』(創立30周年記念作品・1962年8月11日公開)
『キングコングの逆襲』(創立35周年記念作品・1967年7月22日公開)
に登場している。
※『キングコング』か『キング・コング』か、「・」(なかぐろ)があるかないか、それぞれ表記が違うので要注意。今回の『キングコング:髑髏島の巨神』は「・」がない。
本作『キングコング:髑髏島の巨神』の目新しい点は、
時代設定を1970年代にし、ベトナム戦争と絡ませていることだ。
『地獄の黙示録』(1979年)を彷彿とさせるシーンが随所にあり、
「おっ」と思わせる。
ただし、これは最初だけで、
原住民が出てきたり、いろんな怪獣が島内で暴れ回る場面が出てくると、
かつての『キングコング』や『ジュラシック・パーク』と同じパターンとなり、
新鮮味は薄れ、既視感あふれるシーンの連続となる。
ただ、今回のコングはデカい(体長31.6メートル、体重158トン)ので、
スケール感がこれまでの作品とはかなり違う。
ビルのように見上げるほどの高さなので、迫力が増している。
これは、第3弾で、ゴジラと対決させるためのようで、
「見上げたときに『神だ』と思うサイズを意識しているんだよ。日本のゲーム『ワンダと巨像』に感じるような威厳をね」
という監督(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ)の意図もあったようだ。
この1984年生まれの若きジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督は、
日本のポップカルチャーが大好きで、
それが、『キングコング:髑髏島の巨神』にも影響を与えており、
その部分が、むしろ、これまでのコング作品とは違っているように感じた。
日本のアニメ、ゲーム、マンガで育ったようなもので、女の子とパーティするより地下でマンガを読んだり、ゲームをするのが好きだった。宮崎駿や『メタルギアソリッド』を手掛けたゲームデザイナーの小島秀夫、任天堂のゲームクリエイターである宮本茂が生み出した作品は、言語的なものとして僕の体の芯に染み込んでいる。だから、どうしたって作品に反映されてしまう。今回もMiyaviが演じる日本兵グンペイ・イカリの名は、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジとゲームボーイを開発した横井軍平から取っているし、ヘリ操縦士が被るヘルメットのデザインでもカプコンのビデオゲーム『ロックマン』でロックマンが装着しているものにオマージュしている。さすがにこれは細かすぎて誰も気づかないだろうけど(笑)。コング以外のモンスターも、これまでの恐竜型やありきたりのエイリアン型ではなく、水牛や蜘蛛といった実際に存在する生き物をベースにして自然に対する畏敬の念を抱けるようなデザインにしている。これは宮崎駿の「もののけ姫」に出てくる動物たちが醸している精神性みたいなものを強く意識したね。(『キネマ旬報2017年4月上旬号』)
監督がこのように語るように、
本作は、日本文化にインスパイアされた部分が大きく、
日本人にとっては面白味の多い作品となっている。
ただし、
中国資本に買収されたレジェンダリー・ピクチャーズの作品なので、
あまり必要性が感じられない中国人の生物学者が登場するなど、
チャイナマネーの影響の大きさを感じさせられた映画でもあった。
(この傾向は、『ゼロ・グラビティ』『オデッセイ』『グレートウォール』などでも見られ、ハリウッド映画における不自然なまでの露骨な「中国ヨイショ」は、これからも続くと思われる)
レジェンダリー・ピクチャーズが、
今後展開していく怪獣映画3部作の記念すべき第1弾『キングコング:髑髏島の巨神』は、
なかなかの作品だったし、
第2弾、第3弾にも期待を抱かせる内容であった。
エンドロールの後に、その予告みたいなワンシーンが付け加えられているので、
場内が明るくなるまでは席を立たないようにね。
2019年公開予定の第2弾(ゴジラを中心とした“リーグ戦”)も面白そうだが、
やはり、
2020年公開予定の第3弾(ゴジラとキングコングの激突)の方により期待してしまう。
どんな設定で闘わせるのか……
今から興味津々なのである。