また一つ故郷の味が消えるニュースを伝える 中国新聞
また一つ、ふる里の味・ふる里ブランドが消えることになった。
町中から約20分もクルマで走った山間の集落。鉄分を多く含む赤土から採れるダイコンは、地元の人たちの手でたくあんに加工された。試行錯誤を繰り返すうちに、独特の酸味を帯びた「阿品たくあん」の味として、地元だけではなく全国ネットのブランド商品として売り出されるに至った。
山林に囲まれ耕作面積の狭い集落で生まれたブランド商品は、地区住民の大きな副収入となって生活を潤した歴史もある。
しかし、高齢化社会とはこういった地域社会の仕組みにも大きなダメージを与える。加えて人口流出による地元住民の減少は、地域の持つ宝物さえ輝きを失わせるという罪作りな結果を招く。
幸いなことに今回の阿品たくあんは、過去の実績や味わいを知るファンもあって、新興の地元漬物店に引き継がれることになり、60年の歴史が完全消滅ではなく後継者が見つかったということは有難い話である。但し、今後の生産活動や原料調達などは地元から離れることになりそうなので、地元への貢献と言う意味では縁遠くなる。その点は少し気の毒な話ではある。
私にとって阿品という集落とのご縁は高校1年生に始まる。自宅から学校までの距離約30kmを自転車通学する強者同級生の住所が阿品であった。考えてみれば、阿品たくあんは60年の歴史に対して、私たちはそれより5年も早くお付き合いが始まったということである。
今も彼が所有し手入れを続ける竹やぶの、出始め旬のタケノコを賞味させてくれる有難い友でもある。悠々自適とは彼のためにある言葉のような優雅な日々を送っている。大病もせず元気でいてくれるのが何より嬉しい。そんな山間の集落の一つの歴史に目が行った。
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