薬罐の水が沸くまで間、二つに折った座布團を枕にして、軽く目をつむる。誰かが私に、ちっとも締まらない帯で衣裳を着せやうとしてゐる。とても古典物向きではない鬘をもって来て、今は亡き脇役の名を出してその人の指導によるものですと、私の頭にのせる床山(鬘師)がゐる。遠い昔に同じ釜の飯を食ったと云ふだけの出世魚が、なにかブツブツ言ひながら御手洗へと入って行く。間もなく出番だと云ふのに、段取りも呑み込めてゐなけ . . . 本文を読む
goo blog お知らせ
プロフィール
-
- 自己紹介
- 嵐悳江(あらし とくえ)──手猿樂師にして、傳統藝能創造家にして、鐵道愛好家にして、古道探訪者にして、文筆家氣取り。
雅号は「李圜(りかん)」。
カテゴリー
最新コメント
- GS/ニッポン徘徊──旧下大崎村点景。
- Stargate/帝国の関門、のちに海の玄関、そして永遠。
- ししまる/いまさらあってもしょうがない。
- ししまる/おなじあなのむじな。
- ししまる/かがみにはうつらない。
- ししまる/ごえんとはそういうもの。
- 紫陽花/よくみねぇ。
- 紫陽花/ささやき。
- ししまる/さりながら、さりながら。
- ししまる/あきぬあじわひ。