迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

誇大なるお藥のにほひ。

2023-12-02 17:35:00 | 浮世見聞記


國立公文書館の企画展「病と生きる─江戸時代の疫病と幕府医学館の活動─」を觀る。



わが國では「日本書記」紀元前九十三年、崇神天皇五年の條に「疾疫(えやみ)の發生で民の大半が死亡」と記されたのが、公文書にみる流行病の最初云々。

令和現今の人災疫病禍、そしてそれを上越す流行ぶりですっかり復活したインフルエンザ、そのたびに人々は蔓延猖獗ぶりと對処を記録に留めてきたわけだが、これら資料が本當に活かされてゐるとしたら、浮世から流行病などはとっくに消滅してゐるはずだ。

今回紹介されてゐる江戸時代の諸記録を見ると、感染に身分の差はなく、危なっかしい民間療法、怪しいウワサ、困った時の神頼みと、簡單に醫者に掛かれなかった當時の庶民のフトコロ事情が浮き彫りになる一方、病ひに對する人間の思考や認識は今も昔も大差ないことに気付かされる。


特に傑作なのが、江戸時代に出回った市販藥の廣告のうち、「髪生藥」なる逸品。


(※フラッシュ無しで撮影可)

そのものズバリ、育毛剤のことで、現在の上野あたりで製造されて淺草あたりで賣られてゐた云々、ごま油に浸して置いたものを頭皮に付けると育毛効果が期待される云々、これは効きさうだ!

このイカニモな胡散臭さが、却って笑へる。

……いや、いや。

藁をも摑む思ひでこれを買ひ求める人がゐたであらうから、やっぱり笑ってはいけない。


毛髪の問題は、撲滅できないインフルエンザと同じ、撲滅できない人間永遠の課題なのだ……。








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