一緒に生活してきた母が98歳を過ぎた頃、完全な寝たきりになり、やむなく療養型介護施設にお世話になることにした。
入所面談の折「高齢ゆえいついかなる状態になるか、そのリスクをしっかり承知しておいて下さい」と医師からの宣告。
その時「これからは携帯電話は肌身離すまい」と誓った。
いついかなる時も施設との速やかな連絡態勢を整えておくことが、母と一緒に生きているせめてもの証しだと思いたかった。
それから2年半、施設との連絡は固定電話で十分事足りていた。
ある日の夕方、後にも先にもたった一度だけ、施設からの呼び出しが携帯電話に入った。
受けると同時に車を走らせたが、部屋に着いた時はすべてが終わっていた。
それでもまだぬくもりのある母の額に手を当てることはできた。
そして精一杯の「ありがとう」を心の中でつぶやいた。
どこで何をしていようと、確実に連絡が取れる重宝な代物。
これからの生活を考えると、携帯電話はこれまで以上に手放せないと思う。
使いこなすなどおこがましいが、てこずりながらもやっぱり仲良しでいよう。
2010.3.15 朝日新聞テーマ「携帯電話」掲載
( 写真: 携帯電話も持ち始めて、早くも3台目となった )
入所面談の折「高齢ゆえいついかなる状態になるか、そのリスクをしっかり承知しておいて下さい」と医師からの宣告。
その時「これからは携帯電話は肌身離すまい」と誓った。
いついかなる時も施設との速やかな連絡態勢を整えておくことが、母と一緒に生きているせめてもの証しだと思いたかった。
それから2年半、施設との連絡は固定電話で十分事足りていた。
ある日の夕方、後にも先にもたった一度だけ、施設からの呼び出しが携帯電話に入った。
受けると同時に車を走らせたが、部屋に着いた時はすべてが終わっていた。
それでもまだぬくもりのある母の額に手を当てることはできた。
そして精一杯の「ありがとう」を心の中でつぶやいた。
どこで何をしていようと、確実に連絡が取れる重宝な代物。
これからの生活を考えると、携帯電話はこれまで以上に手放せないと思う。
使いこなすなどおこがましいが、てこずりながらもやっぱり仲良しでいよう。
2010.3.15 朝日新聞テーマ「携帯電話」掲載
( 写真: 携帯電話も持ち始めて、早くも3台目となった )