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池袋の東京芸術劇場にて、「第50回 東京都民俗芸能大会 人と神と動物たち」を観る。
七つの参加團体による演し物のうち、葛西里神楽が演じた「伊吹山」を、特に興味深く観る。
倭健命(ヤマトタケルノミコト)が草薙の剣を帯しなかったばかりに伊吹山で悪神に敗れ落命する話しで、かうした英雄(主役)が斃れる神楽といふものを、初めて観た。
実際、内容が内容なだけに、当地でも上演頻度は低ゐらしい。
葛西里神楽による伊吹山の悪神は猪の姿で、今年の干支に因み、今回この演目を選んだとのこと。
かうした劇場で上演する企画だからこそ、観ることが出来た稀曲だらう。
平成二十六年創始の「王子稲荷神社の狐踊り」では、幼児たちのお遊戯会じみたそれよりも、惜しくも亡くなられた四代目三遊亭小圓朝師がご当地ネタ「王子の狐」を聴かせてくれた時のことを、しみじみと思ひ出した。
最後の特別参加枠は、かつて東久留米市の一人の少年が愛知県北信楽郡東栄町御園地区に一年間の“山村留学”をした際、当地の民俗芸能である「御園花祭」を習得したことから東久留米市でも行われるやうになった、「東京花祭」。
愛知県の民俗芸能である「花祭」につひては、CDに復刻されたライヴ音源で唄と囃子だけは知ってゐたが、実際の踊りは今回初めて観た。
舞台上に実際の祭り会場を再現し、その地域(集落)に住む老若男女が一丸となって祭りを盛り上げる──
ろくに顔も知らなゐ隣人に気を遣ひ、息を潜めて孤独に生活してゐる現代都会人とは真逆な“原風景”が、そこではいまも生きてゐる。
と同時に、余所者を拒む結束性を、私はそこに見出す。