遠く穏やかな瀬戸の海
望遠レンズを用いて
二階の窓から瀬戸内海を臨む癒しの空間に、今年初め頃から何やら基礎工事が始まった。高層マンションなど建てられたら、せっかくの遠景が遮蔽されるが・・・と不安だった。
ところが工事が進むに連れて、それほど高い建物ではないと分かってきた。
外装工事もほぼ終わり、工事用の囲いネットが取り払われた。二階建ての賃貸アパートが横並びで2棟建っている。幸いなことに、屋根は低く視界を遮ることもない。
これまで通り朝な夕なに海が臨めるのは有り難い。と、喜んでばかりはいられない。
ここ岩国は、山口県東部にある断層「岩国断層帯」の上にある。
山口県周南市から広島県大竹市まで、約44キロメートルにわたって断層が通っている。
いつ地震や地殻変動が起きてもおかしくない地帯である。
そうなると、いつも穏やかな瀬戸の内海といえども、地震と共に発生する津波はやはり怖い存在である。
平地のアパートの屋根を見下ろせる程度の高台ではあるが、それとて今回の東北関東大震災のような、想像を絶する津波が襲ってくればひとたまりもない。
太平洋や日本海のように外洋ではないが、ひとたび荒れたら何が起こるか分からない。
それが海であり、水の怖さだ。
死に物狂いで走って、娘や孫の住む高台にたどりつくしかない。
心地よい海風や眺望の恩恵を受ける身を、せいぜい海に感謝し、穏やかであり続けてくれることを祈るほかはない。