東海道かわさき宿交流館で、日本今様謌舞楽会による「今様(いまよう)」公演を観る。
今様とは、平安時代に大流行した『今の様(さま)を詠う最も新しい歌謡』のことで、それに白拍子が即興で舞をつけて舞ふ、宮中の娯楽芸能だった。
もともとは庶民の間で愛詠された音曲だったが、後白河法皇が大ひに好んだことから宮中でも催されるやうになり、法皇はつひに「梁塵秘抄」を著すまでになる。
その後は廃れた今様を、七十年前に京都を中心に活動する日本今様謌舞楽会の初代家元が節回しを復活させ、それが二代目家元に継承されて、現在に至る。
「七五調」を二度繰り返して一節とする今様は、季語などの約束事は一切なく、自由に『今の様』を詠んで構はないのが、最大の魅力。
つまり、七五調の音さへ踏めば、誰でも自由に作れるのである。
そこで第二部では、ワークショップとして実際に観客が今様をつくり、それを演者が実際に舞台で朗詠したあと、そこからニ曲を抽選して実際に二人の白拍子が即興で舞をつけるといふ、古へそのままの典雅な遊興が再現された。
今様の作者名はなんでも構はないとのことなので、これは葉村屋にちなんだ我が雅号「李閑(りかん)」が使へる絶好の機会と、無い知恵を絞って色紙に今様をしたためる。
『櫻の笑みに 君おもふ
御代は移れど そのままに
末廣かりの 永遠(とわ)なれや 李閑』
蝙蝠扇(かはほりあふぎ)を手にして舞ふ白拍子の舞は小難しくない大らかなもので、
どこか後世の金春流猿楽につながるものを感じる。
来月からの新元号には、「萬民平和」の願ひが込められてゐるとか云々。
私はいまだ「レイ」の音が馴染めずにゐるが、もし説明通りだとしたら、かつて萬民に愛唱された今様は、日本國民がひとつになれる最高の現代歌謡と、言へる気がする。