【社説①】:中東の有志連合 米主導では緊張高める
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中東の有志連合 米主導では緊張高める
ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保を名目に、米国が日本などの関係国に有志連合への参加を呼びかけている。
初来日したエスパー米国防長官も、岩屋毅防衛相に有志連合への参加を要請した。
米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長がこの構想に言及してから1カ月がたった。
しかし国際的に支持が広がっているとはとても言い難い。参加を表明したのは英国くらいだ。
有志連合に加われば、イランが敵対国とみなして反発するのは明らかである。かえってペルシャ湾の緊張が高まる恐れがある。
日本政府は米国に追従することなく、冷静に対応すべきだ。
米国が7月下旬に開いた有志連合構想の説明会に参加したのは三十数カ国にすぎなかった。1週間前の説明会から半減した。
主要国の中でもドイツは既に不参加を表明し、米国と一線を画す姿勢を明確にした。
支持が広がらない理由の一つは、いまだに有志連合の全容が明らかになっていないことだろう。
参加国がホルムズ海峡などを監視し、自国の船舶を護衛する国に情報提供する仕組みと言われるが、それ以上の中身は分からない。
トランプ米大統領はホルムズ海峡警護を巡り、米国の負担が大きすぎると不満を漏らしてきた。その上で「自国の船は自国で守るべきだ」と主張する。
だが緊張が高まり、各国の船舶が危険にさらされる原因をつくったのは誰なのか。
イラン核合意から一方的に離脱したトランプ氏ではないか。イランは核開発制限の義務を果たしてきたにもかかわらず、制裁緩和の約束をほごにされ、軍事的圧力をかけられている。
国際協調の枠組みに次々と背を向けてきたトランプ氏が、有志連合には多くの国の参加を求める。独り善がりと言わざるを得ない。
かつて米国主導の有志連合が取り返しのつかない過ちを犯したことも忘れてはならない。
イラク戦争は米国に英国が追随して始まった。開戦の大義だった大量破壊兵器は見つからず、おびただしい数の死傷者を出した。
安倍晋三首相はきのうの記者会見で、有志連合への対応に関し「いかなる取り組みが効果的か慎重に検討する」と述べた。
米国の本当の狙いは、軍事的なイラン包囲網を構築することではないのか。そうであれば日本が参加すべきでないのは明白だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年08月10日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。