過労死予備群の「食から笑顔になる生活」

夜討ち朝駆けで仕事する日々。忙しくとも自分なりの手間をかけて、美味しく笑顔になる生活を志します。

徳山鮓、師走5:里山に降り来る命をいただく

2016-12-14 20:20:00 | 日いづる国の伝統食
★飛び込み記事です★



■五ノ膳
■猪の生ハム、鹿・熊・猪のパテ、猪の頬と脛の煮凝り、荏胡麻(えごま)のソース

おぉう、熟成した生ハムを見慣れた目には、赤の違いがわかります。これは人に管理された色ではありません(ニッコリ)。
されど、どれもが、ハムやパテの香りをたてて、誘惑します(笑)。

写真中央にあるのが、猪の生ハム、腿とバラです。
左手が、鹿・熊・猪のパテです。
右手が、猪の煮凝りです。野生肉由来の煮凝りを、はじめて私は見ました!
写真手前が、荏胡麻のソースです。

私が食した順番は、生ハム→パテ→煮凝り→パテ(笑)、でした。
どれも野趣はあれど、丁寧に仕事をすれば、こんなに豊かな旨さとコクを引き出せるのかと、驚かされました。

食した順番通りに、写真があるわけではありませんが(笑)、なるべく、跡をたどってみます。



■右手:猪の生ハム・腿肉、熟成
(左はパテです)
きめ細かい筋肉の大きさを意識する生ハムでした。
肉質が甘い! 脂が香る!
これは無花果を食べていた時期の猪とのこと。
以前に、山口で、栗を食べている時期の猪は最高級だと聞いた話を、私がすると、里で雑食になると食べられなくなりますと、奥さまに教わりました。



■右手:猪の生ハム・バラ肉、熟成
(左は生ハム・腿の一部)
脂に力が加わり、腿とは違う魅力がありました。ここに、ほんのり熱をかけてみたら…と、妄想がムクムクする(笑)風味でした。



■左手:鹿・熊・猪のパテ
それぞれのお肉をひいて、実山椒、鮎の魚醤等と、パテにしているときき、ドキドキしました。

これが! 圧巻のパテでした。食感は繊維を感じさせながら、ほぐれていきます。山椒の深さが最初に、ついで醤のコクが、さらに鉄の味がきて、咀嚼するなかで、肉のパテだと、くっきり見えてきました。

どの生き物も、おろそかに扱われず、丁寧に肉に変えられていったからこそ、このパテは出来たのだと、信じました。
生き物の匂いが、食べ物の匂いに息づく調理は、素晴らしい!

パテは私の気に入りの調理法で、仕事の正しさ、知識の深さ、集中力が見える方法と思っています。
この日のパテは、今まで出会わなかった、新しい学びでした。



■右手:猪の頬と脛の煮凝り、柚皮と

煮凝りといえば、魚の煮汁が、冬の朝に固まる風景として、ちびの頃から、馴染みがありました(ニッコリ)。
鰈、河豚、穴子、鯨、鮟鱇(茨城)、うつぼ(土佐)、えい(北海道)、すっぽん…郷土料理として、様々にあることが、魚喰い日本(笑)を意識させたものです。

それに比べて、お肉の煮凝りは意識的に、料理として知ったように思います。小籠包に詰めるジュレや、九州や沖縄の豚足料理のふるふる。ゼラチンを溶いてブイヨンやコンソメを固めるアスピック、等です。

食べてみなくては!
猪の頬と脛と紹介にありました。パクっ、ムチューウと歯が肉に食い込み、とろんっとゼラチン質が口に拡がりました。咀嚼しているうちに、噛むことで肉を食する煮凝りという、新しいジャンルについて、考えが拡がりました。

頭の中で、ページをめくります(笑)。
猪は皮や骨回りからゼラチン質がよく上がると、中華のテキストにでていました(笑)。猪の頬肉はもっとも美味しい部位と、京都府の猟師の方の書籍にありました。その知恵の組み合わせが、ここに形を為しているのではないかと、思いました。


鹿、熊、猪。山と里に別れて暮らしていければ、たまに里山で出会うだけの生き物であったはずでした。貴重な恵みになった時代もあったことでしょう。
里どころか街に現れて、雑食を覚えて、人を襲って、害獣と呼ばれてしまう時代になって……彼らに意味がわかっているのだろうか、と、チクリっと胸を射す気持ちもあります。

