近頃に都内の能樂堂で収録したと云ふ、忘流の演能會の配信動画を見る。
本来ならば前後四人づつ、八人でつとめる地謠方は一列に五人並び、それぞれ鼻から下に布を垂らし、やや俯き加減に首を斜め横に振って、謠ってゐる。
感染防止のため、……のつもりだらう。
しかし實際にはなんとも奇妙で、異様な光景だ。
まるで五人揃って、首でも寝違へたかのやうだ。
あんなおかしな恰好をしてまで、深刻化してゐるこの國難下にやるべき演能會なのか──?
浮世の現状を見て見ぬフリも、すでに限界に達してゐることは、地謠方のあの奇妙な姿からしても明らかだ。
そして、画面下部に映ってゐる見所(客席)の正面席最前列に、隙間なく並んだ皺首を見て、この會の正体を知る。
やうするに営利(カネ)か……、
と。