【社説①】:避難生活支援 「助かった命」を守り抜く
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:避難生活支援 「助かった命」を守り抜く
元日に最大震度7を観測した能登半島地震。石川県内の死者は200人を超え、なお被害の全容は見えない。県北部の奥能登を中心に3万人近くが避難を続け、その多くは厳冬の中、停電で暖房のない過酷な環境下での生活を強いられている。断水も続く。官民が総力を挙げ、避難生活による体調悪化や疲労による「災害関連死」を食い止めねばならない。
珠洲市では、6人の災害関連死が明らかになった。県内の複数の避難所で新型コロナなども発生している。低体温症や避難所での感染症のまん延が心配だ。
2016年の熊本地震では、死者276人のうち、関連死が226人を占めた。熊本県によると、約8割は70代以上の高齢者で、既往症のある人が多かった。高齢化率の高い能登ではなおさら懸念が募る。人手が足りず、障害者らを受け入れる福祉避難所の設置も不十分だ。特に医療や介護面の支援強化を急ぎたい。
道路寸断で出遅れた支援物資の輸送は進んだが、拠点に集まった後、末端の避難所に届かない事例も目立つ。孤立集落、自主避難所、車中泊する人に物資を届けるにも人手が不足している。市、町の職員の多くも被災し、疲弊している。あらゆる面で、地域外、県外からのさらなる人的、物的支援が必要だろう。
避難所ではトイレが大きな課題になっている。感染症防止の面からも仮設トイレの増設などを急ぎ進めたい。被災者が水、食料、暖房に次ぎ求めているのは情報だという。携帯電話の電波寸断で親族らの安否確認ができず、支援情報も届きにくい。通信事業者などの協力も得て、避難所で迅速に情報提供できる態勢をつくれないか。
新学期を迎えたが、多くの学校が避難所になったままだ。余震が続く中、不安を抱える子どもたちの心のケアも忘れてはならない。
石川県は公営住宅の活用を進めつつ、被災者を金沢市で一時的に受け入れた後、県内外のホテルや旅館などを2次避難所とする措置を始めた。被災者の輸送、受け入れを加速してほしい。
一時は冷たい床に雑魚寝を強いられるなど、避難所の環境は知事が「劣悪」というほど厳しい。プライバシーを確保する仕切りを増やすなど、少しでも避難生活の質を上げる支援を尽くし、「助かった命」を守り抜きたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年01月10日 08:13:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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