朝日新聞が提供する読者のwebページ「アスパラクラブ」というのがある。
朝日新聞の看板エッセイ「天声人語」を文字った「天声新語」という読者投稿欄がそこにある。以前から一度は挑戦してみたかった。今回のテーマは「けんか」。
昔からけんかは弱く、自信のない作品ではあったが、図らずも掲載して頂いた。
2011,3,28日 アスパラクラブ天声新語テーマ『けんか』 掲載
犬も食わないと言えば夫婦げんかの代名詞。それほど愚かなことなら最初からしなきゃいいとわかっちゃいるが、時に衝突することもある
▼結婚当初から両親と同居の私たちに、長女・長男が誕生し父が他界。3世代5人の生活に落ち着いた。
子どもの成長に合わせたお祝い事やしつけなど、いろんなことがある。夫婦や親子の意見の相違も出てくる。時にいさかいの種にもなる
▼「嫁と姑の戦争をさせないこと」を親と同居する男の甲斐性でもあり、妻に対する最低限の思いやりとして結婚以来肝に銘じてきた。
そのためにはまず私たちが夫婦げんかをしないこと。けんかになれば母は必ず私に味方する。2対1になるだけでなく、嫁と姑の折り合いまで悪くなる
▼2人の間に挟まって右往左往する哀れな男を演じないためにも、家庭円満の知恵をしぼり、自分を抑える努力もした。それでもたまにムカッときて、一言、言わなきゃ収まらない時もある
▼そんな時、母の前で嫁さんをこき下ろしてはこれまでの努力が無駄になる。まずは自分を抑え、寝室で夫婦2人きりになるのを待っておもむろに話す。同様に母に小言を言う時も、自分の部屋に戻るのを待って母と2人で本気で話す
▼つまり、けんかも小言も1対1の差し向かいになるのを待つ。この待つという時間が、ほとばしる怒りを抑える絶妙の間となる。気持ちの角が取れ、冷静な自分に返り、いさかいがアホらしく思えてくる
▼「言いたいことは明日言え、短気は損気」という母の長年の教えを守っているだけのことである。
( 写真 : 文面とは関係ない、およそ半月遅れで満開の沈丁花 )