迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

晴嵐憂月。

2023-05-05 23:55:00 | 浮世見聞記
どこかで何かの催しがあるらしく、大勢の若い男女がゾロゾロ歩いてゐる道から一本外れて裏へ入れば、たちまちトウキョウとは思へぬ静かな佇まいとなり、私はやうやく昼食の辯當をひらく氣になる。今日も晝間は夏日、行樂には宜しからうが、さういふヒマ潰しに興味のない私には、日差しにもふ少し遠慮があってもよからうと、日陰からただ呆れて仰ぐばかり。午後から風が強まり、それが余計な雲を引っ張って来て、せっかく續いた晴天 . . . 本文を読む
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氷夏耳涼。

2023-05-05 06:30:00 | 浮世見聞記
ラジオ放送の觀世流「氷室」を聴く。今は昔、山中に設けられた天然の氷貯蔵庫を氷室(ひむろ)と云ひ、夏場にはここから氷をミカドへ献上云々、亀山院の臣下が丹波國の氷室山中で出逢った氷室を守る老人は、實は氷室明神の化身にて、やがて正体を現すと、ミカドへ氷を献上する様を見せて御代を壽ぐ──曲中の季節は春であり、夏の曲ではないが、“氷”が主題ゆゑに現在では夏場の演能會で、ちょくちょく仕舞でも舞は . . . 本文を読む
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