【社説①・11.21】:自民政治改革案 資金透明化には程遠い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.21】:自民政治改革案 資金透明化には程遠い
自民党は、派閥裏金事件を受けた政治資金規正法の再改正に向けた方針案をまとめた。
政党から幹部らに支出され、使途の公開義務がない政策活動費は廃止する。ただ外国要人との交渉などを念頭に、非公開支出を一部温存するという。
「合法的裏金」とも言われた政策活動費は、実際の使い道を確認しようがない。例外を残せば、際限なく拡大する恐れがある。極めて中途半端な対応だ。
30年前からの積み残し課題である企業・団体献金の禁止にも触れていない。ここに至ってもなお先送りするというのか。
衆院選大敗の反省が感じられず、踏み込みが全く足りない。政治資金の透明化には程遠く、国民を再び失望させ、信頼回復を遠のかせてしまうだろう。
そもそも肝心の裏金の実態解明がいまだに進んでいない。野党は衆参の政治倫理審査会への裏金議員の出席を求めている。
自民党総裁である石破茂首相は少数与党の現実を受け止め、野党の主張をよく聞き、対応を根本から改めねばならない。
自民党は政策活動費を巡り、外交の秘密や企業の営業秘密など配慮が必要な支出があると説明する。公表方法を工夫し、第三者による監査で支出の適正性を担保するという。
だが党による「外交の秘密」とは、具体的にどんな内容を指しているのか理解できない。一度秘密を容認すれば、その基準はあいまいになりかねず、どこまで厳格に監査できるかも分からない。政治資金に不透明な部分を残すべきではない。
方針案には、政治資金を監視する第三者機関の早期設置も盛り込んだが、通常国会で検討課題となっていたものであり、むしろ対応が遅すぎるくらいだ。
企業・団体献金は30年前の改革で、政党交付金の導入と引き換えに廃止するはずだった。それがほごにされ続け、政党交付金との二重取りが続いている。
首相は、企業の政治活動の自由を認めた1970年の最高裁判決を盾に、企業・団体献金の正当性を主張する。しかしその判決は巨額献金による金権腐敗の弊害を「立法政策」で制限することは可能との見解も示す。やはり禁止が筋である。
立憲民主党など野党各党は禁止を訴えている。ただ国民民主党は「各党一致するならやる」と立場を明確にしていない。
自民党は今後、他の政策協議も合わせ、国民民主党を自陣に取り込み、臨時国会を乗り切りたい意向のようだ。うやむやに終わらせることなく、野党が一致して禁止を要求すべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月21日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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