東京都千代田區一番町の JCII PHOTO SALON にて、桑原甲子雄、濱谷浩の両氏が1935年頃の東京を撮った冩真展「東京 1930年代」を觀る。昭和十年頃の東京には様々な商賣人が街頭に佇み、或ひは通り、その多様さが街の彩りであったことを知る。それは、誰もが同じ見本をそっくり真似したそっくりサンばかりが往来する、現代の街頭風景とは画像の白黒が時間を完全に仕切ってゐて、もはや決して帰らぬ景色で . . . 本文を読む
ラジオ放送で、觀世流九皐會の「小塩」を聴く。都に住む男が大原野小塩山の花見で知り合った風情ある老人、實は在原業平の靈で、正体を明かすと雅びな車に乗って再び現れ、満開の櫻のもと昔日の戀物語に浸って舞ふ──とりわけ二條の后高子への戀は生涯強烈な思ひ出であり、曲もそれを下敷きにして作られてゐるが、後半はむしろ春の古歌を連ねて櫻春に酔ふ昔男の風情に主眼がおかれてゐる。この曲は仕舞ではちょくちょく出るが、本 . . . 本文を読む