【主張①・12.02】:排出量取引の導入 競争力低下避ける設計に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.02】:排出量取引の導入 競争力低下避ける設計に
政府が令和8年度の本格導入を目指す排出量取引制度の概要を公表した。
年間10万トン以上の二酸化炭素(CO2)を排出する大企業の参加を義務付ける。300~400社が対象となり、国内の温室効果ガス排出量の6割近くを占める見通しだ。
写真はイメージ
導入に当たり、政府は対象企業に対し、1年間に排出できる枠を無償で割り当てる。
排出が少なく枠が余れば、株式のように売却したり翌年に繰り越したりできる。逆に枠を超えて排出した場合はその分を市場などから購入しなければならない。それでも枠に収まらない場合は一定の負担金を徴収する方向だ。
排出量取引を導入するのは、CO2排出量の多い企業に脱炭素技術の開発・導入を促し、排出抑制につなげるためだ。すでに欧州連合(EU)や韓国などで始まっているが、日本で導入する際には国際競争力低下を招かない制度設計としなければならない。
脱炭素技術を導入して製造時にCO2排出を減らすなどした製品はコストが高くなることは免れない。制度を導入していない国に比べ、日本の輸出競争力が低下する要因にもなる。
もちろん排出を減らして枠を売れば脱炭素の投資負担を軽減できるが、鉄鋼などCO2削減が難しい業種もある。先行する海外事例も踏まえ、日本企業だけが過度に負担を強いられることがないようにすべきだ。
企業ごとに割り当てる排出枠の公平性も課題となる。脱炭素技術を導入してきた企業ほど排出削減の余地は乏しい。政府は過去の削減努力も勘案して排出枠を調整する方向で検討している。排出を減らそうと投資してきた企業が不利にならないようにする必要がある。
17年度の温室効果ガス排出量の削減目標について、政府は平成25年度比60%減とする方向で調整している。目標達成に、排出量取引が重要な手段となるのは確かだろう。革新的な脱炭素技術が開発できれば、国際競争力強化にもつながるはずだ。
そのためには、脱炭素技術の研究開発に積極的に取り組む企業に対し優遇措置を講じることも必要になろう。企業にとって過度な負担になることを避けつつ、着実に脱炭素が進む制度設計とすることが求められる。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月02日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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