「詩を作るより田を作れ」という諺に触発された訳ではないが、一面の葦原になってしまった棚田跡を復元したのは昨年の早春だった。水辺環境に乏しいフイールドなので生物多様性の維持も考えなくてはならなかったし、景観ポイントとしての変化も欲しかったと言うのが実感だろう。
水田として活用する、と言うより浅い湿地としての形態で維持したいのだが、これが意外に手数が掛かるのが理解できるようになった。
それはともかく、水を張ってしばらくもしないうちに絶滅危惧種の「ミズアオイ」や種は鑑別できないが「金魚藻」の一種がいっせいに芽生えてきたのは感動だった。拠点近くの水溜りに絶滅危惧種の「何とか」という藻が存在しているのだが、水系が異なるが同じ種だとうれしいが…。
夏になると子どもの頃に田んぼで見かけたことのある植物が、これまた畦を覆ってくれたのだ。種子で生きながらえていたのだろうが草刈りをしながら感心しきりであった。動物は猪が畦や水路を穿り返して血圧を上がらせ、低めの血圧改善に貢献してくれる。「水田療法」を考えてみる価値はありそうだ。
また夏場のトンボの種類にはびっくりした。「何処から湧いて来たのか」と思わざるを得ないほど普段目に出来なかったオオカワイトトンボ、キトンボなど初見の種類もあったからだ。
魚類は全く生息はしていないがカワセミは飛来して採餌行動をする。きっとカエルやイモリの類を捕食していると見ているのだが…。イモリはアカハライモリだ。これもレッドデーターブックに掲載されているとの話を聞いたが、このフイールドにはウンザリするほど生息しているのだ。ちなみに小生には、あの赤と黒の腹模様は気持ちが悪い、のだ。
田起こしをしていた時、泥水の中から一瞬「サンショウウオか?」と思った生物が姿を見せた事があった。確認しようかと捕獲を試みたが見失ったことがある。今年は確認できるかどうか、そろそろ畦作り、田起こし、水路の補修をしなければならない時期になった。