畑に吹く風

 春の雪消えから、初雪が降るまで夫婦二人で自然豊かな山の畑へと通います。

連載150「無水鍋」(その1)

2018-04-27 05:01:28 | 食べ物

    無水鍋(その1)

  テロとか無差別殺人とか、物騒な言葉など耳慣れない平和な時代であった。

職場には比較的自由に物販業者が出入りしていた。見方を変えると、それを許すおおらかな雰囲気があった。


 ある日の事、私のいた保線区の事務室に変わった業者が来て、販売の許可をもらった。

許可を得て三人組の業者が長い白衣を着て販売の準備を始めた。

仕事をしながら横目で見ると、なんとガスコンロと簡単な調理台のセットを組み立てる。

そして、やおら取り出した商品は鍋である。そしてホウレン草やら、浅蜊やら食材を準備する。


 昼休み時間になると、早速調理を始めた。

その鍋はアルミ合金の厚手の鍋で、鍋の内側に納まる薄い内蓋と、その上に被せる鍋と同じ材質で、

フライパン状の形をしていて取外し可能な取手が付いている。

 重い上蓋でかなり密閉度が高く「無水鍋」と説明された。

水洗いしたホウレン草も、水を入れない鍋に入れしばらくするときれいな「お浸し」が出来上がる。


 浅蜊も簡単に美味しそうな香りを上げる「酒蒸し」に姿を変える。

食い意地の張った私は欲しくなったが問題は値段である。私の月給の三分の一ほどもしたのである。

負けず嫌いで何でも人より先に買わなければ気の済まない先輩の事務係が「よし、買った。」第一声を上げた。

             (続く)

 (ある新聞に投稿している文章の連載が150回を迎えました。「面白くて、週一の発行日が楽しみ」

と、言って下さる方もおられ、そんなお話が励みで続けています。)

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山菜「コゴメ」を独り占め(その2終わり)

2018-04-27 04:32:43 | 山菜

 一人で黙々と取り続ける。

崖の上方ではトンビが「ピーヒョロロー」なんてのんびりと輪を書いて鳴く。

 

  雨上がりと言う事もあり、コゴメはつややかに光って見える。

これはね、太いですよ。こんな太さのコゴメって結構珍しいですよ。

 

  レジ袋に二つ、たっぷりと採りました。

まだ、採れたのだったけれど、これで十分。うーん、誰に進呈しようかなー。

 

 収穫は午前中の事で、夕方まで冷蔵庫の野菜室に保管しました。

そして、夕食にはたっぷりと茹でて食べました。親の敵に会ったが如くに(大笑)。

 でもね、午後から来宅するお客様に進呈と思ったら「沢山いただき物があります」とのこと。

そこで、隣村の独り暮らしの女性たちに届けました。とは言っても、決して危ない関係では有りません。

 スベルべは実は、ある肩書も持っていて、お年寄り、弱者の見守りもしているのです。自分も年寄りですが(笑)。

届けると「まぁー、美味しそう。今年はまだ食べていないの」と喜んでいただきました。

 貧乏性で山菜も見つけると、後先も考えずに採ってしまうスベルべです。

でも、「独り占め」とは言いつつも、皆さんに進呈し喜んでいただけることがもっと嬉しい事なのです。

            (終わり)

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