人の流れが変はる季節となり、交通機関は五月いっぱい遅滞する。
その要因たちは、
いづれもひとつの雛形を模った姿形(なりかたち)で、
しょせんは馴染めぬ景色のなかを、
都会人気取りにさまよい歩く。
やがて手にした機器に振り回され、
奥の迷路にはまり込み、
都会(ここ)は人の住むところでないと、
夢の枕でひとり哭(な)く。
なにも無い人は、
なにも無いところへ帰るべし。
『キツケヌ冠上ノキヌ、持チナラハヌ杓持テ、内裏マシハリ珍ラシヤ』
ほらほら、
また線路に落ちた。
しかし私は構わず、
加速する。
向かふに提灯が見える。
私のお楽しみは、
あちらじゃ。