![]() | 鴨川食堂いつもの (小学館文庫) |
柏井 壽 | |
小学館 |
「料理春秋」に掲載された一行広告から 鴨川食堂を捜す人々は縁があれば 看板も無い「味もそっけもないモルタル造りのしもた家」にたどり着く
そこで元刑事であった店主の鴨川流による心尽くしの季節の味を「おまかせ」で味わい 流の娘で探偵事務所の所長のこいしに もう一度食べたい捜す味について説明する
するとたいていは二週間後あたりに 食べたかった料理を再現してもらえる
お代は見合ったぶんをお客が振り込む
京都 「おひがしさん」(東本願寺)近くにその食堂はあるのだとか
第一話 かけ蕎麦
能楽師の家に生まれながら ダンサーという仕事を選んだ男だが 父と行った店で出された蕎麦の味が忘れられずにいた
一見 素朴な蕎麦なのに深い・・・・
料理と共に流の言葉も 男の心を打つ
第二話 カレーライス
服役中の娘が結婚する前に作ってくれたカレーライス その美味しいカレーを孫息子にも食べさせたい
娘は父親が結婚を反対する男の妻になり その喧嘩を止めようとして はずみで人を死なせてしまった
そのカレーには 父を思う娘の工夫の隠し味がしのばせてあった
第三話 焼きそば
ピアニストの女性は恋の為に 初めて知った愛の為に無謀なことをする けれども!
想いは消えない
好きな相手が彼女の為に作ってくれた焼きそば
その焼きそばを食べたいのだと依頼してきた女性には もう一つの願もあった
第四話 餃子
妻との間もしっくりしない 男は妻とは別に交際していた女性の両親が作ってくれた餃子の味をなつかしむ
それは迷いだろうか
身勝手といえば身勝手 愚かでわがままで
流が再現した餃子を食べた男はー
第五話 オムライス
勉強を教えていた友人のお母さんが作ってくれるオムライス 人生につまずいた男は そのオムライスを作って欲しいー食べたいと依頼してきた
どうしてそのオムライスがそんなにもおいしかったのかー男は知ることになる
満足のいく人生とはーどういうものだろうか
第六話 コロッケ
今は作家になった女性は 若い頃は「あれていた」と話す コロッケを盗むことからー
そうして盗んで食べたコロッケの味が忘れられない
でもできれば償いをしたいとも
娘によせる母の愛 近所の人の優しさ
元刑事ゆえに黙っていれば いささかとっつき悪そうな流
顔にすぐ感情の出るこいし
でも情は深い父と娘
そんな二人が 食べ物屋ゆえ建物の中には入れられない猫のひるねと共に客を待つ鴨川食堂
常連さんもついていて
鴨川父娘のことを心配もしてくれている来栖妙さん
こいしが心を寄せているらしい浩
看板も暖簾もないお店ですがー美味しいご飯が待っています