いやぁ面白い、とても面白い讀み物だ。
私はかういふテの政治噺、大好きだ。
御用學者は御用學者の域を出なかったと見せかけて、裏でしっかりミカドを味方に付けて學者としての意地を見せ、
女都知事は實に巧く、面白いまでに巧く時流を讀んで泳ぎまわり、まったく政治屋としてのお手本を世に示す。
さぞかし、「無観客開催」を初めて口にしたにも拘わらず、その意図(ハラ)を讀めなかった報道屋どもを嗤ったことだらう。
そしてミカドまで欺ひた挙げ句に叡慮を蔑ろにし、徒らに逆賊の首領へと成り下がった為政者代表は、
とんだ三枚目敵に仕立てらるる。
異國の首脳たちとの會議の際には、「オレは勝負したんだ」と末社どもに豪語したさうだが、自身は女都知事とミカドを味方に付けた御用學者に「勝負」を挑まれ、あっさり完敗したのである!
ここまで無能ぶりを曝け出してくれると、却って哀れですらある。
叩き上げで登り詰めたあとは、
叩き落とされる日を待つのみ、
と云ふことか。