森村誠一の作家活動50周年を記念しての山岳ミステリー
傑作選の4作目。しかも、上下巻合わせて900ページ
もの長編。大作ということで期待して読んだ。
しかし、山岳部分というのは、実は一割にも満たない作品
だった。九割以上は、一言でいえば、戦争小説である。
5人の若者(日本人男子2人、女子1人、米国人男子1人、
中国人男子1人)が、槍ヶ岳にの山頂で、戦争が終わったら、
また、ここで会おうと五つの石に約束する。
そして、戦争に突入、沖縄の悲惨な戦争、特攻隊や、
中国731部隊の残酷な実験、広島、長崎の原爆などなど、
これ以上ないくらいの盛りだくさんな内容だ。
そういう意味では、面白かったのだが、ミステリーではなく、
どちらかといえば、歴史物語であり、森村誠一の戦争に
対するというか、当時の日本のおかれた立場に対する
思いなどが書かれているものだった。
残酷な部分もあるかと思えば、ロマンスを感じる部分もある
その盛りだくさんすぎる内容が、逆に不満となって、
感動できない読後感になってしまった。
戦争犠牲者の無念を踏まえての作品を書きたいと思ったのが
きっかけだということだ。その目的は達成できたのかもしれない。
しかし、その濃密な内容とは裏腹に、淡々としたストーリー
展開や、エンディングなどから、期待はずれのところがあった
と言わざるおえない。
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