ですが、私は知っています。ここに在るものは人が狩った命であることを。
食材として出会ったものは、全うすべきです(ニッコリ)。
野菜も、魚も、肉も。私達が生きるなかで、その命をいただいていることを感謝するのです。


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徳山鮓、師走4:錆朱色は香茸を抱く

2016-12-14 18:17:00 | 日いづる国の伝統食
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■四ノ膳
■鹿のたたき、香茸(こうたけ)を散らす、山葵、醤油

わぁ、きれいな錆朱色! ふっくらしたたたきからは、野生肉よりむしろ、いい茸の香りがします。
この香りは、乾燥させてから粉末にした香茸によるそう。

お箸ではさむと、柔らかい! これに、ちょんっと山葵をのっけて、パクリ。
あ、いい香り! そして鉄の味、肉の味と続きます。
醤油のちょい浸けで、鉄の味はかなりマスキングされてきます。日本の野生肉を食す時に、醤油は強いっと思いました。あ、日本だけではなく、イヌイットの村でオットセイを食した冒険家も、同じ感想を述べていました。

今まで食した鹿の中で、もっとも綺麗に仕事された肉の味がします。美味しいっと思い、さらにお酒を含めば、いい香りが拡がります。やるな!
わずか三口を、語らずにはいられない、丁寧に調えられた鹿の味でした。

たたきに添えた野菜のなかでは、水菜と赤かぶらはしゃくしゃくと、楽しめました。



全体を俯瞰して。生のままの朴葉(ほおば)、あるいはシダに載せたような盛り付けに、野趣を感じます。
野に育って、人の手によって食に形を変えてくれた錆朱色が、艶やかに映える、人の心の優しい盛り付けと思いました(ニッコリ)。

お酒は、引き続いて、七本槍の山廃生酒をあわせました。食を膨らませる、いいバランスでした。


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徳山鮓、師走3:機能ではなく身体が喜ぶ

2016-12-14 06:43:54 | 日いづる国の伝統食
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■三ノ膳 (ちょい冷え)
■鯖の熟鮓(なれずし)、トマトとチーズ
チーズは岡山のカチョカバロを、糸削りしたもの。トマトとチーズを、熟鮓で巻いて召し上がってください、と教わりました。

「鮒鮓は後程、でて参りますが、まずは鯖で」と、ニッコリされる奥さま。
私は、この器の様子に、見惚れました。夜空に輝く満月が、水面に映り、お料理が盛り付けられているように感じました。
数mmに引かれた鯖は、銀色を宿していて、丹色のトマト(スプレッドかピュレ寒天か?)、アイボリィ…ふんわり盛られた、カチョカバロの糸山。
この色合いの美しさが、なかなか切り取れず…。ジタバタする間に正面からは、旨いっ!と歓声が(笑)。



鯖のひと切れごとに、トマトは密着しているので、糸削りされたカチョカバロを盛って、ふわっと箸で巻き、パクリっ。うん、うまっ♪
鼻に抜ける発酵匂に、爽やかさが重なります。ベネチアのチケッティで、近い香りをとった…。イタリアも発酵食品が進化している国だったね!と、話が拡がります。

熟れ鯖のイノシン酸とトマトのグルタミン酸。二つの質の違う旨味の相乗効果は、より旨味を感じさせるだろう。チーズは発酵食品で、カチョカバロはミルクの旨味が強く、乳酸発酵とぶつからない、いや爽やかさを増すか?…等と、頭では考えます(笑)。

ですが、機能を云々しなくても、からだが喜ぶ旨し物が、あるのです。

豊かな工夫の知恵、だけではなく、物流や出会いも必要です。
カチョカバロが私達の生活に届いたのはミレニアム以降、トマトが日本で栽培されたのは明治です。鯖の熟鮓の歴史は長くても、微妙な発酵制御が可能になったのは、そう昔ではないでしょう。
そう気づくと、この一皿の後ろにある、沢山の想いに胸が篤くなります。名前も顔も知らない命が、私達を護ってくれていると。忙しいと忘れてしまうこと……不意に思い出しました(ニッコリ)。

★追記:なれずしの表記を、徳山鮓さんのwebにしたがって、「熟鮓」に統一しました。動詞も「熟れる」を使います。(20161214)


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