迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

とわのひとみにこいをする。

2014-08-07 21:46:40 | 浮世見聞記
世田谷美術館の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」を見る。

修復成って世界初公開となるクロード・モネの「ラ・ジャポネーズ」(1876年)、女性がまとっている着物は、これまで歌舞伎の衣裳をモチーフにしていたと考えられていたが、どうやら謡曲の「紅葉狩」を図案化したものらしい。

言われてみれば、袖のところに楓が描かれている。

ちなみにわたしは、「紅葉狩」という能が好きだ。

美女に化けた鬼が、男を騙して食い殺そうとする-

なんとも、深いお話しではないか。


今回いちばんのお気に入りは、フランク・ウェストン・ベンソンの「装飾的頭像」(1894年)。

キモノ姿の若い西洋女性が、向かって斜め左をキリッと見た表情が、美しい。

ああいう瞳(め)をした女性に、わたしはつい、気持ちを奪われる。

たぶんわたしもそのうち、食い殺されるだろう。




世田谷美術館では過去に、場違いな人種のために迷惑を被って以来、ずっと避けてきたが、今回は静かに世界を堪能することができて、なにより。


お友達連れの低俗な内容のヒソヒソ話しと、走りまわりながら奇声しか出せない稚人くらい、イラッとさせられるものはない。



夕方には銀座八丁目の金春通りで、能楽の路上奉納を観る。



今年は先代の金春流宗家が構成した「獅子三礼(ししさんらい)」という、獅子が三頭立で舞う曲が奉納された。

白頭の親獅子に、赤頭の仔獅子が二頭。


わたしのそばで、お友達連れで来た中年女性たちが、なにやら好き勝手なことを喋っている。

わたしはその顔を何気なく見て、メス獅子が紛れているのかと、あやうく勘違いしそうになった。


ちなみに、かつて銀座にも獅子舞があったそうだ。

しかし、「良からぬ輩が紛れ込む恐れのあるため」、やらなくなってしまったという。

そればかりが理由でもないのだろうが、なんだか魔除けの霊獣が現実の悪人に尻尾を巻いてしまったようで、どうせやめるなら、理由は人手不足うんぬんのほうが、よっぽど潔い気がした。

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