【社説②・12.26】:学校図書館 読書の楽しさが伝わる場所に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.26】:学校図書館 読書の楽しさが伝わる場所に
学校の図書館は、子供たちに本の魅力や読書の意義を知ってもらう大事な場所だ。心に残る一冊と出会えるよう、機能を強化する必要がある。
学校図書館の本選びや読書指導を担うのは小中高校の司書教諭だが、その8割は図書館業務の時間を確保できていないという。
図書館では、司書教諭の補助役になる「学校司書」と呼ばれる事務職員がいて、本の貸し出しや蔵書の管理といった実務を担当している。司書教諭は、これら学校司書と協力して学校図書館を運営することになっている。
だが、司書教諭の多くは学級担任を兼ね、教科指導にも時間を取られる。そのため司書教諭としての仕事が十分にできていない。
近年、教員の多忙感が指摘されているが、学校の図書館には、子供の「居場所」としての機能もある。司書教諭が学校図書館の重要性に目を向け、充実を図れるような校務の見直しが欠かせない。
また、学校司書の配置や待遇にも問題がある。公立小中学校では、全体の4割が複数校を兼務している。しかも大半が非正規雇用で、雇い止めも珍しくない。
一方で、意欲のある学校司書が本棚のレイアウトを工夫するなどし、生徒への貸出数を1年間で10倍に伸ばした高校もある。
文部科学省は、1校に1人の学校司書の配置を目指している。学校図書館の機能強化に向けて待遇を改め、増員を図ってほしい。
学校での読書活動に力を入れるかどうかは、自治体の長や校長の考え方によるところが大きい。子供の頃から本に親しみ、自分で考える力を身につけることの大切さをぜひ理解してほしい。
国は自治体に図書の購入費を配分しているが、使途を特定しない交付金のため、他の政策に使われることも多い。2021年度に交付された220億円のうち、実際に図書の購入に使われたのは126億円にとどまった。
新しい本の購入が進まず、古い本が廃棄されずに残っている学校も少なくない。
本を使った探求的な学習の場として、学校図書館の重要性は増している。国は、使途を自治体に任せる現行の支給方式を改め、目的を限定した補助金に変更することも検討するべきではないか。
鳥取県では県立図書館内に学校図書館を支援するセンターを開設し、司書教諭や学校司書の研修に取り組んでいる。学校図書館の効果的な活用には、地域の公共図書館との連携も求められよう。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月26日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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