21世紀も15年経った現代日本の国会で、大日本帝国が海外侵略を正当化するスローガンとして用いた言葉「八紘一宇」こそが日本の取るべき道であるとの熱弁が振るわれました。詳細は以下から。

発言があったのは3月16日の参議院予算委員会での自民党所属、三原じゅん子議員の質問の際。グローバル化の進む現状での租税回避問題に関する日本の方針についての質問の場面です。
三原議員は租税回避問題はグローバル資本主義の影の部分から目を背け続けることはできないとしながら日本が建国以来大切にしてきた価値観として「八紘一宇」を紹介。そして
「この八紘一宇という根本原理の中にですね、現在のグローバル資本主義の中で日本がどう立ち居振る舞うべきかというのが示されているのだと私は思えてならないんです!」
と熱く問いかけています。実際の動画は以下から。
三原じゅん子 日本が建国以来大切にしてきた価値観「八紘一宇」 - YouTube

この「八紘一宇」という言葉は日本書紀に記されている神武天皇の言葉を元に、大正期に日蓮宗系の宗教家、田中智學が造語したもの。田中智學自体は戦争を批判していましたが、昭和10年代には軍部や時の内閣によっても盛んに使われるようになってゆきます。
そして昭和15年、第2次近衛内閣によって閣議決定された政策方針である「基本国策要綱」では
「皇国ノ国是ハ八紘ヲ一宇トスル肇国ノ大精神ニ基キ世界平和ノ確立ヲ招来スルコトヲ以テ根本トシ先ツ皇国ヲ核心トシ日満支ノ強固ナル結合ヲ根幹トスル大東亜ノ新秩序ヲ建設スルニ在リ」
として大東亜共栄圏を作り上げるためのまさに根本原理として採用されるに至りました。例えば以下の画像は真珠湾攻撃の翌年、昭和17年のもの。八紘一宇が大東亜戦争によって具現化されていくとしており、この標語が侵略の「根本原理」として用いられていたことが分かります。
二千六百二年の紀元の佳節 肇国以來の國是 八紘一宇は大東亞戰爭によつていよいよ洽く具現されんとす この時に生を享くるものの榮譽 皇恩の無窮に泣く http://t.co/c7Hkhr4cIt
- 国策標語bot (@KokusakuHyogo) 2014, 11月 6

こうした第2次世界大戦時の歴史的経緯から、敗戦後には連合国軍最高司令官総司令部による神道指令によって公文書での使用が禁止されました。
戦後の政界においても、昭和32年の松永東文部大臣は衆議院文教委員会で
「戦前は八紘一宇ということで、日本さえよければよい、よその国はどうなってもよい、よその国はつぶれた方がよいというくらいな考え方から出発しておったようであります」
と発言しており、また昭和58年には中曽根康弘総理大臣が衆議院本会議で
「戦争前は八紘一宇ということで、日本は日本独自の地位を占めようという独善性を持った、日本だけが例外の国になり得ると思った、それが失敗のもとであった」
との認識を示すなど、肯定的には使われておりません。
しかし2015年の三原じゅん子議員はこの言葉を単に紹介するにとどまらず、現在のグローバル資本主義という社会の中での日本が今後取るべき有り様として強く推しています。
日本書紀の記述や田中智學の思想それ自体は大日本帝国の海外侵略とは結びつかなかったとしても、歴史的に重大な経緯のあるこの「八紘一宇」という言葉を軽々しく、そして熱狂的に使って見せてしまう姿勢は浅はかとしか言いようがありません。ただでさえ安倍政権の右傾化が海外からの大きな懸念事項となっている現時点で、非常に大きな失点として響いてくることは間違いなさそうです。
【追記】
三原じゅん子議員が本日ブログを更新し、八紘一宇について述べています。昨日の質問時にも引用した昭和13年に書かれた「建国」という書物をここでも引き、八紘一宇について「日本は一番強くなって、そして天地の万物を生じた心に合一し、弱い民族のために働いてやらねばならぬぞと仰せられたのであろう」との解釈を紹介しています。謝罪、撤回、反省の色は全く見られません。
「八紘一宇」とは|三原じゅん子オフィシャルブログ「夢前案内人」Powered by Ameba

【【悲報】三原じゅん子議員、国会で大日本帝国の政策標語「八紘一宇」こそが日本のあるべき立ち居振る舞いであると熱弁】を全て見る

 三原じゅん子議員は事実を視ることができるかどうか、試されています!

三原じゅん子ブログ「八紘一宇」とは   2015年03月17日(火) 06時42分11秒

http://ameblo.jp/juncomihara/entry-12002521691.html

「八紘一宇」というのは、『日本書紀』において、初代神武天皇が即位の折りに「掩八紘而爲宇」(あまのしたおおひていえとなさむ)とおっしゃったことに由来する言葉です。
(※2月11日の建国記念日が、神武天皇が即位したとされる日)。

この「八紘一宇」とは、簡単に言えば、「ひとつの家族のように仲良く暮らして行ける国にしていこうではないか」ということなのですが、昭和13年に書かれた「建国」という書物によりますと、

八紘一宇とは、世界が一家族のように睦(むつ)み合うこと。一宇、即ち一家の秩序は一番強い家長が弱い家族を搾取するのではない。一番強いものが弱いもののために働いてやる制度が家である。これは国際秩序の根本原理をお示しになったものであろうか。現在までの国際秩序は弱肉強食である。強い国が弱い国を搾取する。力によって無理を通す。強い国はびこって弱い民族をしいたげている。世界中で一番強い国が、弱い国、弱い民族のために働いてやる制度が出来た時初めて世界は平和になる日本は一番強くなって、そして天地の万物を生じた心に合一し、弱い民族のために働いてやらねばならぬぞと仰せられたのであろう。』ということです。(引用ここまで

よくよく読むことが必要不可欠ですね。学力が試されています!