MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「ゴーディベール夫人の肖像」の謎

2014-08-06 00:32:53 | 美術

 現在、新国立美術館で催されている「オルセー美術館展 印象派の誕生」においても

クロード・モネの作品を数点観ることができる。その中で奇妙な作品がある。

「ゴーディベール夫人の肖像(Portrait of Madame Gaudibert)」(1868年)

なのであるが、パトロンのゴーディベール氏の夫人を描いた肖像画には何故か肝心の

顔が描かれていない。肖像画(Portrait)と謳っているのだから、せめて顔だけは

描かなければならないはずなのに、顔が描かれていないのである。これは不思議な

ことなのだが、振り返ってみると「緑衣の女」(1866年)のカミーユ・モネの顔さえ

はっきりと描かれていなかった。ここで取り上げたい作品は同展覧会に出品されている

「草上の昼食(Le déjeuner sur l'herbe)」(1865-66年)の右側部分である。

 はっきり言うならば、この頃のモネは人の顔を描くことが上手くないのである。

このように個人的な作品ならば下手でもかまわないとしても、パトロンの夫人の顔を

下手に描くわけにはいかないということで「ゴーディベール夫人の肖像」の夫人は

後ろ向きなのだと思う。おそらくそのことを勘案したゴーディベール氏の同意の上であろう。

モネが積極的に人の顔を描くようになったのは1870年以降だと思う。


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